− 重要なのは
      込める気持ちと感じる想い −



ガンマ団に戻って、初めての冬。
俺は暖房の効いた俺用に宛われているラボで、資料整理に励んでいた。

コンコン。

短いノックに俺は「開いてるよ」と声をかける。
すると、ガチャリと音とを立ててノックをした人物が室内に入ってくる。
その入ってきた人物は、俺にとっては意外過ぎる人物だった。

それは…滅多なことでは、干渉してこない…新総帥コト…サービスの甥にして…ジャンと同じような人種らしいが…紛れもない…サービスの甥。
元教え子…(と言っても…かなり短い期間だけど…)のシンタローが突然俺のラボにやって来た。

前総帥同様、赤いジャケットを羽織ってる姿は、なかなか堂が入っていると思う。
そんな彼が、高圧的な態度ではなく…少し緊張したような表情で黙って立っているので、俺は取りあえず椅子に座るように促した。
それに従って、シンタローは室内に設置してあるソファーに腰をかける。
俺は、簡単に用意できるインスタントコーヒーをカップに入れ、お湯を注ぎながら、シンタローに言葉をかけた。

「シンタローがココに来る何て珍しいな。何か不具合でも出たのか?」

俺的に思いつく、シンタローの訪れる理由を口にした。

「イヤ…不具合は今のところ無いし…寧ろ好調だ」

「そうか。それは何よりだな…。まぁグンマもキンタローも居るから、わざわざ俺の所に来なくても済むもんな」

シンタローの言葉に、内心ホッとしながら俺は言葉を返す。
が…益々、シンタローがココに来る真意が分からず首を思わず傾げてしまう。
そんな俺の様子にお構いなしに、シンタローは俺が淹れたインスタントコーヒーを口にしながら、意を決したように口を開いた。

「あのさ…先生」

「今更だろ。先生何て」

笑って俺がそう返すと「そうスね」とシンタローが短く返す。

「んで、どうしたんだ?何か俺に用事が有るんだろ?」

「ああ…うん。あのさ…サービス叔父さんの誕生日もうすぐだろ」

俺はすぐにカレンダーに目を向けて、日付を確認しながら俺は「ああそうだな」と短く返した。
するとシンタローは又、俺に言葉を続けてきた。

「それで、叔父さんに何をあげたら喜ぶかと思って…さんに教えてもらいたいと思ったんだ」

シンタローの意外すぎる、そうんな言葉に俺は思わず唖然としてしまう。

(待てよ…毎年…あげてるんじゃ無いのか?)

「あのなぁ〜毎年、サービスに誕生日プレゼントあげていたんだろ?何を今更、悩むんだ?」

俺は心底不思議に思ってシンタローにそう尋ねた。

「不思議そうに思うかもしれないけど…。今年はどうしても、叔父さんに喜んで貰えるものをあげたいと思ってさ」

何処か遠い目をしたままシンタローはそんな言葉を口にした。

「俺は、甥っ子であるお前から贈ったモノならサービスは何でも嬉しいんじゃ無いかと思うのだが…」

俺は率直に思った言葉をシンタローに言った。
シンタローは月並みな俺の言葉に、少し納得いかない様子で此方を見てくる。
その様子は、あの大きな団体の総帥の姿とは似ても似つかなくて…少し年相応に見えた気がした。

(本当に…叔父さんっ子だよな…シンタローは。でもなぁ〜俺がアドバイス出来る事なんて…大して無いだけどな)

などと思いつつ…シンタローに応えてやるべく、俺は取りあえず言葉を紡ぎ出した。

「確かにハーレムだったら、色々ケチ付けたりするだろうが…サービスはお前があげるモノなら何でも喜ぶとは思うぞ。例えば、その辺の海に落ちてる貝殻でも、サービスは喜ぶと思うけど?ちなみに高松は…グンマやキンタロー辺りだたったら“肩叩き券”とかでも小躍りするぐらい喜ぶだろうけど」

「まぁ…ドクターは…昔からあんなノリの人だから…そうかもしれないけど…叔父さんは…違うんじゃ無いですかね」

気の無いシンタローの言葉に思わず俺は、苦笑を漏らした。

「ちなみに親父さんも喜ぶんじゃないか?」

“お前さんからの贈り物だったら”と付け足して言えば…少し嫌そうな顔をしつつ、満更でもなさ気に「まぁ…まぁな」と頬をポリポリ掻いて言葉を紡いだ。
その様子を見届けてから、俺は言葉を続けた。

