モシモのもしも


世の中には、『もしも』は無い。

起きた事柄は起きた状態のまま進む。良い事も悪い事も。
俺がハーレム隊長に拉致されるようにガンマ団特戦部隊に強制的に入隊された事も変えられない現実だ。

(もしも…ハーレム隊長に出会わなければ、俺はどんな奴になっていたのだろうと?)

首を傾げた所で、どんな自分なのかも想像できない。

それでも、『もし』とか『たとえば』とかそんな空想を抱くのは人性なのかもしれない。

俺は他人からもよく言われるが前向きな性格をしている。

落ち込む事も勿論あるし、自分が惨めだとか逃げ出したいと思うことも勿論ある。けれど、有りがたい事に落ち込むけど陰気になって無気力になることは一度も無かった。

特戦部隊で隊長達にいじり倒されても、戦場で誰かの命を奪う事になっても。

それでもその時は、『もしも』だとか『たとえば』の思いに駆られる事は少なかった。ただ、夢の国でキャストをしてたらと思う事はあったが、俺は意外に満足していた。給料が無いに等しくとも。

だけど…ハーレム隊長から離れ、パプワ島の赤の番人になってから、少しずつIFが増えていった。


もし…赤の番人と青の番人がジャンとアスでは無かったら、赤と青は違う道になっていたのではないだろうか?


もし…赤の秘石と青の秘石を誰かが壊していたら、パプワとコタローは普通の子供として生活できていたのでは?


もし…シンタローさんがこのままパプワ島に残っていたら、パプワは幸せだったのではなかったのか?



浮かんでは消える気泡の様に俺の中にそんなIFが増えていく。

別にパプワ島での生活が嫌な訳では無い。誰かに言われた訳でも無い。

ただ漠然にそんな事を考える。

記憶を失ったコタローと生活し…別れシンタローさんと共にパプワの故郷を目指す様になって尚の事。そんな思いに駆られる。

自分の力不足と不甲斐なさが…。

そんな時に、何時も思い出すのはナマハゲ隊長にも負けない、何処にでも居そうで…それでいて何処にでも居ない人…と言う人物。

一筋縄ではいかない青の一族と平気で普通に接する人。本人は至って普通だと言うけれど、個性派ぞろいの一族と普通に接している時点で一般人では無いと心底思う。

色々な意味で普通では無いさんは、誰にでも優しい…と言うか“お人よし”と言う言葉が良く似合う。けれども、NOがしっかり言える有る意味俺にとっての憧れの大人だったりする。

その人なら、赤とか青とか関係無く平和的にまとめることができるんじゃ無いか?と思ってしまう。争いやいがみ合うことも、最小限で済むように思う。


だから、願わずにはいられない。

と言う人物がもし…番人だったらと。

赤とか青とか関係なく、上手く調和をするであろうさんを。


けれど現実は不可能なのだ。
実際に番人は俺であるし…PAPUWA島にはシンタローさんは居ない。
赤と青も関係は良好とは言えない。

そのジレンマ故に俺は“もしも”を願ってしまう。
無い物ねだりだと分かっても。


おわし


2009.2.14. From:Koumi Sunohara

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