さ く ら 茶


此処は東京選抜の守護神であり武蔵森の守護神である、渋沢克朗の自宅である。
連休が続き、尚かつサッカーの練習も無かった渋沢が寮から帰宅してのんびりと家で過ごして居た。

柔らかな風が吹き、外気も過ごしやすい暖かな気温。
過ごしやすいを通り越して…眠気を誘いそうな
木々は新緑芽吹き柔らかな葉がサワサワと揺れている。

薄紅の花は既に散ってしまって…桜の木は…葉桜になっている。
そんな葉桜になってしまった自宅に植えてある桜の木をぼんやりと眺めて溜息を1つ。
渋沢家の長女渋沢は、穏やかな空気とは似つかわない暗い空気を醸し出していた。

「私って…凄く憑いてないかも」

溜息混じりには独り言のようにそんな言葉を口にした。
リビングでのんびりと雑誌に目を通していた克朗はに目を向ける。

「嗚呼憑いてない〜。花見の日に風邪なんてひかなければ…桜の木が葉桜になることも無かったのに」

「風邪ヒイタぐらいでツイテ無い何て大袈裟だな〜姉さんわ」

悩んでいる理由が至極単純なことだった為、克朗は心の中でホッとしながらにそう返した。
桜の木を恨めし気に見つめながら…。

「だって、この風邪所為で皆と花見に行けなかったのよ!克郎!ブルーになる姉の気持ちが分からない?」

拳をフルフルさせては克朗にそう訴えた。

「そんなに力説されても…俺にはよく分からないんだが」

頬をポリポリと軽く掻いて克朗はを困ったように見つめた。

(花見には行けなくても…姉さんは家の桜見えると思うんだが…)

「皆が楽しく花見をしている頃私は、ベットの中で一人唸っていたのよ」

眉間に皺を寄せては不機嫌そうに口にする。

姉さんは桜の花が好きだからな〜」

葉桜を克朗はと同じようにぼんやりとながめながらしみじみと呟いた。

「嗚呼本当に今年は憑いてないよ」

「そういうと俺なんて、練習が忙しくて花見なんてしばらく行っていない」

の言葉に克朗は思わずポロリとそんな事を口にした。
(マズイ…姉さん気にするかも…)と思いつつ克朗はを見る。

「あっ…」

克朗の言葉には我に返って困った顔で克朗を見る。

「ゴメン…克朗」

予想通りの展開に克郎は少しだけ困った声音で口を開く。

「良いよ気にしなくても。俺は好きでサッカーやっている訳だから」

シュンとなってしまったを見て、克朗もすかさずそう口にする。

「でも…」

「よし、姉さんお茶飲もう!俺が煎れてくるから」

「へ?どうしたの突然」

「“気分が落ち込んでる時は、美味しいお茶でも飲んで気分を変える”って姉さん良く言っていただろ」

「桜の紅茶か何か煎れてくれるの?でも私今年買ってないんだけど」

「残念違う」

「克朗は和食派だったもね…じゃ〜克朗お手製の桜餅でも出てくるの?」

姉さんの方が早く起きてるのに…桜餅何て作っていたら直ぐに分かる」

「そうだよね。それに克朗は和菓子は作らないものね」

“じゃ〜何かしら?”と小首を傾げては克朗を見る。

「取りあえず見てからのお楽しみかな。姉さんは座って待っていてくれ」

「分かった待ってるよ」
 



「うわぁ〜っ」

克朗が差し出した湯飲み茶碗をのぞき込んで、は開口一番にそう口にした。
お湯の中で塩漬けになっている桜の花がお湯の中で花開いている。
香りも桜の花の良い臭いがほのかに香る。

