「“木葉の蓮華は、2度咲きます…サクラさん”ですって〜」

(私は、忍者じゃ無いけれど…貴方より情報収集だって、良いの忘れてない?心配で、心配で思わず医療班に無理いって入ったていうのに…。“サクラさん”“サクラさん”って、聞こえてないと思って言ってるんでしょうけど)

「リーの馬鹿…」

けが人である、弟キバに包帯を巻きながら、ブチブチ愚痴をこぼす。

「あ〜の姉貴…俺の治療しないで何愚痴ってんだよ…一応、医者なんだからしっかりしてくれよ」

実弟、犬塚キバに窘められている彼女こそ…犬塚
キバのすぐ上の姉である。

は、アカデミー在学中からかねてよりやりたかった医学を学び、アカデミー卒業後下忍になってから完全に医者に転向した、木葉には異質な存在で有名だった。
は、あの日向ネジと肩を並べるほどの忍者になるだろうと言われていた者だったからだ。

誰もが、彼女の転機を惜しいと思っていた。
でも医者としての彼女の活躍もまた目覚ましかった。
若いわりに持つ、医学力、忍道を囓っているだけはある、毒などへの対処方法等。
そんな凄い人間こそ、ココで愚痴をこぼしている その人である。

「あ…ゴメンね、キバ」

失礼な弟キバの言葉を気にせず は、詫びの言葉をキバに言った。
失礼ではあるが、本当のことなので言い返す事が出来無いという理由もあるのだが…。

「まっ…分かってくれれば良いけど…」

「ね〜、キバ」

「あ?何んだよ…姉貴」

「変な事聞くんだけど…」

は、キバに前置きをしてから疑問を口にする。

「そんなボロボロに、傷つくまでやってまで…中忍になりたいものなの?」

キバは、困惑気にを見る。
そして、キバは半分は予想していた答えを口にした。

「今更、何言ってんだよ姉貴!俺と、赤丸はどんな辛い尾思いをしたって…凄い忍者になりたいって、何時も言ってるだろ!」

(そう…確にキバと赤丸はそうやって、頑張ってきた…他の忍も同じ様思いなのだろう…)

は、耳タコになったキバの言葉をしみじみと振り返る。
でも…どうしても、そこまでするものかと…首を何時も傾げるのもまた…何時ものこと…。

「そうは、言ってたけど…」

だから、はキバにもっと確信の持てる答えを求めてしまう。

「ヤレヤレ…」

キバは呆れた様に、赤丸を抱いたを見る。

「な〜、姉貴じゃ〜、俺からも聞くけど」

そうして、反対にに同じような質問をぶつけてきた。

「何で、姉貴は下忍止めて、医者やてんだよ?」

少し、考えては答えた。

「傷ついた人を、1人でも多く助ける事」

キバは、ニャリと笑ってに言う。

「俺も…他の連中もそうやって、姉貴みたいに信念もって、やてんだぜ。それにしたって、急にどうしたんだよ姉貴…らしくね〜」

「く〜ん」

赤丸が心配そうにの顔を覗き込む。

(何とか、情けない顔をしないように努めるけれど…私の顔は、きっと情けない顔のままだろう…)

キバも心配そうに、の顔を見るから。
きっとそうなのだろうと、は思う。
それでも、姉として質問に答えてくれた弟に、尋ねられた答えを紡ぎ出す

「何だか…急に不安になったのよ…。沢山の人たちが、この医務室に運ばれて…アカデミーで一緒だったテンテンや弟のキバや知らない下忍達が、ボロボロになって…運ばれて来るから…」

一旦言葉を、切って紡ぐ。

「私だって、アカデミーで忍道とか、色々学んだけど…分かってるけど…」

悲痛にも似た、表情でが言う。

「仕方がね〜よ、姉貴は…」

呆れる訳でもなく、キバはそう言う。

「まっ、今の仕事が向いてんじゃないの」

キバは、笑ってに言った。

「でもよ〜、姉貴の趣味疑うぜ…何でもまた…あの濃い奴なんだよ…よっぽど日向の従兄弟のネジに転ぶ方が自然なのによ〜」

最後に、茶化すようににそう言った。

「良いのよ、キバには分からなくても…私が、リーが好きなんだから」

「はいはい、分かってるよ姉貴」

他愛もない、兄弟の話。
楽しいはずなのに、の中はそうでもなかった。

(この、胸を突く不安は何?)

