年末の恒例儀式?
は基本的にギャンブルはしない。
質素堅実、その言葉がよく似合う男である。
馬鹿騒ぎも勿論するが、基本根が真面目なは色々な後始末をしなくてはいけないデメリットが有る分ある意味損な役回りとも言える。
彼…の竹馬の友である高松はその逆で、割とギャンブル性が高い。楽して利益を得るに越したことが無いというスタンスである。
もう一人、ガンマ団総帥の弟であるハーレムもそう言った点で言うならギャンブル性の塊だった。競馬、麻雀…ギャンブルと名のつくものであれば、何でも手を出す。
しかも、全く勝てないから尚質が悪い。
下手の横好き…その言葉が似合う程、ギャンブルをしては負け続けると言うある意味負のスパイラルに陥っているであった。
そんな、ギャンブル好きの友人とはよく比べれれて、蟻とキリギリスと例えられる事が多い。
堅実に手堅いは蟻で…排他的な高松とハーレムはキリギリス…実に的を得た表現である。
だからと言って別には、ギャンブルをまったくしない訳では無い。
人付き合いで、麻雀もポーカーも競馬もパチンコも嗜む、ただ、好き好んで参加するわけでは無いというだけである。
そんなではあるが、自身から望んで購入するものがある。
ハーレム曰く…。
「んなクジみたいなもん買って楽しいのか俺には気がしれねぇなぁ」
と…つまらなそうにそう言い。
高松は…。
「どうせ神頼みみたいな物を買って何が面白いんですかね」
と呆れたように口にした。
そんな風に、勝てないギャンブルをする二人に何と言われてもは気にしない。
曰く…。
「宝くじにはロマンが詰まっている。そもそも、大当たりとかしようとは思ってないし…あれだよ、おみくじ感覚…良い事あれば良いかな?みたいなもんだ」
そうは晴れやかに言いきった。
清々しいくらいに、そう告げるにマジックやサービス、ルーザー、ジャンは温かい目で彼を見守る。
「うん。らしくて良いね(馬鹿弟に比べて、理性のある買い方だしね…本当に可愛いものだね)」
「天に全てを任せるあたり日本人らしいね。折角だからには何か当たると良いよね」
「堅実なにしては珍しいけれど、まぁ良いんじゃないのかな?」
「ははは。高松なら大量に買うだろうけど、は身の丈にあった量だし誰にも迷惑かけてないからいいんじゃないか?」
各々方言葉は違えどに対して優しい言葉である。
これが普段の生活や交流における差なのは歴然とした事実であろう。
生粋のギャンブル体質の2名を除き、温かい目で見守られているであるが、彼には彼なりの宝くじを買う拘りがある。
一つ.大安吉日であること
二つ.長年購入している宝くじ売り場であること
三つ.購入した宝くじを冷蔵庫にいれること
この三つの拘りがにはあった。
最初の二つまではよくある話ではあるが、最後の冷蔵庫は何故だかはそうするのである。
それについては、自身もイマイチよく分かっていないらしいが…の家ではそうだった為だと理由は分からないがそうしているらしい。
拘りと言う訳では無いが、は後決まった枚数を必ず毎年買うのだ。
曰く…。
「え?何となく…習慣かな…年に一度の運だめしだし、欲張ってもケチってもなんか気持ち悪いだろ」
そうケロリとのたまった。
その所為かは、この毎年購入する宝くじの勝ち負けには特に気にしたりしない。
買った金額より少なくなったとしても…。
「まぁ…こんなもんだろう」
と特に気にしないし、勝っても。
「今年最後に良い事あったなぁ〜」
と呑気に構え、来年の軍資金を差し引いて、友人にちょっとしたプレゼントを贈ったり、自分へのご褒美を購入したりするのに使用する。
ギャンブル大好きハーレムと高松にはまったくもって理解のできない感覚なのかもしれない。
そんな訳で、今年もはガンマ団本部からわざわざ日本にやってきて、寒い風が吹く中街を歩く。
クリスマス一色に彩られた街で、目的が年末ジャンボ宝くじを買いに行くという目的と言うのが少し色気が無いだろうがはまったく気にしていなかった。
寧ろガンマ団というある意味、アウトローな組織に所属している彼は若干世俗の事は麻痺しているので「ああ楽しそうだな」ぐらいにしか思っていない。
まぁだからといって、クリスマスを楽しまない訳ではないのであるが、彼の目的はあくまで宝くじの購入なのである。
(うん。今年もバッチリ大安だし…当たっても当たらなくても、これやらないと一年が終わった気がしないんだから、高松やハーレムの事言えないかねぇ〜)
そんな事をボンヤリと考えながら、は毎年恒例のそこそこ賑わっている宝くじ売り場に足を運ぶ。
「連番で50枚バラで10枚下さい」
お決まりの科白にお釣りなしピッタリの金額を窓口に出す。
「おや?お兄さん今年も来たのかい?」
の言葉に売り場の初老の女性がそう口にした。
「はい。よく覚えてますね、俺宝くじ買うのは1年に1回なのに(まぁ換金にここに来ることもあるけど)」
そう口にしたに、売り子の女性はニッコリ笑う。
「覚えてるさ。顔の良いお兄さんは、こんなおばさんでも目の保養になるからね。眼福眼福」
「保養にはならないと思うんだけどな〜」
「謙遜なさるな。えっと何時も通り、連番で50枚バラで10枚だね。はいお待ちどうさん。お兄さんに幸福が舞い込む事を祈ってるよ」
「ははは有難う。いいの当たったら、換金しにまた来るよ」
「ああ楽しみにしてるよ」
そんなやり取りをしながら、は無事に宝くじを購入した。
(流石客商売と言うか…覚えてるもんだねぇ)
しみじみと、はそんな事を思いながらその後ぶらり久しぶりの日本を満喫した。勿論、ガンマ団本部に居る竹馬の友やら、その兄達へのお土産を購入するのも忘れないが…。
彼は買った宝くじをそっと冷蔵庫にしまい、クリスマスよりも正月を重要視する日本人らしく、12月31日を楽しみにするのである。
おわし
2012.12.21.From:Koumi Sunohara