新しい生活(Said:Dian)  

手のかかる子程可愛いとはよく言ったものだと思う。しかも、何事にも一生懸命にしていたなら、尚の事可愛いものだと思う。

勉強、魔法、運動の才能はセンスが良い者は苦労と言う苦労をせずに手にする事が殆どだ。

そう言った者が、努力を怠った訳では無く、人よりも飲み込みが早いと言うだけだ。
人は、それらの者を天才と呼ぶのだろう。

俺のパートナーであるレオンも、どちらかと言えば天才と呼ばれる存在なのかもしれない。 その所為か、レオンに関しては『手のかかる子程可愛い』と言う言葉は当てはまらないのだが…。

ちなみに…『天才』そう言った言葉はレオンにしても俺にしても好きな言葉では無い。

確かにレオンは、普通の人よりは生まれた境遇とそれなりの教育を受けている事もあり、大抵の事柄は器用にこなす。 それだけで、天才と言われるのは実に不快である。

第一その裏には、並大抵以上に努力をレオンは惜しんだ事が無い。 レアレア界での勉学や運動、貴族社会での事も手を抜く事無く、常に家名を汚すこと無く長男としての務めを果たす。勿論、魔法学校でもその態度は変わらない。

寧ろ、俺の声が失ってからと言うもの…魔法の勉強やジュエルランドの事柄の勉強もさることながら、俺の声を取り戻すための努力は凄まじいものと言える。寝る間も惜しんで動きまわるレオンには頭が下がる思いだ。

努力の天才…あえて言うならそんな言葉が彼には似合う。努力と天才ではまったく意味が違うとしても…それでもその言葉が良く似合う。

レオンの場合は、容姿も家柄もよくその努力をひけらかす訳では無く別に隠しだてはしてはいないが…他者から見るとそつなく何でもこなす天才の様に見えるのだろう。

そう言った精進を重ね、努力を惜しまないその姿勢はパートながら実に好感が持てる。

だが、なかなかその様な者にめぐり合うのは安易なものでは無い。何かしら欠けていたり、諦め癖があったりと、人を始めジュエルペットと言えど同じ事である。

同じ高みに上り詰める者を探すのは非常に難しい。 俺はレオンに出会えて本当に幸せな事なのだとジュエリーナ様に感謝している。

だからと言って、それ以外の者を軽視するつもりは無いし…好感が持てないわけでも無い。

先も言った通り『手のかかる子程可愛い』と言う気持ちも勿論ある。

そうだな…。

今回の新入生として入って来た、日本人の女の子…桜あかりと言うレアレアの少女は俺としては好感が持てると思う。

少々ひっこみじあんで…内気で気弱な感があるけれど、失敗をしても諦めずに頑張る姿勢や人に対して優しい様子は何だか微笑ましい。

明らかにレオン目当てのミリアの理不尽な嫉妬から来る、嫌がらせにも…あかりは少し気にしながらもミリアのしたことを受け止めて、それでも友達になりたいと言う姿勢は意地らしくて…他人事なのに上手くいけば良いと願わずにはいられない気持ちになる。

別に贔屓をするつもりが無くとも、そんなひたむきで一生懸命に頑張っている姿を見て不快に思う者は少ないだろう。

それでいて、素直なら尚さら好感を持つというものだ。

兄弟というものには、正直縁が無く、強いて言うならレオンとの関係が友でありパートナーであり、言葉では言い表せ無い存在で…家族とか兄弟と言う感覚に近いのかも知れないが…それが近いのかもしれない。

妹…そんな言葉が良く当て嵌まる。レオンがミリアに対して妹の様に感じる様に、妹と言う者が居たらあかりの様な素直な優しい子だったらとジュエルペットの俺が思う程、彼女には不思議とひかれるものがある。

まぁ、ミリアに関してはミリア自身がレオンに妹扱いされる事を快く思っていないので、レオンの一方的な妹扱いなのだが。 もしくは、レオン自体が根っからの兄気質なのかもしれないが…。

それに比べて、俺自体は下世話な言葉で言う所の兄属性では無いと思うが…何故かあかりは、妹の様な気持で見てしまう。比較的不思議だと思う。だが、別段不快に感じ無い。寧ろ、構いたい…手を差し延べたいと思う。

本当に珍しいと我ながら思うのだが…事実なので仕方が無い。

小耳に挟んだ話では、あかり自身姉がおり妹である所から…妹特有の雰囲気がある故に、何だか兄弟の居ない俺にも妹を持ったような気分になるやもしれない。

血の分けた兄弟では無いので、おっちょこちょいで…泣き虫で…不器用な彼女と自分とではまったく違うけれど、一生懸命な姿は本当に見ていて気持ちがいい。心根もやさしい所も、彼女を好きになる要因だと思うが…本人はその事に気が付いていない。

きっと、言ったところで謙遜するのだろうが…如何せん今俺は言葉を失っているので大概無理な話なんだが。

兎も角レオンにも、俺にも彼女…桜あかりは、色々意味で良い刺激を与えてくれるのかもしれない。

出会ったばかりなのに、非常に不思議だと思うが…そんな予感がするのだ。

おわし

2010.11.5.(WEB拍手掲載:2010.10.1.〜) From:Koumi Sunohara

-Powered by HTML DWARF-