大事なモノはすぐ側に(南部会編)

  空気や水の様な君@  

当たり前だと気付かない事がある

ありふれた中に大切な物が隠れている

見えざる中に必ず存在する

見えないだけで確かに在るモノ

それは何より強い力なのかもしれない




部会に南が来なくなり、代わりに千石が来るようになって暫く経った。
その経緯は千石から聞いた内容だけに、何処までを信じるべきか不明な点が多々存在する。

兎も角、千石に変わって別段差し障りが無いならさしあたって問題は無い。
が…問題があるのが現実だ。

問題無く進んでいた議事は脱線し進まないと言う事態が度々所では無い。
正直無意味な部会が続いていると言っても良いっ思う。
それに伴い何故だか千石からの厭味攻撃で部会が幕を降ろす。

跡部や真田に至っては、かなり不機嫌を顔に貼付けていると言っても過言では無い。
他の面々は何やら考えるべき事があるのか、千石に言いたくても言えないような雰囲気。

やっぱり、南が居なくなってからこの部長会がギスギスしている事には変わりない。

そして思い返す、何がどうして違うのかを…。思いつくのは南が居なくなったと言う事ぐらい。

(ただ南と言う存在が居ないだけ。なのにどうしてこんなにも、異質なのだろう?)

浮かぶ思いに、明確な答えは浮かんでこない。

南健太郎と言う男は、例えるならば青学で言う所の大石の様だと思う。
まぁ大石が南と同じダブルスプレーヤーだから似ている部分を感じるかもしれないが、酷似している点が多々あると感じる。

その所為だろうか、南が居るとまるで大石と居るような雰囲気があり落ち着ける。ピリピリしても可笑しくない場所でも、何故だか和むのだ。

そんな雰囲気は、俺の中で尊敬する人を思い出す。
俺を導いたあの人…大和部長の事を。



正直テニスが凄い強い訳では無い人だった。
戦略的に優れていた訳でも無いのだろ。
ただ不思議な雰囲気を持っていて、人知れず人を引き付けるそんな人だった。

怪しげな色の入った丸眼鏡に顎に生えた不精髭。
左ききの筈なのに、プレーは右でやると言う不思議な人だ。

それでも部員を纏めあげ、俺達を育ててくれたのは大和部長。
何よりもテニスが好きだと言う心構えはすごいものがあると言えるだろう。

そう言う点からすると、南と大和部長は似ているのかもしれない。まぁテニスの腕前は南の方が強いだろうが…。

何て言うのだろう、絶対的な強さじゃないけれど、南や大和部長は理屈じゃない何かの魅力があるのだろう。
大和部長といい南と言い、不思議な力があると思う。
個性の強すぎる面々が多く居るからこそ南と言う、人に気遣える存在は一番大切な事かもしれない。

料理にも…塩や胡椒が必要な様に。
他で代用など出来ない…そんな存在なのだと…南の居ない空間に今更ながら気が付いた気がする。

千石のねらいは此処だったのかも知れないと…感じながら。


おわし


2006.6.28. From:Koumi Sunohara

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