− 叶った願い − |
赤の秘石よ…我が母よ…
もしも…願いを言って良いのなら
もしも…望みを叶えてくれるなら
俺の…望みは…
赤の秘石の守護者の俺は、普通の人間と言うには不可思議な存在かもしれない。
でも一応人間の姿をとってるし、人間と言っても遜色は無いと思う。
ん〜親が秘石と言う事を除けばだけど。
ともかく俺は人並みにジャンと言う名を持ち、赤の秘石を守りながら番人何て言うものをやっている。
それは、俺の使命であり…宿命だが、俺はそんな人生だが不満は無かった。
第一ソレが俺の存在意義なのだから、変だと比較して感じるモノが無いって言うのもあるのだろうけど…。
でもそんな俺の人生に転機が訪れた。
「ジャン…お願いが有るのですが聞いてくれますか?」
不意に言われた赤の秘石の願い。
満足に内容を聞かずに、俺は二つ返事で了承した。
内容は青の一族の動向の探り入れ。
俺は赤の秘石の願い通り、ガンマ団に潜入することになった。
簡単に済む事じゃ無いけれど、順調に事が運ぶはずだった…。
だが…予想外の出来事が俺に起きた。
それは…有る意味嬉しい誤算だったのかもしれない…。
大切な仲間が出来た。
言うなれば同期という連中だ。
俺は元も、社交性が有ったのか…誰とでも仲良くなれるタイプだった。
それでも、こと更仲の良い奴らも出来る。
必然的にその連中と行動を共にする…そんな奴らが3人居た。
一人目は、青の秘石…言うなれば青の一族の血族者。
現総帥の弟に該当するヤツ…でもとっても良い人間で…俺はかなり気に入っている親友と言って良い存在の…サービスだ。
二人目は…戦闘訓練のサボり常連の癖に士官学校では1.2を争う事の出来る実力の持ち主で、変な研究を除けば、考え方が面白く…ちょっぴり妖しい科学を専攻している遊び友達の高松。
そして、一番の常識人で…人一倍心配性…だけど、機械工学に長けて総帥及び青の一族からも一目置かれている…不思議だけどかなり良い奴の。
そんな友と呼べる存在が出来た。
おかげで…番人何てやっている俺にとって、ガンマ団に居た時間は凄く楽しく過ぎていった。
浦島太郎が竜宮城で楽しい時を過ごす様に…その時間は…本当に楽しかった…。
しかし世の中は、公平に出来ているもので…。
幸せがあれば、不幸も有る。
俺とサービスは戦地に居た。
血と爆薬の臭いが立ちこめるその地は、今まで暖かかった世界と同じとは想えないほど荒んでいた。
そんな大地に降りたって、俺は高松や…そしてサービスと過ごしていた場所が、どれだけ大事な場所だと気がつかされる。
だからこそ…2人で何としてでも生き抜いて帰ろうと、心の中で強く願った。
だが…皮肉なもので…戦況は俺が思う程おもわしく無かった。
残ったのは、俺とサービスだけ…。
それでも、2人生き残る自信も有る。
そんな刹那に事は起きる。
敵襲…。
俺は、迷わずサービスを庇おうと思った。
その時…一瞬…の怒った顔が目に浮かぶ…。
俺やサービスが大怪我や風邪等をひくと自分のことのように怒りだす、マジで良い奴の顔。
(だってよ〜。サービスも大事な友だろ?)
