大事なモノはすぐ側に(南部会編)

  空気や水の様な君C  


見落としていた

ありふれた物の中にある重要性を

けれど気が付けば成る程と思える

空気や水がどれほど大事か

当たり前すぎるから気が付かない





関東自体のテニスの力を底上げするための部会の筈だった。
全国区プレーヤーが揃う関東だけに、有意義に進む筈だった。
なのに、最近は有意義さを感じねぇ。

山吹の代表が千石に替わったとたん尚のことだ。

あいつときたら、邪魔をしにきてるのか…参加しにきてるのか不明な行動ばかり。
個々が個性派すぎるのが欠点といえば欠点であるこの部会に混乱ばかり起こして去る。
そんな日々の所為か、やる意義すら最近悩まされる。

ならば山吹抜きでやってみる。
そんな事もしてみたが、マイナスの因子を取り除いても満足いく結果が得られない。



有意義もくそも無い部会の後…樺地がボソリと呟いた。

「南さんが居ないから…纏まらないんだと思います」

「アーン?南だ?何でまた」

鼻をならしてあしらう言葉を呟けば、樺地はゆっくり言葉を選ぶように紡ぎ出す。

「その…塩や…地味な調味料が…美味しさを生むと思います。人も…同じじゃ無いでしょうか」

関係無さそうで…有りそうな例えを使って紡ぐ樺地の言葉に俺は冷や水を浴びせられた気分だった。

手塚の傍らに大石が居る。
俺の側には樺地が居る。
空気の様に当たり前で…当たり前すぎるから気が付かない。

(成る程な。料理に塩が不可欠…個々の個性を纏めるには必要なもんだな。例えば俺が千石の部長だとしたら…きっと千石は伸びない。物事には適材適所がある…成る程…この部会に置いて流れを円滑にする水や旨みを出す塩って事か…。)

ふいに浮かぶ思い。
振り返れば、南の行動でバラバラの内容が纏まった事に気が付く。

当たり前すぎる事が、気が付かない。
それを教える人間も又然り。

(地味だ地味だと…取り柄も今ひとつと言う奴が…思わぬ伏兵か…やるじゃねぇか)

「南の早期部会復帰が無い以上…部会は意味が無いか」

「ウス」

「とは言え…その事に気が付く面々は手塚…橘…赤澤辺りか」

「…真田さんは…」

「最初は気がつかねぇだろうな…だが…彼奴の後ろにいる奴らが気が付く…お前みたいにな」

「…ウス」

「しかし…今は待つしかねぇな。千石が南を出すか…はたまた…本人が何かの拍子で出てくる…その時期を」

(まるで天岩戸に籠もった天照大神が出るのを待つ神々の心境だな…今回は千石の気まぐれと…南の優しさに今はかけるより他は無いんだだが)

樺地に言いながら、俺は待つしか出来ない自分に自嘲気味に笑うしかなかった。如何せんこの現状を招いたのは…自分の責任でもあるから。


おわし

2007.4.23.From:Koumi Sunohara
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