特戦部隊 |
−お披露目も兼ねまして− |
普段は人気の無い、山の中にたたずむ の研究所。
そんな平和な山の中の研究所は、現在謎の揺れと・・・激しい騒音に見舞われて居た。
(何だ?こんな山奥で・・・こんな揺れと騒音何て珍しいな・・・)
自分が書いた論文に目を通していた、ここの研究所の主である 江は、のんきに椅子にこしかけながら・・・そんな事を思った。
何故彼がこんなにも呑気なのかには、少し理由が有ったりする。
それは…あのガンマ団に籍を置いていた・・・否・・・置いている…それ故に彼は、少しの事では動じないのである。
だが流石の も、鳴りやまない騒音と揺れに重い腰を上げざるえない状況に追い込まれたのである。
要するに自分の頭上に貯めてあった資料などが落ちてきそうで、危ないと感じたからなのだけど…。
(やれやれ。何なんだ?仕方がない・・・外に見に行くか)
コキコキと首をほぐしながら、 はのんびりとした足取りで外にでた。
すると、外に出た途端凄い突風が にふりかかる。
勿論、凄い爆音も彼の耳に入っている。
それらに見舞われながらも、 は空を見上げた。
其所には、真っ青な空では無く。黒い影が辺りを覆っていた。
は、目の辺りに手をかざし、黒い影となっている物体をまじまじと見つめる。
(あれって・・・飛行艇だよなぁ)
目を細目ながら は、物体の正体を見極める。
そして、ソレがいったいどこの飛行艇で有るか、知るためにもう一度目をこらして飛行艇に目を向ける。
すると、肉眼でもハッキリ分かる、見慣れたすぎた【G】の文字。
それに気が付いた は、(ああ。何だ彼奴か・・・)と納得すると…ぼんやりと飛行艇を眺めた。
地上に現れた飛行艇が の姿を捕らえたのか、小さな光の合図を送ってきた。
は、軽く手を振るとすかさず飛行艇も合図を返す。
そしてココに降りると示すように、光の合図が地上に居る に送られる。
は、オーバーアクションで「其処に降りろ」と広く開いた土地を示す。
それを理解したのか飛行艇は、無事に広いスペースに着陸した。
は、乗り物の主が出てくるのを黙って待つ。
ほどなくして・・・プシュウーと言うような、気の抜けた音と共に入り口と思われるnハッチが開かれると、金色の髪がユラリと現れた。
「よぅ! 江生きてるか?」
飛行艇から爽快に降りてきた金色の髪の持ち主事、ハーレムは に開口一番にそう言葉をかけた。
は相変わらずの相手に肩をすくめた。
「見た通り、生きてるぞ。これで生きてないって言ったら、ゾンビかアンドロイドぐらいの無機物だな」
ニャリと不敵に笑って皮肉めいた言葉を は言う。
の言葉に言われたハーレムも同じような不敵な笑いを浮かべて「そりゃーそうだな」と返す。
返された反応に、 は・・・。
(ハーレムには皮肉という技は相変わらず効かないんだなぁ〜)
などとぼんやりと思っていたが、突如現れた来訪者に は言葉を投げる。
「アポが無いのはお前の専売特許だが・・・。で、俺に何か用か?」
尋ねながら…“ちなみに金は貸さないからな”と釘を刺すのは忘れずに。
「今日は違うって。金のあては別に居るからな…今日は別件だ」
『今日は』と言う不吉な言葉を言いながら、ハーレムはそう言い切る。
は、不吉なキーワードを聞かなかった事にして…ハーレムに次の言葉を黙って促した。
「俺の部下を見せびらかすのにきたんだよ」
満足そうに紡がれるハーレムの言葉。
その言葉に は目を丸くさせた。
「あのなぁ〜。普通は紹介だろ?せめて、お披露目とか言えないのかよ」
は、少し呆れたようにそう言い返す。
「細かい事言ってんなよ。第一俺は日本人じゃねぇんだから・・・まけとけてんだ」