キバと、話しながらは不吉な予感が胸を巡らせていた。
そこに…。

「急患です…」

悲痛にも似た声で、医療班が声をあげた。

「ヒナタちゃん…」

急患の顔を、見ては慌てて駆け寄った。

…」

を見ると、紅は少しほっとした顔を見せた。

「紅先生…誰が…ヒナタちゃんを…」

大体の察しは、つきながらもは聞く。
弟キバの仲間である、自らも可愛がっていたヒナタ。

「対戦相手が…ネジ君だったの」

紅の言葉に、呆然とはしていた。

「…」

は、言葉を飲んだ。
それと同時に、ヒナタは集中治療室へと運ばれる。
ガラガラガラ。

「どうして…貴方もまた…無茶をするの…ヒナタちゃん…」

集中治療室へ、向かうヒナタに人知れずは呟いた。
次々と運ばれる、人々…。
先まで、漠然としかなかった不安がしだいに増してゆく。



そして…。

「リー…」

は、思わず口に手を当てた。

(何で、こんな事に…)

先のヒナタといい、こんなに酷い怪我を目の当たりにして…は少し戸惑っていた。

「ガイ…先生…コレは…どうゆう事何ですか…?」

震える、声ではリーの先生である、ガイに尋ねた。

「…」

「コレは…普通に受けた怪我何かじゃ…無いですよね…もしかして…」

私情は、仕事に支障をきたす。
分かっていても、は聞かずにはいられなかった。

「…」

「ああ…リー君は、裏蓮華を使ったんだよ…」

黙ったままの、ガイに変わり背後に控えていたカカシが答えた。

「カカシ…」

「仕方がないでしょ〜。それに、犬塚は忍術を囓った医者なんだよ…黙っていたって、直ぐにバレルもんでしょ〜」

カカシは、即答でそう答えた。

「じゃ…リーの怪我は…」

の頭のには、最悪の事態がよぎっていた。

「…本当に…皆…馬鹿なんだから…」

は、ボソリと呟いた。

(リーを助けるには、一刻も争う…)

冷静に、判断したはガイとカカシを見据えた。

「治療に…取りかかります…だから、出って下さい…」

 精一杯の鋭い声で、はガイに言う。

(今…怒っている場合じゃないもの…リーを助けるんだから…)

「犬塚…」

何か言いたそうな、ガイを振り切るように集中治療室を見据える

「今…私が出来ることは…精一杯の治療を施すだけ…先生方は、まだ生徒が残ってるんですから…行ってあげてください…」

何とかそう言いながら、はガイとカカシに背を向けた。
バッタン。
は、リーを連れたタンカーと共に集中治療室に入っていった。

(もっと早くに、気が付いていれば…)

は、今後悔の念で心が埋め尽くされていた。

(蓮華を使った時点で…注意しておけば…)

そんな、思いを抱きながらはリーの治療に励むのであった。
 




ベットで、規則正しい寝息をたてているリーをは複雑な思いで見つめていた。
治療をして、もう丸5日。
リーは、その間目覚める事無く熟睡していた。
まるで、疲れ切った体に休息を与えるように。
傷の具合は、けして良いものでは無かった。
しかし、の迅速な処置の御陰で通常の生活を送れる程まで直ると診断された。

「普通の生活は、送れるだろうが…忍者は…無理だろう」

の上司にあたる、医者はそう言った。

「でも、君の腕での御陰で彼は、普通の生活が出来るんだ…気を落としてはいけないよ」

医者の言葉に、は曖昧に答えた。

「はい…そう言って戴けると…幸いです」

「ほら、元気な君が…元気が無いと、志気が上がらないよ」

「そうですね…私は、医者ですもんね…私がへこんでいては、駄目ですもんね」

納得したように、が呟くと医者は満足げに笑って言った。

「ああ、その通りだよ犬塚君」

(そう…私は医者なんだ…)

は、そう自分に言い聞かせることにした。
そんなことが、あったのつい最近で…はその事に、思考を巡らせていた。
その時…。

「う…っ」

思考の淵に落ちていた、をリーの呻き声で意識が戻った。

「リー?意識戻ったの?」

慌てて、はリーに声をかける。

…僕は、どうしたんですか?」

目覚めの一言が、あまりにもリーらしくて…は少し安心した。

(良かった…大分良いみたい…)

