殺伐とした仕事場で、デスクワーク中心の仕事を黙々とこなしながら…俺は窓に目を向けた。
この仕事場からは、四季折々の風景が眺めることが出来る。
今は、銀杏や楓に紅葉が色づきが綺麗で…秋の様子を余す事堪能している。
そんな秋の風情を楽しみながら、俺は仕事場の窓を少し開けた。
ふわりと薫、枯葉や土の臭い。
(ああ秋だな〜)と感じながら…ハラハラ舞う、色とりどりの枯葉を眺めた。
何だか枯葉の落ちる様を見ていると、何だか物悲しさがこみ上げてくる。
秋は人をセンチメンタルな気分にさせると言うが…。
本当だなー…と思う。
その所為だろうか…あえて思い出さないようにしていた記憶の封印が、小さな隙間から漏れ始めた…。
目を閉じれば浮かぶのは、今は無き友と…今も健在であろう戦友との思い出だった。
その頃の俺は若く、何事にも活力に満ちていた。
平和の世へ繋がるための科学への探求心の塊で、本当に充実した日々を過ごしていた。
殺人集団の中で研究する矛盾も無いとは言い難かったが、信じ合える友が居たから普通に過ごせていたのだと…今更ながら思う。
だが、転機は訪れた。
親友の…戦死だ…。
信じがたかった…。
だが、反らすことが出来ない事実だった。
そして俺は、其れを機にガンマ団からの脱退を心に決めた瞬間だった。
俺の憔悴ぶりを見た、マジック総帥が無期限の休暇と称して…団の脱退を許してくれた。
団の機密に準じていた人間に対して、それは余りにも甘い対処の様な気もするが…実の弟の親友へ総帥なりの配慮だったのかもしれない。
ともかく、俺はガンマ団を抜けた。
それから時はドンドン流れていった。
気が付けば、現在の俺が居る。
小さいながらも、ロボット工学の研究所を持ち…講師や開発などに携わり生活をしている。
離れたはずの団の人間とも微妙に交流も有ったりする。
その筆頭が高松であり…彼が大事にしている、ルーザー様の忘れ形見のグンマや総帥の息子シンタロウ。
特にグンマはロボット工学に興味が有るらしく、わざわざ俺の研究所に勉強しにきたりした。
(色々有ったな…俺の人生ってさ)
振り返る記憶に俺は、苦笑を浮かべる。
でも何時も胸の中に有るのは、在りし日の思い出ばかり。
それは今も埋められることは無いままだ。
(らしくない…な…まったく)
俺は自分の中に燻る、感傷的な気持ちを振り払うように首を軽く二〜三度振って頭から出そうとした。
そして、感傷的になりすぎた自分に俺は、自嘲的な笑みを浮かべた。
(さぁ仕事に戻るか…)
そう思って、伸びを一つ。
そんな時だった時だった…。
ガチャリ。
無機質な音が俺の耳に届いたのと同時に、もうすでにドアは開いてた。
(ん?侵入者だぁ?セキュリティーは万全にしておいた筈だが…どういう事だろう?それとも、セキュリティーが作動しなかったのか?)
