苦手を克服する方法(4)
藤代と、昼を共にするようになって数日過ぎたある日。
この数日、2人にとって色々良い刺激になっていた。
お互いの、色々知らない一面などが分かったり、藤代が の呼び方を“ ”になった事や、 に表情が出てきたりなど…。
何時もように、調理室で昼の支度をしている 。
「この頃、誰かに監視されている気がするのだが…」
独り言のように呟いて は、溜息をついた。
(藤代君のファンか何かだろうか?)
この言葉を、藤代が聞いたら…「えっ… 、ストーカにあってるの!?」と言いそうだななんて、 は思った。
(ま〜、考えても仕方がないな…)
考えるのを、止めて作業を続ける 。
もうすぐ、腹ぺこ魔人藤代誠二が来るからだ。
急ピッチに、作業は進められる。
「ふ〜、これだけ作れば良いだろう」
満足気に、並べた料理の山を見る 。
完全に、藤代が昼来るというのが、習慣化してしまっているようである。
そんな風になっている、自分に少し苦笑してしまう 。
(何だか、彼奴のペースに巻き込まれている気がする…)
いつもの時間。
もうそろそろ来る頃なのに、藤代はやって来ない。
腹ぺこ魔人が、来ないコトに少々に拍子抜けしている 。
(休みなのか?)
そんな事を思い始めた頃。
待ち人はやって来た。
ガラ〜。
勢いよく、ドアを開く音と共に、腹ぺこ魔人が入ってきた。
「 〜、死ぬかと思ったよ〜」
息を切らして、藤代は に泣きつく。
武蔵森エースストライカーが、息を切らすことに不思議そうに見ている。
「な…何が、あったんだ?ファンにでも、追いかけられたのか?」
不思議そうに、は尋ねた。
「それが…」
ガララ〜。
藤代が言いかけたとき、派手にドアが開かれる音に2人は目を向けた。
「藤代〜、ココに居るのは分かってるんだぞ!!」
「ゲッ…三上先輩〜」
心底嫌そうに、藤代の顔が歪む。
「藤代君…君何か、したのかね?」
あまりにも表情が歪んでいる藤代に小声で、は聞いた。
「何にもしてないよ〜」
某漫画のへタレ少年が猫形ロボットに泣きつく様な声を出す。
その声を聞いたは益々、困惑気味に思考の海に己を埋めた。
(じゃー何で、追われているのだ?)
は、自分なりに見解に試みていた。
(先輩と…言うことは、サッカー部の先輩か…部活で何かあったのか?)
三上に、“ぎゅっ”と首を絞められている、藤代を見てそう思った。
けれども、その間にも藤代は三上に落とされそうなのだが。
その辺はは気が付かない。
そんな藤代に差し出された救いの主は、相方笠井だった。
「三上先輩…流石に誠二が、死にますよ」
冷ややかに、三上の行動にツコム笠井。
「此奴が、死ぬと思うか〜笠井?」
デビルスマイルを笠井に、向ける三上。
笠井は、肩を竦める。
「ま〜、誠二は丈夫にできていますけど…」
サラリと言ってのける。結構いい性格をしている笠井少年である。
「竹巳〜酷いよ〜」
藤代の、非難の声にまったく気にしない2人。
「2人とも、止めないか!!藤代が、可哀想だろ」
仲裁に慌てて入る、渋沢。
そんなことぐらいでは、止まるわけなく。
さらに、激しさを増した。
ここで、考察が終了した が口を挟んだ。
「あの、藤代君に用があるのは、分かったですが…勝手にズカズカ入って来て、私の存在忘れてません?」
淡々とした口調で紡がれる言葉に、その場は水を打ったように静かになった。
NEXT→NO5
2001.4.23 From:Koumi Sunohara