日本人じゃないと言う割に、 江戸っ子口調のハーレムの物言いに「十分日本かぶれだろうが」と小さく毒づくが、彼は一向に気にした様子だ。
そんなハーレムの我が道を行く姿勢に呆れつつ、 は自分の中にある疑問を解消するべく言葉を紡ぐ。
「でも何で俺にワザワザ紹介しに来てるんだよお前。こんな山奥にわざわざさぁ〜」
は意味が分からず思わず、ハーレムにそう返した。
無期限休暇扱いでは有るが、実状は現役を離れている に、紹介する事が の中では解せず・・・少しばかり首を捻った。
ハーレムはそんな の様子に、気が付いたのかニヤリとした笑いを浮かべて言葉を発した。
「ガンマ団関連で…紹介した訳じゃねぇって。だから、“見せびらかす”って言っただろ」
“一人根暗に隠者や仙人の如く山奥で研究してるお前にな”としてやったりと言う満面な笑顔。
はハーレムの例え話に、吹き出しながら「悪かったな」迫力の無い声音でそう返した。
そんなこんなでハーレムと が親睦を深めていると、何やら飛行艇からゾロゾロと黒い集団の中でも元気そうな金髪ヤンキー小僧コト…リキットが命じらすな補足を付け加えてきた。
「話を簡素に言えば。隊長は 江さんの所にタダメシを食べに来たん…っうう…痛いスよ隊長」
言い終わらない内に、ハーレムに盛大に殴られているリキット。
「お前が余計な事言うからだろうが!つったく…一言多いんだよお前わ」
「だからって…すぐ叩かなくても良いじゃ無いですか」
「五月蠅い」と理不尽な言葉を吐いて、ハーレムはゴツンともう一発げんこつをお見舞いした。
そんなリキットを哀れなモノを見るような目線で見る 。
「だと思った」
は溜息混じりにそう言ったら、ついでとばかりにハーレムに小突かれる 。
勿論リキットを殴る力よりも…全く込められていない力でだが…。
その様子を他の特戦部隊の面々は傍観者よろしく見守っている。
「ひの…ふの…みの…よの…って結構集まってるなハーレムの部下にしたら」
ズラリと並ぶ面子に、 は率直な意見を口にする。
「“俺の部下にしたら”つーのは気になが…まぁ。アレが俺の可愛い部下共だぜ」
「哀れの間違いじゃ無いのか?」
悪戯っぽく笑って が言えば、ハーレムの可愛い部下達が の言葉にうけたのか…小さく肩を震わせて笑いを堪えてる姿が目に入る。
勿論目敏いハーレムが彼等の所行を見逃すはず無く…。
不気味なオーラーを出して、ギロリと部下達に視線を向けた。
「そんなに面白かったか?それは何よりだな。…面白いついでに、山入って山の恵みでも楽しく取ってこいよ」
“隊長命令だぜ”と鬼のような言葉を言い切ると、凄い勢いで部下を山の方に眼魔砲をぶっ放す。
壇末の叫びと避難の声を聞きながら、ハーレムと は一足先に研究所の方に入っていた。
研究所に入った は、取りあえず客人であるハーレムに灰皿とお茶を出し、ディナーの為に米を炊きに台所に消えた。
ハーレムは大人しく、 の煎れた日本茶を啜りながら が戻ってくるのを待った。
自分の茶を片手に茶請けの煎餅何座持ちながら、 は「悪い待たせたか?」と小さく尋ねる。
短く首を横に振りながら、「別に」と素っ気なく返す。
それを合図に、ハーレムは自慢(?)の部下紹介兼自慢話を に話し始めたのだった。
一通りハーレムの部下の話に耳を傾けた は素朴の疑問を口にした。
「中国、イタリア、アメリカ、ドイツ…こりゃまた国際色が強い割に、日本人は何で居ないんだ?わざとか?」
「気が付いたらこの面子だってだけだ。日本人はわざわざスカウトする気が起きなかっただけだがな」
ハーレムらしい言葉に は「理由はともあれ、日本人枠を入れない所がお前らしい気もするな」と何処か納得気味に頷くと…。
「リキットは日本育ちだけどな」
煙草の煙を美味そうに吸いながら、ハーレムは にそう言った。
