匿名の励まし
シンタローがパプワ君達とともに行方が分からなくなってから、ガンマ団はめまぐるしい。
伊達衆は総帥不在の穴を必死で埋めているし、マジク元総帥もシンタローの分を補っている。
何だかんだ文句を言いながら、ハーレムと特戦部隊も協力している。コタローはサービスとの厳しい修行に耐えて、大好きな友達と兄を助けるために頑張っている。本当に血の滲む努力をしていると思う、シンタローの修行の時以上に…。
そして、俺の教え子である、グンマとキンタローは、シンタロー達を捜す為の探知器を開発するために連日研究室に篭っている。
俺としても、グンマもキンタローも、シンタローも教え子である訳で、共に開発に協力するのが筋であると思うが、俺にはガンマ団以外の仕事があり、あまり協力できないのが現状だ。
そう言った時は、バイオ科学者が専門だと言いながら、器用に何でもこなし、グンマ様キンタロー様命のマットサイエンティストDr高松が、鼻血吹きながら手伝いに行くのが当たり前の光景であろう。しかし…隠居するように言われてるこの高松は、いじけてるのか何なのか、手伝いに行こうとしないのだ。
しかもだ…隠居生活を言い渡された後、こともあろうに俺の研究室に居座って居る。
現在進行形で…。
勝手に人の研究所でくつろぐ姿は、どちらが所長か分からない。
研究員も最初、何事かと思っていたようだが…気にしない様になっていた。
それはそれで怖いが…。
今日の彼奴は、居住スペースのリビングで、優雅に珈琲タイムを楽しんでいやがった。
「おや…。何です?ため息何て吐いて。陰気な空気ださないでくださいよ」
「あのな。さも自宅感覚で寛いでいるが、お前居候だって自覚ある?」
俺が厭味満載で言えば、高松は肩を竦める。
「ど田舎で寂しいだろうという友の配慮を居候扱いとは解せないですね。居候と言うのはジャンの事をいいなさい」
「そうだな。家に家賃すら入れない奴は居候ですらねぇーよな。ヒモだなヒモ。俺はヒモを持った覚えはねーけど」
そんな厭味を言ってやれば、高松の奴は鼻で笑いやがった。
「甘いですね。ヒモな訳無いですよ。ロープですよ」
余りの開き直りぶりに俺は何も言う事か出来なかった。
(よくサービスと上手く付き合えたなコイツ)
心底呆れた俺は、1番効果覿面の言葉を紡いだ。
「キンタローとグンマに報告するぞ」
「忙しくてそんな事に聞く耳持ちませんよ」
しれっと言い切る高松に、俺は大きな溜息を吐きながら言葉を紡いだ。
「俺と違って暇なら、キンタローとグンマの手伝いしてやれば良いだろう?流石にあれは、あいつら2人には荷が重い。ここで手を貸せばお前の株上がると思うけど」
「もう私は必要ないと言いきられてますからね。余計なお世話なんですよ」
「あのな〜餓鬼かかお前。子供は何時か大人の手を離れるんだ。俺らだってそうやって親と別れてきた癖に…我が儘だね高松」
「何言ってるんですか。何年竹馬の友やってるんです?我が儘は私とサービスの専売特許です」
さも当然そうに言い切るこの男に俺は、完全に脱力を覚える。
「はいはい。そうでしたね。我が儘だもんなお前ら」
「慣れたでしょ?」
「慣れね…まぁな。そんな我が儘な高松君は居候だろう?」
「まぁ…平たく言えば」
「だったらちょっと研究協力しろよ」
そう言った俺の言葉に高松は少し目を丸くした。割と意外な言葉だったらしい。
「研究ですか?まぁ手伝う事ぐらいいいですけどね」
「言ったな」
ニヤリと人の悪い顔をして俺は、高松にそう返す。
俺の顔を見た高松は、少し引きつりながら「言ちゃいましたね」と少し脱力気味にそう返してきた。
言質さえとってしまえば、高松は実に扱いやすい。
何だかんだいっても、性格が歪んでいても…高確率で約束は守る奴だからだ。
(金さえからまなければ…そこが前提条件だけどな)
そう思いながら、俺は今後の事を頭を巡らせる。
「さて。忙しくなるぜ、やる事は山積みなんだからな」
「には世話になってますからね。どんな意図でそうしたとしても…手伝いますよ。約束ですからね」
不敵に笑って素直じゃない、竹馬の友はそんな事をのたまった。俺は、そんな高松に肩を竦めて見せながらふと思う。
(素直じゃないのが素直な証拠…てか)
そんな風に思う。
高松も然り、サービス然り…そして俺もジャンも…。
「さて。素直じゃない大人がいっちょ一肌脱ぎますかね」
独りごとのように紡いだ言葉に、高松は眉を少し歪めて肩を竦めた。
高松に手伝わせた研究は後にジャンの開発する、シンタロー達を探すシステムのベースになるのは言うまでも無い。高松の株が上がったか否かは、弟子たちのみしる事である。
おわし
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2012.7.27. From:Koumi Sunohara