さよならの代わりに |
人生を生きていく中で、生涯を分かち合える友に出会うと言う。
果たして私は出会えたのかと言うと疑問ばかり残る。
その点弟のサービスは巡り逢えたに違いない。
士官学校で友人を作ったぐらいだから。
それに私から見ても弟のサービスの友人は、本当に良い子達ばかりだと思う。
癖のある高松…一族と相反するジャン…そしてそんな連中をまとめる一番一般人であろうと言う存在。
どれかが欠けても成り立たない…理想的な縮図。
お互いの良い面悪い面を補い合う、そんな存在。
これが所謂、生涯の友と言うものだと漠然と思う。
若くしてガンマ団を受け継いだ私には、サービスの様に友を持つ事も、無二の親友と呼べる者を作ることなど叶わなかった。
別にサービスが悪いとは言わない。
どちらかと言うと、羨ましいという気持ちがあり…ただ…こういった組織を束ねる人間が、おいそれ他人を信用出来ないという悲しい宿命なのだけどね。
だからと言って、友人を作ってはいけない何て誰も言ってないないのだから、作れば良いんだ。
けれどね、こういった上に立つ所為か私は人を信用出来ないんだ…と言うより自分の素直じゃない性格故かもしれないね。
言葉使いに気をつけるけれど、彼は特殊な人間に対しても腫れ物を触る扱いなどしない。
目上の人間であっても、駄目なモノは駄目だと言えるし…卑屈になることも無い。
日本人と言うNOと言えないと呼ばれる人種の生まれにも関わらず、彼の態度は実にハッキリとしている。
だからこそ、総帥である立場の自分にもはサービスの兄に対する感覚で話をする。無論公私混同はしなけれど。
その所為だろうか、 私も少しづつ彼の人柄に惹かれてしまったのわ。
総帥とかそんなしがらみの無い、ただのマジック…サービスの兄のマジックとみてくれる彼に。
そんながガンマ団から去る決意をしていると、誰よりも気づいたのは私だった。
[団を抜ける者に死の制裁を!]
何時だったか誰が言い出したか分からないが、団の中で言われる噂。あながち間違いでは無いけれど、私自身が下しているものでは無い事柄。
けれど気が付けば、誰かが脱退したものを消している。
綺麗事では無い世界だから、仕方がないことで…情報は最大の武器になるから有る意味仕方がない事。
上に立つ人間なら、仕方が無いと割り切るのがベストなのだが…今回ばかりはそうも言えない。
何故なら脱退する人間が、サービスの親友で…私たち一族にはかけがえのない普通の人間であるだから。
(さてどうしたものだろう)
「やれやれ…私も人の子だったんだね…ハーレム辺りにからかわれそうだよ」
前もって言われていたとの面会は、あっという間に訪れた。
緊張した様子で、現れた彼に私は何とも言えない気持のまま総帥の椅子に背を預けた。
静まりかえる空間で、彼は辞表ならぬ…退団届けを私に手渡した。
私は、それをゆっくり開き、中の文章に目を走らせ、同じようにゆっくりと紙を閉じた。
その動作をは緊張した面持ちでみながら、私の言葉を待った。
「成程。…君の意見は良く分かった。だからこそ、私も君の真っ直ぐな想いに応えようと思う」
そう言って私は、言葉を一旦切った。
彼はゴクリと唾を飲み、その後に続くであろう言葉に備え、深呼吸一つ吐いていた。
そんなの様子を視界で確認してから、私はゆっくりとした口調で言葉を紡ぎ出してきたのだった。
「無期の休暇をあげるよ…。だから存分に好きなことをしてきなさい。私に出来る事はそんな事ぐらいだからね」
自分自身で決めていた言葉を、に告げれば…彼は心底意外そうな顔を私に向ける。
まるで我が耳を疑っている様子のに、心の中で苦笑を浮かべる。
(絶対信じて無いね…賢く人の噂も精通してる子だからね…あの様子だと…さてさて…どうしたものか)
首を傾げるしか無様子のに私は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「驚いているね。今までに前例は無いから…まぁ驚きは仕方がないかもしれないな。私はズルイ男だからね。有能な君を消してしまう気も手放す気が無いだけにすぎんのだよ」
サラリと言い切る私に、の表情は明るくなった。
「それでも、俺にとっては有り難い申し出です」
私には清々しいまで、そう言葉を返した。
その清々しい潔い返事に、私は満面の笑顔を返す。
「本当にサービスは良い友を持ったね。兄として嬉しい限りだよ。これは僭越ながら、私からの餞別だ」
そう言って差し出した封筒を受け取るは少し戸惑っているように見える。
は黙って差し出された封筒を受け取り、「お気遣い感謝します。総帥」と口にして私を背にして歩き出す。
「気が済んだら何時でも戻って来なさい 」
足早にその場を後にするに私はそう言うと、彼は小さく一礼をくれた。
「信じられ無いかもしれないけれど、私にとって君は気心の知れた唯一の他人なんだよ」
私は去っていった、弟の友人に聞こえない言葉を口にした。
友と呼ぶには少し年の離れた…弟と同い年の…弟の友人に。
2007.2.21 From:Koumi Sunohara