他のスポーツとの遭遇(3)
千石待ちをしている一行の下に、何時もと変わらない千石が到着したのは、千石以外が集合し且つ集合時間から15分以上経過した頃であった。
勿論、南をはじめ手塚、跡部が不機嫌そうに千石を見たことは当然のことなのであるが、当人はまったく気にした様子がみられない。
「おやおや皆早いねぇ。なんか不機嫌だけど、どったの?」
「どうしたも、こうしたもあるか。テメェの所為だろうがよ」
「えー。俺?」
跡部の言葉に、自分の非を全く分かっていない様子の千石に南は頭が痛くなるような気が本気でした。
(何であいつ気がつかないんだ?それとも技とか?)
何時も通りの千石の行動に、最近南は本気かジョークか分からなくなってきたりする。
千石に対して、どうすべきか考え手を拱いていると、跡部と千石のやり取りは進む。
「千石よ、これが公式戦だったらお前不戦敗だぜ」
「公式戦ならね。でも俺ラッキーだし、試合の日は進む遅刻したことないよん」
胸を張ってそんな事を言い切る千石に3人は呆れたように見つめた。
「南がお前を回収してから会場に向かうから、遅刻してないだけだろうよ。南が何時もいるわけじゃぁあるまいし、ちっとは自分の足で立つべきじゃねぇの」
鼻を鳴らして、正論を言う跡部に千石は拗ねたように、小さく言葉を紡いだ。
「今日の跡部君、手塚くんみたいだ」
ボソリと言う千石に南は溜め息を一つ吐いた。
「あのな千石。文句いう前に俺等に何か言うことはないか?」
やんわりと紡ぐ南の言葉に、千石は少し考えた後言葉を紡ぐ。
「ああああ。そっか、俺遅刻だね。いやー皆メンゴ」
「だから、そう言う言い方がだな」
千石の言葉に、脱力する南。手塚は落ち込む南の肩に手をおき首を横に振った。
まるで、こいつには無理だといいたげに。
(言うだけ無駄って言ってもなぁ言わないと永遠に千石治らない気がするのは俺だけかな?)
そんな南の言葉を読んだのか、首を横に振っていた手塚が千石に対して意外な言葉を紡ぐ。
「遅れたものはどう言っても変わらないが。ペナルティーは必要だと思う。跡部、南、俺にジュースを1杯ずつ奢るか…うちの乾の特製ドリンク飲むかの二択で詫びを入れてもらうと言うのはどうだろう?」
ペナルティーといえば、走らせるイメージのある手塚から紡がれたその言葉に南はビックリした表情で跡部は少し意地悪な笑みを浮かべて千石を見た。
千石は少し唸った後、ハッキリと告げた。
「乾君のは…かなりかんべん。皆にジュースにさせてください手塚君」
「そうか。不二は美味いと言っていたが…ジュースでいいならそれでいい」
表情には出さずに紡がれる手塚の言葉に、千石は少し最中にうすら寒さを感じた。
(その内…南経由で乾汁届けられたら最悪)
「今後、プライベートも含めて遅刻しないように善処するから…取りあえず乾君のは勘弁してね手塚君」
乾いた笑みを浮かべながら千石は切実にそう言葉を返した。
そう告げられた手塚は表情を少し和らげる。
「そうか。南…善処しないようなら何時でも連絡をしてくれ」
初めの言葉は千石に、後の言葉は南に向けて言う手塚はある意味ここでは最強の人ではないのか?と南は後に思ったのであった。
「ああ。色々悪いな手塚」
「気にする事は無い。青学も色々問題児がいるからなお互い様だ」
「そうかな。兎に角有難う」
相変わらずの腰の低さで、手塚に礼を述べる南に跡部は言葉をかける。
「その件については取りあえずもう良いだろう。それよりも、そろそろスタジアムに入ろうぜ」
時計をチラリと見て跡部はそう言うと、三人は小さく頷きスタジアムに足を向けるのであった。
つづく
2012.7.17. From:Koumi Sunohara