バレンタインの憂鬱 |
外はハラハラ舞う粉雪。
デパートや近所のスーパーでも、真っ赤なラッピングにチョコの山。
楽しさと不安が渦巻く、女の子の恋する戦場聖バレンタイン。
その日が刻々と近づいていた。
勿論そのイベントは、性別学状女である私にも関係のあるイベントでもあるし…意中の人が居るという点に置いても…無視の出来ないイベントだったりするのだ。
「はぁ〜」
仕事のデスクに頬づえついて、私は大きな溜息を吐いた。
渡す勇気云々を差し引いても…問題が一つ有る。
キンタロー様がバレンタインデーをご存知がどうかなのだ。別に馬鹿にしている訳じゃ有りませんよ。
第一キンタロー様は立派な尊敬に値する方ですし…頭が大変良い方です。
そんなのは、ガンマ団でも周知の事実。
仕事振りを見ても一目瞭然。自分の研究や仕事もしながら総帥をサポートなさってる。
それも極当たり前に。普通はそうそう出来ない事をやってのける凄い方。
確かにそんなキンタロー様に私は隠し様も無いほど好意を抱いている。
シンタロー総帥やグンマ博士から、からかわれるほど…私はひじょうに分かりやすい奴らしい。
だけれど完璧そうなキンタロー様だけれど、一般常識が少し疎かったりする一面があるわけで…。不安を覚えるなと言う方が無理な話なんです。
例えば、クリスマスのサンタクロースがウジャウジャ居ると勘違いなさっていたり、正月になると七福神が必ずやってくると思っていたりと…そんな逸話をお持ちのキンタロー様なので私は、正直バレンタインをご存じないと思っている。
それとなく尋ねる事に違和感は無いけれど…あげる側からすると、説明する羽目になるのは少し間抜けな気がするのである。
そんな気分なモノだから、私は最近知らず知らずの内に溜息を多く吐いているらしい。
(そう言っても悩むもんは悩むよね)
そう思いつつもう一度溜め息を吐くと、不意に私は声をかけらえた。
「何だともあろう者がバレンタインの悩み事か?」
「へ?キンタロー様?」
「フッ。そんなに驚かなくても良いだろう」
「いえ…キンタロー様に驚いたというか…バレンタインの事を知っている事に驚いたというか…」
自分でも何を言っているのか意味不明ながら、言葉を紡げばキンタロー様は苦笑しながら言葉を紡ぐ。
「まぁ一応知ってはいるぞ。確かチョコレートを食べる日と記憶している」
「まぁ…当たっているというのは当たっているのですけどね」
「何だ?」
「日本では女性が好意を持つ人にチョコを贈ると言う習慣もあるんですよ。ちなみにソレが本命で…他にも上司やお世話になった人や仲の良い人に贈る義理チョコや友チョコを贈る日でしょうか」
「そうなのか…義理チョコ・本命…友チョコか…覚えておこう」
真剣な顔をしながら、
「もし…私がキンタロー様にお渡しするとして…受け取って貰えますか?」
義理とも本命とも言わぬまま、私はそう思わず口にした。
するとキンタロー様は少し意外な顔をして、私を見た。
「無論受け取るぞ。が一生懸命にくれるのなら、受け取らないわけは無い」
サラリと紡がれる言葉の裏に続くであろう「シンタローもグンマもマジックの叔父貴もな」と言う言葉は分かっていても、何だかその言葉だけでも嬉しくなる自分が居た。
(まったくもって現金な奴だ私という人間は)
そう思って思わず笑みを零せば、あの方は嬉しそうに目を輝かせた。
「やっと笑ったな」
本当に満足そうに目を細めながら、キンタロー様は言う。
私は言われた意味を理解できずに、首を傾げながらキンタロー様を見た。
「へ?」
間の抜けた声を出し、疑問符を浮かべればあの方は柔らかなトーンで言葉を紡いだ。
「ここ数日は溜息ばかり吐いていたから、流石の俺も心配になったぞ」
クシャリと私の髪の毛を撫でながら、キンタロー様はそう言った。あの優しい微笑みを浮かべて。
(気にかけて下さったんですね…何て嬉しい一言だろう…)
心の中で感無量な気持で一杯の私だけど、心配をかけたくないのですぐに言葉を紡ぐ。
「すいません。でも御陰で元気になっちゃいましたよ」
「そうか…なら良い。が元気がないと調子が出ないからな」
「本当にキンタロー様はお上手ですね」
「そんな事は無いがな」
ボソリと呟かれた言葉に、私は気になりながらも聞き流し私は、精一杯の笑顔で言葉を紡ぐ。
「精一杯…キンタロー様が美味しいと思って頂けるように頑張りますね」
そんな私にキンタロー様は優しく頭をクシャリと撫でた。
(きっと私の伝えた気持は…少ししか伝わらなかったとしても。もう少し…このままの関係でも良いのかもしれないと…。)
今日のキンタロー様の気遣いにそう思った。
今はまだ少しこのままで…。
おわし
2006.6.8. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ web拍手にて2006.3.13.〜載せていた物です。 PAPUWAキンタロー夢小話です。 時期がズレましたが、楽しんで頂けたら幸いです。 |