俺は不思議に思って、背にしていたドアの方に目線を向けた。
すると…。
「よっ、!元気そうだな」
侵入者もとい…入ってきた人物は、俺の名前を紡ぎ…懐かしい音を響かせてそう言ってきた。
「まさか…嘘だろ…」
“ジャン…なのか…?”俺は思わずそう呟きそうになったのを堪え、それだけを口にした。
そのココに居るはずのない我が友…ジャンを思わせる…其奴は、人好かれしそうな笑顔で俺の方を黙って見ていた。
まだ驚きから立ち直れない俺は、鳩が豆鉄砲をくらった様な表情でジャン(仮)をボンヤリと見かえすばかりだった。
そして思った…。
(ありえねぇ〜。ジャンが居るなんて…コレは…幻覚か…俺クスリやってね〜ぞ…何で幻覚見えるんだ…)
思わず自分の頬をムギュと摘み確認した。
だが俺の期待とは裏腹に、俺の摘んだ頬はジンジンと痛みが生まれる。
コレは夢でも何でも無い…そう言うように。
だが、俺は認める訳にはいかなかった。
第一ジャンは何年も前に死んでいる…それも戦場でだ。
万一の確率で戦場で生き残っていた…その線はあり得ない話しなのだ。
遺体は持ち帰られ、埋葬されたのだから。
それに、俺の仕事場はセキュリティー完備はバッチリだった。
一般人間や泥棒ごときに、破れるほど甘くない…。
(まぁ〜古巣のガンマ団の一部の人間なら、容易に突破出来るが…。その筆頭が、俺の戦友共だが…その一人のジャンはもう死んでいる。そう死んでいるはずなのだ。居るわけ無い)
その為俺は…幽霊でも見るような目で、ジャン(仮)の顔を呆然と見てしまった。
すると其奴は、急に口の端をつり上げて俺へ言葉を放ってきたのだ。
「オイオイ、死人見るような顔するなよ。それに、お前のほっぺた真っ赤になってるぞ」
呆気らかんとした俺の顔を、心底楽しそうに見ながら…ココに居るはずの無いジャン(仮)はそう言ってきた。
(声までそのものじゃね〜か…マジで…俺医者に通った方が良くねぇか…)
耳に入るジャンそのもの声が益々ハッキリ聞こえて、俺は思わずそう思う。
「まて…俺は正常のはずだ…。幻覚まで見るほど…年でも無いはずだ…」
(確かマジック総帥の息子…シンタロウは、ジャンに似ていたが…生き写しって程では無かった気がするが…)
曖昧な記憶に有る、シンタロウと親友ジャンの姿を思い描きながら俺は目の前に居る奴を比べた。
だが、其奴は見れば見るほどジャンそのものにしか見えなかった。
訝しそうに見る俺に、ジャン(仮)は一生懸命本物だとアピールして…より俺にきな臭さを感じさせる。
「違うって、俺は正真正銘のジャン本人だって」
ジャン(仮)が自分の指で自分を示して、そう俺に言うが…俺は、その言葉を鼻で笑った。
「笑わせるな、もしジャン本人だったら俺と同年代のはずだ。第一お前じゃ若過ぎなんだよ!馬鹿は休み休み言え」
俺はジャン(仮)の言葉を間髪入れずに、切り捨てた。
が…ジャン(仮)は、全然堪えている気配が無い。
(そんな所までジャンそっくりかよ…ったく…)
俺はジャン(仮)の態度が、益々ジャンそのものと重なってきて…何とも言えない感傷的な気分になった。
「でもさ〜本当に本人何だぜ。、親友の顔忘れたのか?」
そんな俺の感傷的な気分など知るはずのない、其奴は少し不安気に言葉を紡いできた。
「忘れるわけ無いだろ…」
溜息混じりに俺は、ジャン(仮)に返した。
「なら良いや。忘れられてたら、流石の俺でも立ち直れないかもしれないしな〜。そっか、覚えていてくれたんだなわ」
「お前じゃなくて、ジャンの事だけどな」
俺は釘を刺すようにそう言った。
ジャン(仮)は、苦笑を浮かべて俺の方を見て口を開いてきた。
「そのジャンが俺何だけどな〜。が疑っても仕方がないか…俺実際1回死んでるもんな…も検死に立合ってるから余計信じられないよな…。でもさ、実際ココに居るんだわコレがまた」
嘘ぶれることなくジャン(仮)は、言葉を選びながら俺に言ってくる。
(俺も此奴が嘘を付いているようには、見えないし…それが事実なら良いかな…なんて…俺は思うけど、現実的じゃないじゃないか…ありえないだよ)
言い難い複雑な気分で俺は、ジャンによく似た男を黙って見かえすしかなかった。
ジリリリリリリリィー。
信じたい想いと否定したい想いが交差する最中、不意に鳴る仕事場の電話。
レトロ過ぎる電話の音が響く。
俺は目の前の、ジャン(仮)を取りあえず無視して俺は電話に出ることにした。
(少し冷静な気分になれるかもしれない…)
そう思いながら、電話の子機に手を伸ばした。
「もしもし、研究所ですが」
決まり文句に成っている、言葉を俺は電話先に投げかける。
すると電話先の人間は割と直ぐに返事が返ってきた。
『…か…。久しいな…』
懐かしむように、電話先の人間はそう返すしてきた。
こりゃまた、忘れるはずのない声だった。