「これって、“さくら茶”だよね」

「そう。桜の紅茶を買って帰ろうかと思ったら、それが目の入って…姉さん好きかなって思って買ったんだけど」

不安げにの様子を見ながら克朗はそうに尋ねた。

「良い臭いだし…桜の花がお湯の中で開いて可愛いよvv…おめでたい席で飲むモノだって思っていたから、手を出して無かったんだけど…美味しいし…なんか良いね」

嬉そうには…。

「そこまで姉さんに喜んでもらえて俺も嬉しいよ。俺は紅茶はあんまり得意では無いから…そう言うのなら良いかなって思って買ったんだけど…正解だった」

姉さん…花見には行けなかったけど、それで取りあえず今年は機嫌直してくれないかな」

「克朗…有り難う」

「気にいってくれて良かったよ姉さん」

「凄く嬉しいよ…感激しすぎて…何て言ったら良いんだろうね。何だか私が姉なのに…克朗に甘えてばっかりかもしれない」

克朗に煎れてもらったさくら茶を手に持っては…。

「姉って言ったって1つしか違わないだろ?姉さんとは」

「でもね〜姉の立場としては、少し考えちゃうんだよ」

“うむ”と少し悩む仕草をしては言う。

「それに…普段姉さんは我侭言ったりしないんだ…これくらい我侭何て俺は思わないけど」

あっさりと姉としては言われて嬉しい言葉を口にする克朗には「本当に出来た弟だよね克朗わ」としみじみと呟いた。

「私たちってさ、“姉であり妹”“弟であり兄”の関係だよね…さしずめさ」

「そうだな…でも仲が良い事にこしたことはないから良いんじゃないか」

と克郎は顔を見合わせて笑いあった。





しばらく姉弟団らんを過ごしていたと克朗。
陽も大分落ちてきて、今日の夕飯の話をしていた。

「よし今晩の夕飯は私が腕によりをかけて、可愛い弟克朗の為にイタリア料理を作ろう」

突然は、今日の夕食のメニューを口にする。

「和食じゃ無いのか?」

姉の申し出に克郎はすかさず尋ねる。
元来和食が好きな克朗なので、イタリア料理は少し不服だったのかもしれない。

「寮に戻る前に、色んな味を覚えさせなきゃ…克朗の舌が鈍ったら嫌なのよ」

「そうだけど…姉さん…折角姉さんが作ってくれるのなら…」

克朗は普段仲間に見せることの無い不服気味な声音で、に言う。
そんな克朗を見て(やっぱり弟だな〜)と思う姉。

「じゃ〜明日は和食って事で妥協して」

「俺の好きなモノを作ってくれるんなら」

和食にすると言ったとたん機嫌が直る克朗を見てこっそりと苦笑を浮かべる

「克朗も結構現金よね」

「俺も一応弟だからね」

悪戯を成功させた子供のような笑みを浮かべて克朗がに答える。

「そうね弟だもんね克朗わ。…さて、来年は風邪ひかないように万全の体制を取るわよ!!」

克朗の言葉を聞いたクスリと笑ってから、戯けた口調でそう口にした。

「それでこそ姉さんだよ」

元気になったを見て、克朗は嬉しそうに笑う。

「ふふふ何せポジティブなのが売りですからね♪」

「良いんじゃないか?メガティブより」

「今度花見に行くときは克朗も一緒に行こうね」

ニッコリ満面の笑顔を浮かべては克朗にそう告げた。

「え?」

意外な申し出に、克郎は言葉に困って言葉を詰まらせた。

「守護神だって息抜きしないとね」

片目を軽く瞑って楽しげには克朗にそう言った。

姉さん」

「さて夕飯の買い出しに行きましょうか克朗」

は財布の入った鞄を掴むと克朗に手を差し出した。

「ああ荷物は勿論俺が持つよ」

克朗はの手を掴むとそう口にした。
渋沢姉弟の休日はこうして穏やかに過ぎていった。



END

2002.5.7 From:koumi sunohara


★後書きと言う名の言訳★
【読んでみたい、笛キャラドリームは?】第1位と言うことで書いた渋沢さん夢駄文です。
別に彼女さん設定でも良かったんですけど、何となくGWが有ったから…家族と過ごさせたかんたんで…設定を姉にしました。
久しぶりに書いたお話なので、かなり短いし…笛自体が久しぶりなんでかなり変な出来です(汗)投票してくれた皆さんに面目が立ちませんね。ああスイマセン。
こんな駄文におつき合い頂有り難う御座います。
機会が有ればまたおつき合いいただけると幸いです。


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