新しい生活(Sid:Sara)  

私の世界は、広く浅い。人に言わせると、狭いと言われるかもしれない。別に気にしないけど。

物は例えようと言うもので、興味のある事柄には特化するけれど人とディスカッションすることが絡むと、向けていた情熱は成りを潜める様になる。

その辺りを考えると、広く浅い。

けれども、今の時代割と人との関係は希薄になってきている。
だから私一人が例外と言う訳では無いと思う。

第一人とのコミニュケーションが苦手でも、勉強や研究が凄く出来れば、社会的な簡単な地位が手に入る。

社会人や大人だけの特権では無く、子供にも言える。私にもそれは、当て嵌まる。努力をした分だけ、反映される様に学校の学年も面白い程、進級していった。所謂飛び級というやつだ。

永遠と言えない、限りある時間の中で効率的だと私は思う。
確かに同じ世代の子達に比べたら、遊ぶ時間や同世代の友人は出来ないけれど、その子達より勉強や経験を先に進める。

日の食料を獲る為に、労働をしてお金を得てパンや食料を買うように…人は何かを得る為に少なからず対価を支払う。それと同じように、私は同じ年の子より進んだ学力を得る為に、遊ぶ時間と言う対価を支払ったのだと思う。

例え友達と呼べる人間が居なくても私にとっては何にも臆することが無い。

そんな中で、私は非科学的にもジュエルペットと呼ばれる存在に出会う。
この世界では考えられない水色をした綺麗なサファイアの瞳を持つ、キャバリアと思わしきサーフィーと言うジュエルペットの女の子に出会った。

彼女は私の対人スキルの無い様にも別に気にする事もなく、私の研究や私自身に興味を持ってくれた。友としてパートナーとして共にジュエルスターと言う博士号に似たモノを目指してほしいとそう告げた。

「こちらの勉強が…」

そう言い淀む私にサフィーは穏やかに微笑んだ。

「大丈夫よ沙羅。ここの世界とジュエルランドの世界の時間は異なるのよ。ジュエルランドに行ってる間はここの時間は殆ど動いていないの。だから、沙羅が迷惑でなければ私と一緒にジュエルスターを目指してくれないかしら?」

控え目に、それでいて真っすぐなサフィーの言葉に私は半信半疑ながらも承諾した。

サファイアの瞳を持つサフィーは落ち着いていて、こちらの世界での私の研究にも甚く興味を持っていた。そんな事もあり、私とサフィーはパートナーでありよき理解者になった。

ジュエルランドで魔法の勉強をする事になった時も、やっぱりあまりこちらとアチラも基本は変わらないのだと感じた。

年齢や性別は様々。大学と別に変わらない。

才能が有り、努力を惜しまなければ結果は自ずと着いてくる。天才型の人間も居る。

それは、本当に自分の本来居る場所と変わらない。

ある意味ジュエルランドの学校の方が分かりやすいかもしれない。

ジュエルストーンを集めて、ジュエルスターを目指す。目標としては、実に分かりやすい。学校のシステムとしても、ジュエルストーンを貰うと学年を進級出来る。逆を言えば、ジュエルストーンが貰えなければ進級出来ない。

12個集めれば、ジュエルスターグランプリへの挑戦権が手に入る。

私にとっては単位を取るような感覚で、着々とサフィーと共にジュエルストーンを集めて行った。
一つ二つと手に入れる事が出来たけど、見えない壁に当たるように不意にジュエルストーンを手にするのが難しくなる。

魔法のレベルや魔法の研究は進むのに、不思議とそれに伴わない現実。

ハーライト先生は…。

「魔法には心も必要なのですよ沙羅。それを本当に意味で知ることが出来ればあなたはもっと素敵な魔法使いになれるでしょう」

そんな言葉を紡いでいた。

けれど、私にはその意味がよく理解が出来ずに…出来ないゆえにその分を埋める為に研究に励んだ。

結果としては、増える研究ノートの充実性だけが少しだけ救いの様な気がした。


それでも時間は過ぎゆくもの…。
時間の流れがゆっくりなジュエルランドにも、四季は巡り。新たな新学期が始まる。

でも、私にとっては平素と変わらない日々が続くだろうと考えていた。

せいぜい変化が有っても、学園に新入生が入るだとか…ジュエルストーンの獲得の行き詰まりが少しは軽減されるとか…そのぐらいだと思っていた。

そう…その新入生に出会うまでは…。


その子は、引っ込みじあんで…それでいてお人好し…でも、どこから生まれるのか理解できない勇気を持った日本人の女の子…桜あかり。

お世辞にも世渡りが上手そうでも…頭がよさそうでも無い…普通の女の子。

もしも、私が普通の子と同じ時間を過ごさない限り交わらないであろうそんな子。

少し気になったけれど、きっと交わることの無い存在。

あかりより先に入学していた、ミリアが自分よりも学年が下が出来た事に先輩ぶってちょっかいをかけて居る様に、少しだけ同情しつつも呆れもした。

(もっと強く言い返せばいいのに)

そんな風に第三者の目線で私は、彼女達のやりとりを眺めていた。
どうせ交わらない存在だと疑わずに。

それなのに、あかりは…何を思ったのか私に話しかけてきて…皆が倦厭する私の実験にも快く付き合ってくれた。ごく自然とまるで、昔から私の側にあかりがいたように…。

少しそれはくすぐったくて…でも心地よくて。パートナーの次ぐらいに、あかりの中でより良い存在で居れたら嬉しいとそんな風に思える程。

(不思議な気持ちだわ)

感じたことの無い気持ちだった。
サフィーと居た時の気持ちとは異なる…不快は無く寧ろ心地よい気持ち。

自分だけの為の魔法じゃなくて、自然とあかりの助けになれたらと思って使った魔法は…普段の魔法とは異なっていた。

誰かの為に喜ばれる魔法…。

不意にハーライト先生の仰った意味が少しだけ分かるような気がした。

(魔法に心は必要…)

私の足りない何かを、あかりが教えてくれた気がする。

魔法と心…そして同じものを志す友人を私は彼女から与えられたように思う。

広く浅い…無機質な世界にあかりと言う色が私の世界を色鮮やかにしてくれた。
願わくば、私の世界とは異なる風を吹き込む彼女と共にジュエルスターを目指したいと切に願う。


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2010.9.7.(WEB拍手掲載:2010.7.18.) From:Koumi Sunohara

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