俺は声を聞きながら(今日は、何の日だよ。よりにもよって、ガンマ団時代の人間ばかり…)等と思いながらも、電話先の人間に言葉を返すべく言葉を紡いだ。
「…サービス…。数年ぶりって所だな…元気そうで何よりだな」
俺にとっても懐かしい友人もとい…戦友の一人サービスの名を口にしながら俺は社交辞令的にそう言った。
『何年経っても、お前の口調や声音は変わっていないな』
サービスは俺の言葉を聞いて、直ぐにそう返してきた。
「そうか?俺はサービスの方が全然変わって無いと思うぞ」
サービスの言葉に俺は直ぐにそう返してやった。
すると、サービスが電話先で少し笑ったような振動が微かに伝わった。
(本当に変わっていないな…そうやって笑う癖は…)
俺は、しみじみそう感じながらサービスの言葉を待った。
すると…。
『お互い様って事か。まぁ其れは置いて置いて…、高松はそっちに行ってないか?』
サービスから言われた意外な人物の名前に俺は頭を悩ませた。
(高松?何でまた高松なんだ?…まぁ確かに、サービスよりは割と会う機会が多かったが…)
俺は一瞬何を言われているか理解出来なくて、思わず聞き返しそうになったが…何とか堪え…カレンダーに目をやりながら…来訪の予定が無いことをサービスに告げるべく言葉を紡いだ。
「高松?来てねぇな…つーか、来るなんてアポは受けてねぇーぞ」
『アポ取ってなかったのか…高松らしいと言えば…高松らしいけどな…』
「もしかして、今日来るのか?」
サービスに尋ねる俺。
『ああ、に色々伝える事が有ったからな。直接会って話した方が良いって言って出て行ったんだが』
「そっか…。ならもう着いても良い頃なんだろうが…来てねぇぞ高松の奴は」
時計を見ながら俺はサービスにそう返した。
「〜っ。サービスから電話か?」
ギシギシ回転椅子を揺らしながら、放ったらかしだったジャン(仮)が会話に乱入してきた。
「五月蠅いぞ!ジャン(仮)。現在俺は電話中だ」
子機の受話器口を少し遠ざけて、俺はそうジャン(仮)に言った。
だが、ジャン(仮)はブーブー文句を言い始めた。
「〜“(仮)”って何だよ、俺は正真正銘のジャンだって言ってるだろう。新手のイジメか?」
ブーブー文句をたれるジャン(仮)を、俺は横目で睨みつけた。
が…あまり効果は無い。
寧ろより騒がしくなった…。
(どうしたものだろう…)
呆れ顔でジャン(仮)を見ながら、心の中で思う俺。
『プッ…』
すると…堪らなくなったのだろ、サービスは堪え切れずに少しだけ笑いを漏らした。
電話口の俺ぐらいしか聞こえないはずの、サービスの笑い声にジャン(仮)は目敏く(?)否…耳敏く聞きつけて何やら文句の言葉を紡ごうと子機に大接近してきた。
「笑い事じゃ無いんだぞサービス」
ジャン(仮)が泣きつくように、サービスにそう訴えた。
サービスはまだ、笑いのツボから抜け出せないようで…電話先で笑いを噛み殺したような声が聞こえた。
『(仮)か…。らしいな…。信じられないかもしれないが、そこにいるジャンは本物なんだ。色々話せば長くなるが、信じてやってはくれないか?』
サービスの言葉に俺は思わず眉間に皺が寄った。
ジャン(仮)は、そんな俺を不安気に見ていた。
「そんな事急に言われたってなぁ〜…。嘘とは思えないけど…ハッキリ言って完全に信じ切れない」
『驚くのは分かる。でも事実は事実なんだ…本当なら今頃高松がにこの事を話すはずが…順番が逆になったみたいだな』
苦笑混じりにサービスは俺にそう言ってくる。
(それにしても、不思議なことが有るモンだな)
俺はサービスの言葉を噛みしめながら、つくづく思った。
科学者で有る俺にとって、不可思議なことはハッキリ言って好きでは無いし…なるべくなら信じたくない…。
だが、目の前で起きていることは事実だ。
サービスまでわざわざ嘘を俺に吐く理由が無い…。
(やっぱり、ジャン何だよな)
しみじみと俺は納得すると、自然と言葉を出していた。
「まぁ〜…信じるしかねぇ〜んだろうな」
『…』
俺の言葉にサービスは嬉しそうに、俺の名を呼んだ。
「だってそうだろ?自分の脳味噌を過信する気は無いけどさ…研究所のセキュリティーのパスワードは俺を含めて…サービスや高松…後はジャンぐらいしか分からないはずだったんだ…。それにさ…無理に入った痕跡もなければ…3人のいずれかしか居ねぇ…。となると本物と認めざる得ないだろ」
言訳じみた言葉を吐きながら、俺は自分に納得させるようにそう言った。
「…」
「何でお前が急に生き返ったかわ知らないけど…居るもんは…仕方がねぇもん。いい加減認めるさ」
『良かったなジャン』
「おう。一安心したぜ…マジでに完全否定されたら…俺どうしようかと思った…でも安心したぜ」
俺の言葉を聞き終わって、2人は本当に嬉しそうにそう言った。
事は万事丸く収まりました…と思った時だった…。
バーン!!