と思うことにして、敵の前に俺はヒラリと躍り出る。
案の定と言うべきか、敵は俺の存在に銃口を向けてくる。
(赤の秘石にも悪いけど、俺は)
サービスが思わぬ行動を取った。
ガンマ砲…。
青の一族に伝わる攻撃法。
感情の起伏が激しかった所為かもしれないが制御何てモノはあり得なく…俺は生死の境を彷徨ッてる最中に…さらにサービスの兄ルーザーに止めを刺された俺は、思考だけの存在となってパプワ島に還っていった。
それから25年強経過して…。
擦った揉んだ有ったが、俺は復活してガンマ団に居る。
番人の仕事は、リキットが「やる!」と言って聞かなかったので、お役後免と相成って…ガンマ団に居る訳だ。
サービスも高松も居て、相変わらずな日常で…結構充実した日々を送っている。
が…俺は探している人物が居ないことに気が付いた。
ガンマ団の何処を探しても…の姿は何処にも無かったのだ。
初めは、何処かに研修や休暇を取って今はガンマ団本部に居ないのだと思っていたが…。
どうやら、そう言う訳では無いみたいだった。
ガンマ団に戻ってきて、習慣化したサービスと高松とのお茶会の最中に俺は遂に疑問をぶつける事にした。
「そう言えばさ。居ないよな……って今どうしているんだ?」
「…」
俺の言葉にサービスは黙り、高松はポケットから煙草を1本とって口に銜え火を点け遠い目をしながら重い口を開いた。
「ロボット工学者として研究所の所長をやってますよ」
ふーっと息を吐いて高松は独り言のような口調でそう紡いだ。
「ガンマ団関連のか?」
「イエ…。団とはまったく関係のない、個人の研究所です。団に居ないんですよ」
「何でだよ、が出てったって言うのかよ」
俺がそう言うと、高松は肩を竦めて俺を見てくる。
「もはや思考回路が人間業じゃ無いですねアンタわ…って…秘石人でしたか…おーっと失礼」
「高松…嫌味に拍車がかかったんじゃないか?」
高松の失礼極まりない言葉に、サービスが謎のツッコミを入れていた。
俺は黙って2人のやり取りを見ていたが、話がズレそうなので言葉を挟むことにした。
「理由はともあれ、の居場所分かってるんなら…会いに行こうぜ!そこで、話を聞けば良いじゃん…名案名案」
俺が一人張切って言うと…高松が呆れたように俺を見て言葉を紡いだ。
「まったく…バカは死んでも直らないと言うのは本当のようですね。アンタがに会いに行った日には…を心臓発作で死ぬかもしれないんですよ?」
“はアンタみたいに…図太い神経は持ち合わせて居ないんですからね”と嫌味も忘れずに高松は付け加えてきた。
その言葉に…要するにガンマ団時代の俺の死がが居ない理由らしい事が高松の話で分かったが…俺は話を聞いててふと(サービスと高松は残ってるじゃないかと)思った。
「でもよ〜。高松も…サービスも…ガンマ団に残ってるんだぜ…」
「高松や俺の場合は、兄…ルーザー兄さんの事が有ったしな…見守る義務も有った…とは立場と状況が違う」
「は才能有る人間だろ?マジック元総帥が手放す何て考えられないけどな〜ぁ」
「手放したくない人材でしょうが、の憔悴ぶりを目の当たりにして…しぶしぶ了承してたようですよ」
高松は懐かしむように、そう言葉にした。
俺がソレに何か言う前に、隣にいたサービスが補足とばかりに言葉を紡ぐ。
「気に入ったモノには甘所が有るからねあの兄は…」
「んじゃー。の消息は不明な訳かよ?」
俺は2人の言葉に、少し落胆しながら言葉を紡いだ。
すると…。
「でも、居場所が分からないって訳じゃ無いですけどね」
高松は何でもない事のように、そう俺に言う。
「マジでか?」
思わず出た言葉に、高松は溜息一つ吐いた。
「マジもマジ大マジですよ。アンタに嘘付いても、嘘の吐きがいが無いでしょ」
呆れ口調に高松は俺にそう言った。
かなり俺に対して失礼な言動だったが、取りあえず無視することにした俺。
