新しい生活(Said:Miria)
可愛いものが好き。
甘いスイーツが好き。
レオンが好き。
何時かママの様なクイーンオブポップになる。
その為には、ジュエルスターになる。KMBの私には、それが出来ると信じてる。
可愛いと僻まれる事も、妬まれる事も数多くて…クイーンオブポップを目指す私の居る芸能界はそんな事が日常茶飯事。
甘い顔で近付いて…信じれば裏切られる、真実と虚像が入り混じっている世界。変な話イミテーションでも上手くせれば上に行くことが出来る世界。
そんな世界をママを通して見ていた所為か、私の周りには同い年の友達は居ない。寧ろ、同い年の子何てライバルであって友人じゃない。
それでも、忙しいママにパパ。一人きりの時間は寂しくて…悲しい。一人きりになると涙は知らない内に溢れてくる。
そうやって過ごしている内に、突然ガーネットが私の元にやってきて…お伽噺の様な不思議な話を私にした。魔法が使えるようになること…魔法の世界がある事…ジュエルペットと言うガーネット達の様な子達が沢山いる事。ジュエルランドと言う世界があること…。
お伽噺のような本当の話しに私は、知らずの出ていた涙が止まった。
私を必要としてくれる子が居る…それが例えジュエルペットでも…人では無くても…私を気にかけて共に居てくれる存在に私は、凄く嬉しい気持ちになった。その想いは今でも忘れられない想いで。
だから、人の友達なんて出来なくても良いって思った。
ガーネットに珊瑚が居れば…私に友達何ていらないと思った。
おしゃれの話しに…恋の話し…甘い甘いスイーツの話し。蹴落とすライバルじゃなくて…純粋に私を思ってくれるパートナであり友人はこの二人が居ればそれでよかった。
学校では寂しい事も有るけど、家に帰ればガーネットに珊瑚が居てくれる。勿論ジュエルランドでもそれは変わらない。
だから私は、それで良いと思っていた。
でも、ママが時々言うの…。
「今度ミリアの友達をお家に招待してね。ママ会うのが楽しみだわ」
世界的に有名になったママは忙しい人だけど…何処にでもいる世の母親の様にそんなささやかな楽しみを持っている。だから、時々忘れた頃にそんな風に私に言う。
ガーネットや珊瑚は友達だけど…人では無くジュエルペット。胸を張って友人だって言えるけど…ママはきっと困ってしまうと思う。
だから私は何時もお決まりの文句を言う。
「勿論よママ。でもママも忙しいし…その子にも都合があるもの。ピッタリ合った時に会えばいいわ」
さも忙しいママを気づかう様な言葉を紡いで、笑顔で紡げば大抵ママは納得してくれる。
そうやって、幾度かにわたる不毛なやり取りを繰り返す。
嘘に嘘を塗り重ねる様に…紡がれる言葉は、何処か脆くていつも不安な気持ちになる。いっそう、ガーネットや珊瑚に変身呪文でもしてもらって、人間の友達のふりでもしてもらった方が気分的に余裕が持てるかもしれない。
でも魔法は万能では無く、イメージと実力が必要で…変身相手の事が上手くイメージできないと変身が出来ない。対象となる存在の居ない私にとっては、無理な話しなのだ。
そんな想いを反映するかの様に、なかなかジュエルストーンは集まらない。試験に受からなければいけないし…チャンスがきてもどうしてだか空回りして…結局2個しか手に入れることが出来ず…レオンとの距離も遠く…他の子に後れをとってしまう事態だったりする。
(頑張っているのにどうして?)
他の子を見るたびに駆られる想い。その度に、ガーネット達は「大丈夫よミリア」と言ってくれるけど凄く凄く不安で一杯だった。
そんな折に、魔法学校に新入生がやって来た。
自分より少し年上の日本人の女の子。桜あかりは、年上とは思えないほどオドオドして…引込み思案で人見知りをする…かなり頼りない女の子だった。
その所為かレオンに気にかけられて…正直凄く腹立たしい気持ちでいっぱいだった。
(好きな人が…別の子を優しいしている所を見て平気な程私は大人では無いし…勿論子供だもの)
普段子供扱いされるのが嫌で矛盾していると思うけど、切実にそう思った。
(きっとこの子とは仲良くなれないわ)
第一印象と、しばらくの間はそんな風にあかりに対して思っていた。
でも、正直良い態度をとっていない私にあかりはオドオドしながらも明るく接してきた。名前の通り明るい声音で…まるで友達に話しかけるみたいに私に話しかけてきた。
学年が近い事もあってきっとあかりは、人見知りそうな心に勇気を振り絞って私に話しかけてきたのかもしれない。だからだろうか?私のそっけない態度にもめげながらも、友達になろうと声をかけてきたのは…。
(私…あかりみたに…友達を作る努力をしてたかしら?)
あかりは、レオンを頼りになるお兄ちゃんぐらいにしか見てない事を知った私は少しだけ冷静にあかりに対して考える事が出来る様になった。
何時も一生懸命で…失敗ばかりだけど頑張るあの子に…少しの羨ましさと仲良くなりたい気持ちが芽生えた。
「友達になってくれないかな?」
おずおずと紡ぐあかりのその言葉に、本当は凄く嬉しかったけど素直じゃない私は…。
「そんなに言うなら友達になってあげても良いわよ」
(引込み思案の癖に変な所頑張るのよね…まぁ、そこがあかりの良いところなのかもしれない…お人よしだしね)
何て返して…そんな態度悪い私に嬉しそうにあかりが微笑むから…色々悩んでいた不安なって気がつけば消えていた。
遠くない未来に…、胸を張ってママに「私の友達のあかりよ」と紹介できる日が来ると思うと何だか、くすぐったい様な…楽しみな様な気持になる。
新学期に出会った…新しい出会いに私はらしくなく感謝したいと思う。これからの学園生活が楽しくなる期待と共に…。
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2010.10.1(WEB拍手掲載:2010.8.29.) From:Koumi Sunohara