大きな音を発て、俺の仕事場のドアが勢いよく開いた。
(何だよ…今日はこんなのばっかりか?)
俺はジャンの登場と同じようなパターンに、顔を顰め音の方を見た。
すると、馴染みの顔が怒りの形相でやって来た。
「!邪魔しますよ」
言うや否や、馴染みの顔…もとい、高松はズカズカと仕事場に入ってきた。
どうも、俺の知り合いはノックをする習慣が無いとつくづく痛感させられた一瞬だった。
思わず手に持っていた子機を落としそうになるぐらい…高松の表情は般若並みの凄い形相だった。
「高松…何なんだよ今日は全く…」
かなり失礼極まりない高松に一応声をかける俺。
(どうせ聞こえてないんだろうけど…)
ちなみに、電話は通話状態をキープしたままなので、サービスには筒抜けだ。
ともかく高松は…。
声をかけた俺を無視して…と言うより、目に入っていなのか…高松は、一目散にジャン目指して足を進めていた。
獲物を見つけた肉食獣を思わす感じだった。
普段のノラリクラリぶりとは違って、機敏に動く高松はあっという間にジャンの襟首を掴んだ。
「よくも置き去りにしたまま、ぬけぬけとの所に居ますねアンタわ!!」
ジャンの肩をしっかり捕まえて、脳味噌がはみ出るんじゃ無いか…と思うぐらい…凄まじい力で揺する高松。
指なんて肩に少し食い込んでいるのが、俺の目にもハッキリ分かる。
何やら、酷くジャンに対して高松はお冠のようだった。
そんなジャンを少しだけ哀れに思った俺は、遠慮がちに高松に声をかけた。
「なぁ…。何が有ったか知らねぇ〜けど…ジャンがまたあっちの世界に逝きかけるんじゃ無いか?」
「安心しなさい。そのくらじゃ〜死にませんよこのボケ男わね。まったく…本当は、私一人での所に事の経緯を話しに行く予定だったんですがね…この単細胞が、行く行くと訊かなかったものでね」
肩を竦めて高松がまくし立てるように俺に言ってきた。
ちなみに、揺すぶられていたジャンはポイと高松の手から離れ数メートル先に飛ばされていた。
俺は「そらぁ〜また…」と曖昧に返すぐらいしかできなかった。
そんな俺の言葉を無視されてるのか…存在を忘れているのか…定かじゃないが、2人は勝手に会話を始めていた。
「だってよ〜早くに復活の挨拶をしたかったんだよね俺てば」
ニシシシシ〜ッと笑って高松に返すジャン。
「それで、に偽物呼ばわりされてれば世話無いですね。私を置いていった罰が当たったんですね…いい気味です」
そんなジャンを鼻であしらう高松。
嫌味もタップリだった。
「良いじゃねぇ〜か、結局復活しての所まで来れたんだろう?」
「車は復活してませんけどね」
バサリとジャンの言葉を切り捨てる高松。
「若いな〜高松」
「年の割には若いと思いますけどね。第一ジャンみたいに生き返った上に…若返る何て人間じゃ不可能ですからね」
キリの無い毒とボケの応酬を終らせるべく、俺は口を挟む事にした。
「高松の相変わらずの毒舌ぶりだな」
俺は蚊帳の外だったが、取りあえずツッコミを入れておく事にした。
それに対して高松は、一瞬俺の方に視線を向けた。
「こんなの序の口ですよ。それより、後でJ●F呼んで車どうにかしてもらいますからね…勿論お金はジャンが支払って下さいよ」
高松は俺の方から、ジャンの方に視線を向けてそう言いきった。
(相変わらず金にシビヤだな高松は…)
俺は、久しぶりの高松の言葉に心底そう思った。
で生き返った上に…若返ったとの事の…ジャンは、顔を引きつらせて高松を見ていた。
何だか、昔に戻った気分になる。
だが何か忘れている気がした俺は、高松に取りあえず声をかけることにしたのだった。
「そう言えば、高松はジャンの事を報告しに来たんだよな。大体はサービスから聞いたけど」
「見ての通り、ジャンが生き返りましてね」