その気持ちと同時に、はリーに少し怒りをおぼえた。

(人が心配してたってーのに、コノ男は〜)

「馬鹿!」 

だから、思わず“大丈夫?”とか言う優しい言葉は出てこなかった。
ビク。
リーの体が、の言葉で強張った。

「スイマセン…」

反射的に、リーは謝る。

「謝るぐらいなら…こんな風に運ばれて来ないでよ…」

が、ずっと見ててくれたんですか?」

話をずらすように、リーはに尋ねた。

「何で…そう思ったのよ?」

その言葉に、“はっ”とした。

「目に隈が、出来てたんで…何となく…あっ、でも夜勤かも…しれないですよね…はははは、僕なに言ってるんでしょうかね」

苦笑しながら、を見るリー。

(目が…笑ってません…を怒らすこと…僕言っちゃたのかな)

怒った様子の、にリーは内心ドキドキしていた。

「リー看病してくれたのが、愛しのサクラちゃんじゃなくて残念ね」

(何て…私厭な奴なんだろう…)自嘲気味に笑いながら、はリーに言った。
 そんな、に困った顔でリーは名前を呼んだ。

…」

「リーは、サクラちゃんが、好きなんでしょ?知ってるんだから」

は、リーの方からくるりと後ろを向いてそう言った。

「いえ…あの、…その話何処で?」

 突然の事で、リーは戸惑っていた。
サクラ事は、確かに好きだと公言していたが…何となくには聞かれたくなかったからだ。

(リーのあの慌てかた…本当だったんだ…)

「何処だって良いでしょ」

拗ねたように、はぶっきらぼうに呟いた。

「でも…つき合いたいとかじゃなくて…あのですね」

「何で、私に弁解するのよ〜」

は、リーの様子に苛立ちながら会話を続けた。

には…勘違いしてもらいたく無いんです」

(もう…何なのよ〜)

