研究所の節分事情
正月も終わり、寒さも一段と厳しくなってきた2月にはいるか入らないかのそんなある日、の居る研究所は今日も平和だった。
PC画面と睨めっこしていた所長であるに、研究委員が何時もの様に珈琲を持ってきた。
「ああ、何時もすまないな」
「いえいえ」
何時もならば此処で立ち去るはずの研究員がなかなか立ち去らない。
(ん?何だ?)
少し疑問に思いながらも、割と変わりものが多いこの研究所の住人に…(まぁいいか)、と思いつつはPCの画面に集中をした。
そんな所長に研究員は、普段と変わらない雰囲気のまま声をかけた。
「所長」
「ん?何だ?」
「所長は豆まきは大豆派ですか?それとも落花生派ですか?」
藪から棒に言われた言葉には首を傾げる。
(豆まきは大豆派?落花生派?)
はて?と首を傾げるに研究員は言葉をつづけた。
「いやですね所長は日本人でしょ。節分ですよ。せ・つ・ぶ・ん」
「ああ。もうそんな時期か。で何で、大豆派か落花生派になるんだ?豆まきは大豆だろう」
「まぁ普通はそうらしいんですが、落花生を捲く所もあるそうなのでどちらを用意するば良いかと思いまして」
そう口にする研究員にはますます首を傾げたい気持ちになった。
(そんなに重要か…大豆と落花生?片づけ易さの問題なのか?俺は別にどちらでも良いんだが…)
研究員の言葉には地味にそんな気持ちでいっぱいだった。
珈琲に口を付けながら、は未だに熱く語る研究員の言葉を黙って耳を傾けた。
「この節分を成功させるカギは所長にかかっていると言っても過言じゃありません」
「別に俺が成功の鍵にはならんだろうさ。まぁ…日本は狭いようで色々都道府県によって文化が異なるからな…俺は大豆で良いが…落花生でやる地域の連中も居るだろうし…両方用意してやれば良いんじゃないか?」
取りあえず、一番丸く収まりそうな提案をしてはこれで話を終わらせようとした。が…そうがいかないのが此処の研究員。
「そうですか了解です。で…研究所の玄関には柊とイワシ用意した方がいいですか?それと…」
「おいおい。本格的にする気か?それとの後に続くのは…恵方巻の件とか言う気か?」
「そりゃー本格的にしますよ。そうそう恵方巻です…関西方面の節分には欠かせないそうで…所長の出身地が分からないから聞こうかと」
ニコニコと笑顔全開で言う研究員には軽い頭痛を覚えた。
(そうだった…こいつ等以外にイベントに力を入れてる連中だった…日本人以外も居る癖に何気にこだわるんだよな)
はつい最近あった、クリスマスのイルミネーションの一件を思い出した。何となく頭が痛い気分になりつつも、はどうにか丸く収めるべく言葉を紡ぐ。
「俺の地域は恵方巻を食べる習慣は無いけどな…恵方巻の習慣の奴らもいるかもしれないし…大変でなければ用意しておくのも良いかもな。何せ俺は恵方巻はやらないから少し気になるし」
前回の教訓から否定の言葉を入れず、自身も少し興味があるように臭わせながらはそう研究員に言葉を返した。この方法に功をそうしたのか、研究員は楽し気にさらに言葉を続けた。
「節分は色々な地方のモノを取り入れるということにして…。そうそう、鬼はどうします所長?」
「ん?順番に交代の持ち回り制で良いじゃないか?」
そうが言うと研究員も頷いた。其所に…。
「おや、面白そうな事を話しているね」
「おっ…サービスか。あれだよ、アレ…節分の話しをしてたんだ」
「節分…ああ。の故郷の風習だったね。鬼に豆をぶつけるんだったかな?」
「そうそう。邪気払いって意味あいが強いんだけど、後場所によっては色々やることが異なるんだ」
「なるほど…でクリスマス同様にと研究所メンバーで節分をやるって所かい?」
「まぁな」
サービスの言葉にはそう短く返した。
「ふーん。で…?」
「で?って何だよサービス」
「ん?いやね、節分には鬼が必要だったと思ってね」
「そうだけど…何だよサービス。もったいぶるな〜」
「はははは。スマナイ。鬼については敵役がいるとは思わないかい?」
意地悪そうな微笑を浮かべて、サービスがそう言う。
(こういう時のサービスってろくでもない事を考えているんだよな〜)
はサービスのその表情に、心底そう感じずにはいられなかった。
「秋田にはナマハゲって鬼がいるらしいよね」
サービスがそう言うと、は「あっ…」と小さく声を洩らした。
(ナマハゲ…シンタローとグンマが言ってたけどもしかして…)
思い当たる節があるは、そんな事を思いながら未だにニヤニヤと人の悪い微笑を浮かべるサービスを見る。
「だから、鬼はハーレムにやれせれば良いよ。これで、鬼問題は解決だね」
「解決って…ハーレムが黙って鬼役やる様に見えないけど」
「ん?ああ…大丈夫だよ。ただ飯食わせておけば問題無い」
辛辣なサービスの言葉には絶句する。
そんな研究所所長の様子に気がつかない研究員は、嬉しそうにサービスに笑って言葉を交わす。
「ハーレムさんが鬼ですね。いや〜解決ですね。衣装はこちらで用意するので、ご連絡よろしくお願いしますね」
サービスの微妙な発言を軽くスルーした研究員はスキップしそうな勢いで、二人の元を足早に去って行った。
「の所の研究員は面白い人ばかりだね」
「あ?まぁな…特戦部隊の連中だろうが、マットサイエンティストだろうが…総帥の弟だろうが関係なく接することが出来るのは、有る意味最強かもしれないな」
珈琲を一口啜りながらは、苦笑気味にそう口にする。
「そうだね。そうじゃなきゃ、こんな辺鄙なところにを追いかけて押しかけて来ないよね」
「ああ。元ガンマ団の明らかに色々な方面から狙われているウチに来ても徳は無い割に…一般人まで来るんだから…有る意味まともじゃないかもな〜」
「良いんじゃないかな?高松だとこうはいかない」
「高松は…グンマとルーザーさんと…研究と金だしな…アイツに俺ら以外の友人が居るか非常に不安だぜ」
そう口にするにサービスは笑う。
「居なくても彼は気にしないだろ?」
「確かに。あ…」
「ん?何?」
「高松は呼ばなくても来るんだろうなってさ」
「ああ、ただ飯食べれるしね。恐らくバイオ植物な豆でも披露してくれるんじゃないかな?」
「研究所が破壊されなければそれで良いけどな。ある種の宴会芸に近いからな」
「そうだね。それにしても節分楽しみだね。堂々と邪気払いにハーレムに豆を盛大にぶつけれるからね」
綺麗な笑顔のまま、物騒な発言をするサービスには肩を竦めて言葉を紡いだ。
「まぁハーレムが来ればな」
こうして、や研究員、サービスによって節分の準備を行う事になった。
余談であるが…当日、悪乗りしたハーレムの鬼の出来が凄まじく、研究所の子供たちが泣き叫ぶ事になろうとはこの時の、や研究所職員は思いもしなかったのである。
おわし
2013.4.24.(WEB拍手掲載日:2013.2.1.〜) From:Koumi Sunohara