平凡で良い

特別な事など必要ない

其処に居れることに意味は必要だろうか?

意味なんて後からきっと付いてくるのだから

恐らく存在理由にワケなど要らない



 およずれごと
−存在理由と言う迷宮へ誘う魔性の囁き−


俺コト南健太郎は地味という看板を貼られてる。
まぁ派手でないので、間違っては居ないと思うが…地味地味言われるのはあまり気分の良い言葉じゃない。

何というか言われる要因が無いと言う訳じゃないから仕方がない。

成績は悪くないと思う…運動も一応テニス部部長をしているから、基本的に悪くないと思う。

容姿に関して言うなら、至って何処にでも居る日本人らしい顔立ちだと思う…思いたい。
可もなく不可もなく…自分で言っていて悲しいが現実的に見たなら俺は一般的な人間と言うのが打倒かな。

故に地味と言われても仕方がない事なのかもしれない。

まぁそう言う事で、華やかに見えるテニス部の部長なんかやってるけど…上に立つ者として必要な要因を持っているとは俺は思わない。
何故って?そりゃ何て言うんだ周りの学校の部長達が凄すぎるんだ。

あそこまで個性的で、それでいて実力も折り紙付き…しかも人を引きつけれる人材がゴロゴロ居られれば…俺が平凡で地味と言われ部長らしくないと言われても仕方が無いと正直思う。

だってな…。

青学の手塚の様に凄い技術力と厳しい指導力が有るわけじゃない。

(何せ山吹のスタイルはテニスは楽しくだし…むやみやたら走らせるのは無理だろうと思う)

不動峰の橘のように兄貴肌で引っ張っていく指導力が有るわけじゃない。

(だからと言って教師と暴力沙汰は…亜久津で手一杯。俺の性格ではまずあり得ない)

氷帝の跡部の様なカリスマ性とそれに伴う強さ…派手さは皆無に等しい。

(もはやアレは跡部じゃなきゃ出来ない事だよ。他の奴真似したら…反感買われるどころか…鼻で笑われるのがオチだ。)

そう考えて俺が出来ることと言えば…。

(部員が過ごしやすく出来るように、気を配る事。楽しくそれでいて、頑張れる環境を作り上げることぐらいだよなぁ〜)

しみじみ思う。

第一余所の部活を見ても、あれだけ凄い部長軍団を見たことは無い。
幸か不幸か…凄い連中に囲まれている一般人と言うのが、関東の部長の中の俺のポジションなんだと思う。

別に甘やかせるって訳じゃない…俺だって簡単な礼儀は必要な事だと思う。
年上には敬意を…ありがとう・ごめんなさい・お願いしますはきちんと言える人間になってもらいたい。

その考えは…正直俺は甘い人間なんだろう。
彼らに映る南健太郎と言う人物は。

会うたびに…言われる。

「南は甘い。甘すぎる」

と…。

「楽しむだけは甘い考えだ」

言われるたびに…小さな傷を生む。
正直キツイと思ったことは数知れない。
心が無い訳じゃ無いのだから、傷つくのは当たり前だ。

居ないと思われる事も少なく無いし、俺の話はむしろスルー。
居なくて良いのじゃないかと最近思う程、彼らに俺は映って居ないのかもしれない。

それでも仕事として、外すわけにはいかないから俺は仕事として出ている。
傷つく言葉であっても、割り切ってしまえば以外に聞き流せると部長会に出るようになって知った。

だけどそれも限界だったのかもしれない。




何時もの部長会で何故か、普段気にも止めれられない俺達山吹に話が振られる。
始めは、俺が部長らしくないと言うこと。
どうでも良いと流していれば、正直余計なお世話な展開に進んだ。

「部長であるお前がしっかりせんから。山吹は全国区と言われても上を目指す強さは皆無と言ってもよかろう」

「エースに頼りすぎでは先が思いやられる。部長としての自覚が足りねぇな」

「千石への負担を考えた事はあるのか?お前がそれでは、部員だって千石に負担をかけるんじゃないのか?」

「部長が部長なら部員もおのずとそうなる」


言われる言葉はごもっとも。不甲斐ないのは従順承知。
自分一人が言われる…自分だけの所為なら良い。
だけど仲間のことまで、言われるのは…自分が不甲斐ないばかりに言われるのは正直堪えた。

言われた言葉はサラリと流れた。
言った人間も言いたいことを言えば違う話題に移った。

何故かこの日の部会のこの言葉達だけは、俺の中に淀んだドベの様に沈殿した気がした。


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2006.5.9. From:Koumi Sunohara


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