そして、意味ありげな微笑を浮かべ再び口を開く。
「実は日本人枠は永久欠番の為に取っておいてあるんだぜ」
「へぇ〜…目星でも付けてるのか?」
興味深そうに尋ねる に、ハーレムは不敵に笑う。
意味不明に笑われた は、頭に疑問符を盛大に付けてハーレムを見る。
そして、何処から出したのか…特戦部隊のお揃いの革ジャンを言葉の変りに投げて寄こした。
要は、お前がその日本人枠だと言いたげに。
その意図にすぐに気が付いた は、何とも言えない表情でハーレムを見ると…少し間を空けて言葉を放った。
「俺ってわけ?…いらねぇよ!…と言ってやろうかと思ったけど、受け取ってやるよ」
“でも俺着ても似合わないんだけどなぁ〜”とブチブチ言いながら、 は頂いた革ジャンをハンガーにかける。
その様子と物言いを黙って見聞きしていたハーレムが、苦笑混じりに言葉を紡ぐ。
「素直じゃねぇな 江。まぁこれで、晴れて 江は俺の部下ってわけだな」
「素直じゃ無いのはお互い様だろハーレム。部下に関してだけどな、残念だな…俺はマジック総帥直轄の部署所属らしいぞ…一回も顔出した事も無いけどな」
苦笑混じりにそう言えば…。
「一回も出てねぇつーのはどうかと思うが…まぁ兄貴直属ならしゃーねーな」
「そう言う訳だから諦めろよハーレム」
「へいへい」
「“へいへい”って…お前本当に分かってるのかよ…」
脱力気味に言う に、ハーレムはただ笑みを浮かべるだけ。
はこうなるとハーレムが同じ話題を振ったところで答えなど期待できないのを知っているので…、無理矢理話を転換させるべく思案する。
(そう言えば…ハーレムの部下達戻らないなぁ〜)
窓の外に見える広大な自然を瞳に映し、 はふとそう思う。
そして、呟くように言葉を紡いだ。
「米も炊けたし…後は材料だけだけど…リキット達迷ってないかな?ウチの山結構広いから心配だな」
「リキットはヤバイだろうが…他の連中は大丈夫じゃねぇか。山の恵みを大漁に持ってくる筈だぜ」
何処から出る自信なのか不明で有るが、ハーレムはそう心配気味の に言う。
そんな言葉の後に、タイムリーに戸が開けられた。
其処には山の恵みを抱えた隊員達の姿。
特戦部隊の面々が山の恵みを抱えて帰ってくるのを合図に…盛大な特戦部隊お披露目会ならぬ鍋パーティーが繰り広げられたのだった。
宴もたけなわ…トップリ日も暮れて…ハーレムと特戦部隊の面々は、帰路に着くべく外に出た。
ほろ酔い気分で騒がしくなった部下を、 の協力の下ハーレムは飛行艇に詰め込んだ。
やっとの飛行艇に部下を乗せたハーレムは、手伝ってくれた に悪戯子が見せる笑いを見せた。
そして、おもむろに言葉を紡ぐ。
「今日は飯だい浮いてラッキーだったぜ 江」
労う言葉では無く、そんなハーレムらしい…そんな言葉。
ハーレムの言葉に、思わず吹き出しそうになるのを堪え… は少し不機嫌な顔を作って彼は言葉を紡ぐ。
「何だよ。それが目的だったんじゃないのかよ」
の言葉に小さな笑いを漏らし「さぁーな。 江の想像に任せるさ」とハーレムはそう言う。
そんな彼らしい物言いに は少し笑いを漏らし「言ってろ」と短くそ言い返す。
それにハーレムはヒラヒラと後ろ向きで手を振った。
撒き起こる爆風を体全体に感じながら は誰に言う訳でも無く、自然の流れのように口が動く。
「さて、さて。次は何時やって来るのやら」
意外に義理に厚い友人の為に は、飛び立つ飛行艇を見つめながら、そんな呟きを漏らした。
そして、(飛行艇着陸スペースでも作っておきますかね)とこっそり胸の内で思ったのだった。
END
2004.4.1 From:Koumi Sunohara
★後書きと言う名の言い訳★ |
夢へ |