は、泣きそうになりながら視線を合わせずにリーに尋ねる。 

「サクラちゃんの事は…どう思ってるのよ…“木葉の蓮華は、2度咲きます…サクラさん”とか言ってたんでしょ…、キバから聞いたんだからね」

その為憮然としたしたまま、はリーに言うこととなった。

「でも…裏蓮華を使う時…の…君の事が頭に浮かびました…その時、やっぱり僕はが居なきゃ…駄目なんだって…再確認したんです…」

リーの声音は、嘘を付いているようには見えない。
だから、の声は酷く弱々しかった。

「…今更…そんな事言わないでよ」

 そんな、をリーは黙って見つめた。

「1人で、リーの事怒って…馬鹿みたいじゃない…私」

「スイマセン…僕みたいなのが…の側に居れるはずが無いと思ったんで」

 リーが、“何と言ってよいやら”と顔中に浮かべながらそう言った。

「何でそうなるのよ〜、ずーっと…好きだって言ってのに。それすら、冗談だと思ってたの?信じられなかったの?」

言葉の通り、はリーに素直に好意を口に出していた。
修行優先で、少し鈍いリーだからこそ…は口に出していた。
それはそれは、一生懸命に。

「違いますよ…でも、の好意が僕に向いてくれているのかな〜って思ったんですけど…自意識過剰かな〜って思って」

あれだけ、が苦労した事はその一言に一気に疲れを覚えさせた。
脱力しながら、はリーをキット睨む。

「私がどれだけ…心配したと…思ってるのよ…」

そして瞳に、涙を浮かべながらはリーに詰め寄った。
困ったように、リーはを見る。

「それに…」

言葉を濁す、リーには尋ねた。

「どう言う事?」

は、リーが次に話す言葉を待った。

「えっと…」

リーは思い出したように、話を紡ぎだしていった。

「ある日の修練の時、テンテンが、花言葉の話をしていたんです…。それで、色々出てきて…“萩”の話になったんです…。」

『 「花言葉は、“自分とは異なる考えも受け入れられる、寛容な心の持ち主”なんだそうです…」

「僕は、その意味をテンテンから聞いた時…を思い出しました」

「君はアカデミーの時からずーっと、こんな僕の事を馬鹿にしないで…見守ってくれていた人だったから…」

「「何か…の事言ってるみたいですね〜」て言ったら、テンテンも「そう、私もそう思ったのよね〜。」て、そう言ってたんです…」

「その時何だか…自分だけに、そうしてるのでは無く…は、誰にでも優しいのだな〜と」』

そこで、リーの話は終わった。
は、何と言って良いのか分からず呆然としている。

「そう…思ったら、何だか僕って…自意識過剰かな〜って思って」

照れくさそうに、リーは頬を掻いた。

「じゃ〜…私の事は…?」

怖ず怖ずと、はリーに尋ねた。

「好きに決まってるじゃないですか!!…確かに、サクラさんには…惹かれましたけど…先言った通り…僕の中には、が特別なんです…今更って、言われても仕方が無いんですけど…」

リーの言葉を、遮るようにが口を開く。

「言うのが…遅い…振られたと思っていたんだからね」

ぼふ。
リーの胸に顔を埋める
戸惑いながらも、リーは満更でもない。
(もしかして…こんな 見れるのって…僕だけなんでしょか…)と感動していた。

「こんな姿になちゃった、僕で良ければ… の側に居ますよ」

「うん。」

安心したのか、はリーの言葉を聞くと疲れの為、眠りに落ちた。





眠りから覚めた、はリーとたわいも無い話をしていた。
そして、脈略もなくリーが話し出した。

…僕は、もう1度…忍者になれると思いますか?」

真っ直ぐリーは、を見つめる。も反らすことなく、リーの目を見つめる。

「リー…貴方は、努力の天才なんでしょ?」

人差し指を、リーの胸の辺りに刺しながらは言う。

…そうですよね」

リーは、内心感激しながら に確認をとるように、聞き返す。

「そう、諦めない限りなれるわよ」

リーの不安を晴らすように、満面の笑顔では言った。

「それに…私も出来るだけ、協力するから…今度は、2人で目指しましょう…ね〜、リー」

1度言葉を切って、はリーにそう言った。

…」

じわり。
リーは、瞳一杯に涙を溜める。
その涙を流すまいと、一生懸命に乱暴に拭った。

「泣かないでよ…そんな事で」

は、少し困ったようにリーを見る。

「な…泣いてません…此は、汗です…心の汗です!」

(何だか…リーどんどん、ガイ…先生に似てきたような)と内心思いながら「分かってるって」と は、答える。

「本当に…君が居て本当に良かったですよ…有り難う

「もう…リーったら…。そんな事言ってないで、早く体…直してよね…」

「勿論ス」
 
リーは、ガッポーズで返した。




*おまけ*

リーと が、病室で自分たちの気持ちを再確認していた頃。

「リー良かったな…」

リーの病室の部屋の前で、男泣きする人物1人。
ご察しの通り、リーの先生であるガイである。

そんな怪しいガイに声をかける者1人。

「ガイ…何コソコソと何覗いてるんだ?」

「カカシ…此はあの…家庭訪問見たいなモンでなハハハハ」
 
突然カカシに声をかけられてガイは、凄く焦っていた。

「ふ〜ん、別に良いけどね。家庭訪問なら、入れば良いんじゃないの」

「いや〜何だか、入るタイミングがな〜」

「で…覗いてるて訳?」

「いや〜、生徒の事は気になるじゃないか…ハハハハハ」

 アパガードのCM顔負けの白い歯をキラリと見せて笑うガイ。

「ま〜、心配なのは分かるけど…覗きはよくないんじゃないのか?」

「それより、カカシは何故こんな所に居るんだ?ハハハハさては、お前も覗きか?」
 
仲間だな!と言わんばかりに、ガイはカカシに言うガイ。

「馬鹿だね〜ガイ。俺が、リーと犬塚を覗いてどうすんの?俺は、病室前に変な奴が覗いてるって、連絡があって来ただけなの」
 
呆れて、カカシはそう言った。

「変な奴って…もしかして俺の事?」

心外だと、ガイは尋ねる。

「お前以外に…誰がいるんだよガイ(−」−)」

「俺は只、大事な生徒のリーが心配でな」
 
カカシの言葉に、弁解すべく力説するガイ。

「はいはい。分かったから、病院に迷惑かけんじゃないよ…仮にも上忍なんだからさ」

「…そんな…(´△`)」

その一言が、ガイをショックに落としたのは言うまでもない。



END


2001.8.11  From:koumi sunohara

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