「本当に見ての通りだな…。つーか同じ研究者として補足とか無しかよ高松」
「追々それは話しますよ。シンタロウ君とグンマ様からの伝言が」
「ああ、マジック総帥の息子だよな。グンマの従兄弟だったか」
俺はシンタロウを思い出しながら、高松にそう相槌を打った。
(グンマは教え子だから、しっかり覚えているけど…シンタロウはな〜…肉体派だったからあまり顔出さなかったから記憶薄いんだよな〜)
俺が一生懸命にシンタロウを思い出そうとしていたら、高松が補足だと言いたげに言葉を続けた。
「ああ…そうそう…今は彼が総帥の地を継いでますよ。それと、シンタロウ君は…実はジャンと同じ人種らしいですよ」
シレット言い切る高松を、凝視してしまう俺。
「はぁ?」
(ジャンとシンタロウが…同じ人種だぁ〜何だ其れ…)と思い…思わず間抜けな声を出した俺に、ジャンと高松は曖昧に笑いながら事の経緯を語り始めたのであった。
俺はついこの間だ起きた出来事などを、高松とジャンから聞いて…唖然とした。
死んだり…生き返ったり…挙げ句の果てには、ジャンとシンタロウが秘石から生まれたとか…。
現実主義者の俺には、もはや理解の範疇を超えたものだった。
「何だかやりたい放題だなソレ」
やっとの思いで出た感想が、その一言に尽きた。
ジャンは俺の言葉に“まったくだ”と笑って返した。
そして高松は思い出したように、俺に言葉をかけてきた。
「話が反れましたね。伝言というのは…単刀直入ににガンマ団に復帰してもらえとの要請が出てるって話です。ですから、近いうちに荷物とか身辺まとめて置いて下さいよ」
“明日飲み会ですから、ちゃんと来て下さいね”みたいなノリで、高松がそう言った。
「オイオイ、何がそう言う訳何だよ!俺はまだ行くとも行かないとも言ってねぇーし、急に言われたってどうしろって言うんだ?」
俺はちょっと待てと、口を挟む。
だが高松は、軽く肩を竦めて俺を見て口を開く。
「急にったって…ジャンが来た時点で、目敏いなら大体予想できたでしょうに。それにどうせ、来るんでしょ?」
「折角、俺復活したんだぜ。仕事なら、ガンマ団でも出来るだろ?また、4人仲良く馬鹿して年取っていこうぜ!高松もそう思うだろ?」
それに続くようにジャンまでも言ってくる。
俺の首にジャンは、腕を絡め高松に賛同を求めるように目配せしていた。
で…その高松はと言うと、ウンザリとした表情でジャンを見ていた。
よほど置き去りが、ネックになっているようだ。
「賛同したい気持ちも有りますが。馬鹿は、ジャン一人で十分ですよ…に馬鹿になってもらったらグンマ様が悲しみますのでゴメンですよ。それに、がガンマ団に来ると分かれば…グンマ様も喜ばれますよ」
言葉の全域に棘を混じらせた高松の言葉に俺は思わず、呆れ顔で言葉を吐いていた。
「高松はそうとうジャン恨み持ってるんだな…」
「当たり前ですよ。そう簡単には許すわけ無いじゃないですか」
至極当然と言いた気に高松が俺に言い切った。
「が師の割に、イマイチな発明が多いけどなあの坊ちゃん」
ケタケタと悪戯っ子の様な笑みを浮かべて、ジャンはお返しとばかりに高松に言った。
(嗚呼…1度死んでも中身は全然変わってねぇ〜なジャンの奴…高松にグンマ及びルーザー様は鬼門なのにな〜…まったく学習能力と言うモノが欠如したヤツだ…)
心底そう思う俺。
高松は、ジャンの方にクルリと振り向き…嫌な笑いを浮かべていた。
(お決まりのパターンだな…これ)と感じながら、2人の様子を傍観する俺。
「ジャン…そう言えば、良い薬が入ったんですけど…勿論試しますよね」
通常の声のトーンから落とした声で、高松はジャンにそう言った。
俺は高松の言葉に「やっぱりか…」と顔を顰める。