「大袈裟に言ったが…要は“どれだけ想いが込められるか”と“その想いを受け取ってくれる”かが大事なんじゃないか?」

「想いスか?」

怪訝気味に反復するシンタローに「ああ」と軽く返しながら、さらに言葉を紡ぎ出す。

「毎年喜んでシンタローのプレゼント受け取ってるだろう?」

俺がそう尋ねると、シンタローはコクリと頷く。
そんな姿が、何だか懐かしいビジョンが頭を掠め(ジャンやハーレムも昔…そんなコトを聞いてきたっけな)とぼんやり思う。
だから俺は、思わず出すつもりのない言葉を思わず漏らしていた。

「昔も…そんな言葉を聞いたっけなぁ〜」

「俺初めて、さんに聞きましたけど」

「シンタローはな…初めてだけどな。同じように尋ねてきた奴が居てさ…」

「俺は俺スよ」

少しムッとした口調でシンタローが言葉をはさむ。
そんなシンタローに俺は苦笑を浮かべて言葉を返す。

「誰も、シンタローと誰かさんを重ねて無いぞ」

「今わね…誰も俺を誰かと重ねたりしませんけどね」

少し自嘲気味に笑うシンタローに俺は…。

「今が有れば、取りあえず良いじゃ無いのか。昔なんて戻せないし、やり直せないんだからさ」

そんな言葉をかけた。
俺の言葉に、シンタローは少し驚いたように目を軽く見開いた。

「叶わないスねさんわ」

ヤレヤレと肩を竦めて、シンタローは感嘆に似た声音そう俺に返してきた。

「まぁ…こんな所で若いお前に負けてるようじゃ…彼奴等とはつき合っていけんさ」

肩を竦めて俺が言うと、シンタローは「確かに」と小さく呟き笑いを漏らす。
そして、腰掛けていたソファーから立ち上がり俺に背を向けるようにして…立った。

「正直言って…少し難しくて…完全に飲み込めなかったけど…」

そう言って言葉を一旦切り、再度言葉を紡ぎ出すシンタロー。

「俺らしいモノで、叔父さんに喜んでくれそうなモノをあげれば良いってコトは…理解できたよ」

クルリと一旦俺の方を振り返ったシンタローの表情には、もう迷い何てものは無いように俺には見えた。

「そりゃー何よりだ」

ニッと不敵に笑い返して見れば、少しだけシンタローの表情がムッとした表情になる。
きっと俺に子供扱いされたのだと思ったのだろう。
そして、そのシンタローはドアをバタンと行きよりも大きな音を立てた締めたのだった。
勢いよく締められたドアを俺は、少し苦笑を浮かべて眺めた。
そして(本当に祝うのが楽しみなんだな…まだまだ可愛い所も有るじゃ無いか)と思いつつ…何かが頭を掠めた。

(そう言えば…)

「そう言えば…サービスが誕生日ってコトは…ハーレムも誕生日では無かっただろうか?」

シンタローの出て行ったドアを眺めて、俺は不意に頭を掠めた言葉を口にした。

「さて、誕生日何を贈ろうか?」

カレンダーを眺めて、俺もまた誕生日への構想に想いを巡らせるコトにした。

(今年のサービスの誕生日は、きっと凄く楽しくなるだろうなぁ〜)と思い馳せながら…。





END

                                 2004.2.14 From:Koumi Sunohara



★後書き&言い訳★
サービスの誕生日ネタで…先生とシンタロー総帥の小話でした。
よく行く桐島さんの所で、ハーレム夢を受け取り…彼らの誕生日が2月14日だと言う事実を知り…慌ててコレを執筆しました。
慌てて書きましたので、かなり散文度が3割増しぐらいに…。
取りあえず14日中に間に合ったから良しとしますが…、後で修正の必要が大って感じです。
ああ反省と後悔ばかりが…後を絶ちませんが…。
そう言えば…久しぶりにテニプリ以外のモノをupの気が…。
まぁ兎も角、こんなお話におつき合い頂き有り難う御座いました。


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