「何せ、私のグンマ様のロボット工学の師匠は何を隠そう!ですからね」
自分の事じゃないのに、高松は自慢げに語っていた。
「え?やっぱ、団に残ってるんじゃねぇ〜か」
高松の話を聞いた俺はそう高松に切り返した。
グンマはガンマ団に所属してる訳だから、ソレを教えるとなるとやっぱり…団に居ると思ったから、俺はかなり自信満々にそう口にした。
「違いますよ。はね…ガンマ団とは切り離して、個人的にグンマ様の先生をしていたんです…」
少し寂しげに眉を寄せた高松はそう俺に返した。
「でも、団に来て教えていたんだろう?」
「いいえ。グンマ様がの所に通ってましたよ。それはも〜楽しそうに」
「グンマからその話を聞いたマジック…兄が、に頼み込んだらしいよ。シンタローにも教えてやってくれと連れて行ったよ。でも…シンタローはすぐに厭きてしまったけどね」
苦笑を浮かべて、俺を見ながらサービスは言った。
“本当にそう言う所がシンタローとジャンは似ている”と小さく付け足して。
「そう言われると、返す言葉が見あたらないな」
俺はそうサービスに返しながら、の話題を再び切り出した。
「でもよ〜。俺生き返ったしさ…。が抱えてる過去の一部は精算されたんだしよ…。それに…キンタローだって、習いたいんじゃねぇの?グンマの恩師にさ。それに、程の人間探したって滅多に居ないだろ?」
「ジャンにしては、考えたって感じですが…そう簡単にいかないでしょう」
「そうか?」
「ええ、そうですとも。楽天的を絵に描いたアンタとは、別物ですよ何て特に。典型的な理系人間なんですから…“ハイ死にました…ハイ生き返りました”何て信じられるわけないでしょう」
「だってさ〜」
言淀む俺に、高松は「ったく…仕方が無いですね。この件に関しては、私に任せてもらいましょう…とのパイプを持ってるのは私だけですからね」そう言って高松は、この話しを終らせた。
最後の最後まで、この件に俺が関わるなと釘を何度も刺して。
(まぁ〜俺がこんな事で諦めるわけも無いんだけどね)
数日後…高松の反対を押し切って、俺は勝手に高松の車の後部座席に身を潜めて機会を待った。
順調にへと進められる車は快適だったが、目敏い高松に走り出してしばらくしてバレタ…。
バレタ俺は、高松の車がエンストした事を良いことに…後もう少しでの研究所だって事で、一足先に向かうことにした。
勿論歩きだ。
そうして、の研究施設の中に入るべく、扉の照合番号と向き合う俺。
相性番号云々聞かれたり、何やかんや有ったけど…俺はサッサと解除してゆく。
相性番号の内容は、昔が使っていたものだったので難なく作業が出来た。
昔と変わらないの思考回路のに嬉しくなりながらも、俺は颯爽と研究室に足を進めた。
部屋に入ると、は真面目に仕事をこなしていた。
邪魔するのも何だとは思ったが、俺はに声をかけた。
高松やサービスの予想通り、は俺の存在にかなり驚いていた。
それでも、俺の存在は半信半疑ながら認めてくれていたらしく…「ジャン(仮)」と俺を呼んだ。
ハッキリ言って…その“(仮)”って言葉に傷つきながらも、俺は自分が本物で有ることをに訴えた。
正論と…起こっていることのギャップの狭間に揺れるは、俺を複雑な表情で見ていた。
平行線を辿る会話中に、宛の電話が鳴り響いた。
は少し俺と電話を見比べながらも電話に出た。
少しの間は我慢して待っていたが…電話の先がサービスだって事に気が付いた俺は、遠慮無しに会話に加わった。
サービスの説明や、俺の誠意(笑)…おまけに…高松の話によって俺の存在を認めてくれたに俺は、元より考えていた提案をした。
「ガンマ団に戻って、4人仲良く馬鹿やろうぜ」
その言葉にはすぐに、返事を返してはくれなかった。
困ったような表情を浮かべて何かを考えているようだ。
その時小さな声で高松が俺に耳打ちした。
