動 き 出 す 時 |
−始まりはありふれた日々一コマ− |
疎ましいと思われることに慣れていた
何故なら私は青の一族だから
人との距離は当たり前で
真の友と呼ばれる者など知らないし居ない
それが普通…私の世界だったんだ
春が来て夏が来て…秋に冬…。
巡る季節を色のない世界の中で生きた私。
だからガンマ団士官学校に入るのも、何となくの流れのまま。
兄も…ハーレムも…当然のように其処に居たから…自分もまた自然の流れに沿うように其処に居た。それが当然の様に…。
何時もと変わらない新緑と桜が舞う春に、士官学校に入学式が行われた。
一族の人間ではあるけれど、
自分の髪の色とはまったく異なる漆黒の髪を持つ三人に何故だか私は囲まれていた。
囲まれた理由も…何故揃いも揃って黒髪なのかも分からない。
だけど彼らは、凡庸に…俺が誰であることなど気にも止めずに明るく話しかけてきた。
瞳の色が綺麗だとか…髪が綺麗だとか…そんな話題であったけれど、本当に自然な感覚で彼らの話を聞くことが出来た。
まるで昔からの友人であるかのような妙な和みムード。
此処がガンマ団士官学校入学式だと言うことを忘れさせるような…穏やかさで、正直錯覚を起こしそうになった。
そうこうしている内に、黒髪の一人がポツリと言葉を漏らした。
「何かアレだな…」
「何だよ」
「俺らって昔からの馴染みたいに自然に話ししてるよな。今日初対面なのにさ」
「「ああ…そう言えば」」
俺ともう一人の黒髪のは納得して、また優しい雰囲気が生み出されようとしていた矢先だった。
一人の口元にホクロを持つ男が不意に言葉を発した。
「君達は変わっていますね」
そう呟かれた瞬間私は、内心ドキリとした。
(このホクロのヤツは素性を知ってる…。この二人に気づかれるのも時間の問題か…)
不意に掠める思いは、何だかもの寂しさを感じた。
何故かは分からないが、この空間だけにはただのサービスとして居たいと思う自分が強かった。
それでも、時間は無情で…私たちは名前を名乗り合うことになった。
自分の名を名乗り合う事に成っても、もジャンも別に気にする様子もなく普通だった。
ただ高松だけが、意外そうに両者を見て…少しだけ苦笑を浮かべていた。
そんな高松に、は呆れ顔で言葉を紡いだ。
「気にしたって仕方がないだろ。関係者だろうが何だろうが、俺は今日初めて会ったし…別にコネを求めてるわけでも無い。純粋に何気なく話しかけた…それに何の問題が有るっていうんだ?それとも何か?一々人の出生や家柄考えたり予測して話しかけなければいけないのか?」
ハッキリと私としては綺麗事を言われた筈のなのに、意外な事に不快感は感じなかった。
寧ろ、言われて気がついた…。
自分が一番青の一族という血に拘りすぎていたって事に。
(目から鱗とはこの事を言うんだな)
そんな事を思いながら、ぼんやりとを眺めているとジャンもに同意したように頷くし、高松も「悪くないですよ」と楽しげに笑っていた。
「何だよそれなら、そんな悪趣味な事すんなよ」
そう言うジャンに高松はニヤリと不敵に笑った。
「素性が分かって態度を変えるならソレなりに何かしようと思いましたけどね…。あんた達は変わらなかった…しかも本人も良いというなら、私はそれ以上忠告もする必要など無いんですよ。知っても尚凡庸なつき合いを願うのなら、ソレは心からの正直な答えでしょう」
ハッキリと言う高松の言葉に黙っていたが口を開く。
「俺は高松も相当変わってると思うぞ」
その言葉にジャンが頷き、言われた高松は肩を竦めている。
不意に腕時計に目を走らせれば、入団式の時間が迫っていた。
このまま入団式など出ずに、語り合えれば良いのだが…これからつき合うコトを思えば得策では無い。
そう思った私は言葉を紡いだ。
「それよりも、そろそろ行かないと入団式に間に合わないじゃないか?」
その言葉に私たちは顔を見合わせて…四人揃って、入学式に向かって走ったのだった。
まるでソレは何かが動き出す序章のように感じた。
友であり…分かち合える仲間に成り得ると…予感めいた事だけれど…感じたんだ。
おわし
2006.1.26. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ web拍手で2005.11.14掲載作品。 士官学校編の始まりのお話になる…「ガンマ団」のサービス視点です。 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 |
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