ジャンも嫌そうな顔をしていた。
「ハハハハ高松は冗談キツイよな。さて…今日の所はこの辺にして、後は、がガンマ団に戻ってからゆっくり話ししようぜ」
無理矢理題を変えるジャン。
言うや否や、ジャンは高松から逃げるべく研究室のドアにダッシュをかけた。
「…、良い返事期待してますよ。ちょっと待ちなさいジャン!!」
それに気が付いた高松も、ムキになって走っていった。
言うだけ言って、ジャンと高松はサッサと帰って行った。
高松とジャンが完全に居なくなった事を確認した俺は、ドサリと仕事机から少し離れたソファーに座った。
「嵐が去った気分だ」
俺が脱力しながら電話先のサービスに声をかけた。
『そう言うなよ。久々何だから、仕方がないじゃないか。…で…勿論、もコッチに来るんだろ?』
「サービス…お前までそう言うのかよ」
サービスの言葉に俺は思わず情けない声で、返してしまった。
そんな俺にサービスは、穏やかな声音で話しかけてきた。
『そう腐るなよ。お前が殺し屋集団としてのガンマ団に嫌気が差したのは知っている…。でもな、シンタロウが継いだガンマ団は、殺し屋集団じゃ無いよ…きっとも納得する場所だ』
「べた褒めだな。まぁジャンと同じ人種なら、そうかもしれねぇーな」
噂で聞いた新総帥の話の数々から、何となくサービスが嘘を言ってるようには見えないと俺は直感で感じた。
だが、人の視点というモノは結構人それぞれだ。
サービスや高松が良いと感じても、俺には良くは感じないかもしれない。
俺は、サービスの言葉を鵜呑みにするのではなく…其奴自身を見極める必要を感じていた。
だから、そんな気持ちで一杯だったのだろう俺はそう返すぐらいしか出来なかった。
『身内のエゴ抜きで、俺はシンタロウはのお眼鏡に適う人間だと思うがな…』
俺の迷いが伝わったのか、サービスは付け足すように俺にそう言ってきた。
サービスの言葉を片隅に置きながら、俺は返事を返すべく口を開いた。
「そうだな、サービスにそこまで言わす甥っ子だもんな。分かった…取りあえず…総帥の懐をのデカサの確認してから決めるぞ。それだけは、譲らないからな」
俺はキッパリとサービスに言った。
俺の言葉に予測していたのか、サービスは電話先で小さく笑っていたようだ。
『ああ分かったよ。じゃぁ、が来るのを楽しみに待っているよ』
必ず来いとか…命令するのでは無い…そんな口調で…サービスは、それだけしか言わなかった。
きっと心から俺自信が望んで、来ることを願っているのだろう。
だから俺も、飾ることなく自然に言葉を紡ぎ出した。
「ああ期待しないで待ってくれよ」
そう言うと俺は、サービスとの電話を締めくくった。
「さて、どうしたもんかね」
俺は静かになった部屋でポツリと呟いた。
窓の外には相変わらずの、色とりどりの落ち葉が舞い散る。
俺はそんな様子をまたボンヤリと眺めた。
そして、今度は哀愁を感じる事は無かった。
神様の悪戯か…はたまた気まぐれか…俺には分からないけれど…。
俺は結局懐かしい連中とまた、賑やかで懐かしい生活に戻る事になる。
それは…外がまだ紅葉が始まったばかりの頃だった。
END
2003.10.29. From:Koumi Sunohara
★後書きという名の言訳★ パプワ夢駄文で…初書き男主人公デス。 でもBLじゃないんですけどね、友情って感じなので。 さて…お話メインとしてはジャンですが、中年3人組とさんとのお話です。 パプワ最終巻でジャン復活後って感じの時間軸だと思って読んで下さると、良いかと思います。 それにしても、ジャンの扱いが不等な機も…しますが、愛は有るので笑って許してくれると嬉しいデス。 それでは、ココまで駄作おつき合い頂きまして有り難う御座いました。 |
夢へ |