「すぐに現実を受け入れる訳無いでしょ…25年の時間はアンタが思うほど短くは無いのですから…」
俺は、それでも納得が行かずにもう一度言おうとしたところで…高松が目配せしてきた。
「ちゃーんと対策の作戦有るんですから、ここは任せなさいジャン」と目で高松は俺に語ってくる。
仕方が無しに俺は高松にその場を任せて、2人のやりとりを見守る事とした。
「シンタロウ君とグンマ様からの伝言が有るんですがね」
そう切り出して高松は俺と同じ内容だけど…総帥直々…つーかシンタローの要請をに伝えた。
は苦笑を浮かべながら、高松の話を聞きながら所々ツッコミを入れていった。
場も御陰で和やかになり、俺が復活した経緯やガンマ団の現在の情勢…などに話していった。
その話の一つ一つには、一喜一憂しながら耳を傾けている。
そんなに俺は懲りずに、誘いの言葉を口にした。
「まだ言う気ですか」と言う高松の視線は無視することにして、俺はをジーッと見た。
は少し肩を竦めて「時間…ちょっとだけ考える時間ぐらいくれよ」と短く言った。
が少し時間が欲しいと言うので、今日の所はお開きということでこの話は終了した。
んで俺は、の所に行くときと同様に、俺は高松を置き去りにしてガンマ団本部に戻ってきた。
理由は、まぁ色々有るけど…一つ上げるとしたら、あれ以上居たら新薬の実験体にされそうだから…ってのが大きいかな…。
でも今は高松よりで俺は頭が一杯だ。
最後に「少し時間をくれ。絶対に返事はするからさ」と言ったの言葉。
その言葉をから聞けた俺は…はきっと戻ってくる…そんな確信を感じることが少し出来た気がした。
それだけでも、大きな収穫だった。
だから俺は、(焦る必要は無いもんな…時間は沢山あるのだし…)と思うことにして、をゆっくり待つことにした。
それからも日は無情にも過ぎゆく訳で…。
から何のリアクションも無いまま日々が過ぎゆく。
俺は、何時もが来ても良いようにガンマ団の建物内で一番外の様子が見渡せる大きな窓の有る場所を陣取って待っていた。
真っ赤に染まる木々の葉がカサカサと音を発てる。
あんまりにも、からの反応のなさに自分でも似合わないと思う溜息が口から漏れる。
そんな様と秋の風情で何だかセンチメンタルな気分になるなぁとか思ったり。
すると、呆けた矢先だった…。
「お前ほど、哀愁が似合わない男って居ないな」
ククククと咽で笑いを押し殺した声と、呆れた様な声を交えた…俺にとって待ちに待った友の声が不意に窓の下から聞こえた。
(え?マジで…?かよ?)
俺が驚いた表情で、窓の下に目を向けると…は、ニッカと笑みを浮かべて片手を上げて俺を見た。
「よっ!ジャン、出戻りだけど宜しくな!」
は俺にそう言った。
俺もすぐに、に返すべく言葉を紡ぐ。
「おう!昔みたい騒ごうぜ」
俺の言葉に、は満面の笑顔を返し「これから、手続きとか有るからさ。後でな」と言ってガンマ団の建物の中に入って言った。
俺は、それを何とも言えず嬉しい気分になりながらの姿を見送った。
「これで、全員揃ったんだな」
紅葉が赤く色づく木々を眺め俺は、誰に言う事無く呟いたのだった。
もしも願いが叶うのなら…
赤の秘石よ…
…友と…4人で笑い会える日々を再び…
END
2003.12.8 From:Koumi Sunohara
★後書きと言う名の言訳★ ジャンsaidの男主人公友情系パプワ夢でお題22番『懐かしい声』とリンクした話しです。 ジャンがさんの所に行くまで+過去の話+αって感じですかね。 珍しく、あんまりギャグを入れなかった話です…たぶん。 単品でも読めるように、書いたつもりですが…意味が分かりに方がいらっしゃたら…お手数ですが22番も読んで下さると良いと思います。 それでは、ココまでおつき合い頂有り難う御座います。 |
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