キリ番リク駄文(1000HIT青月こひろ様に捧ぐ)

Tiramisu(後編)



 あれから、しばらく日が経った。
の中の、“あの日”の事が心の中で大きくなっていた。
 それでも、 は好奇心を心に秘めて、生活を営んでいた。
他愛もない会話。過ぎてゆく時間。
気が付けば、夕陽が校舎を染め上げる。

「おや!今日も、ココの景色は良いね〜」

は、何時ものように図書室の窓から外を眺める。

「何だか、あの時の事を思い出すな〜」

 誰に呟く訳でもなく、 は呟いた。
元気の無い少年の顔。
嬉しそうに、話をする様子。
最後に見せた、極上の笑顔。
  の中で、鮮明にあの頃の記憶が戻り始めていた。
きっかけは、渋沢との会話の中。
でも、肝心の顔だけは… には思い出せないのであった。

(逆光で見えなかったしな〜、気になるな〜)

渋沢との会話で、益々あの時の記憶が気になって仕方がないのである。
 初めは、夢現のようだった思いでだったはずだったのに。
ただ何を見るわけでもなく、外を眺める。

「?」

 ボーッと外を、眺めている の目に何かが焼き付く。

「あれ?」

ガバ。
 窓にへばりつくように、 が窓の外を凝視した。

「あっれって…」 

驚きを含む声。

「まるで…」

は、声を詰まらせる。
そう… が見た物は…あの日の様子を再現したような風景だった。


暮れる夕陽

只、呆然と立つ少年

どこか、哀愁を漂わす空気

そして…鮮やかな夕陽が、少年を染め上げる様子

「あの時、みたい」

 ボソリと呟くと、同時に は走り出していた。

(何で走ってるんだろう?)

 走りながら、 はふと思う。

(興味があるから?)

 浮かんでくる、自分の中の疑問。

(うんうん…。分からない)

  は、思いつく仮説も違うような気がして、考える。

(好奇心かもしれないけど…会ってみたい)

 何となく、自分がどうしたいのか分かってきたのか、顔は好奇心に満ちていた。
は、はやる気持ちを抑えながら、急いでその場所に向かう。
あの時と、同じような場所に。


「あれ?居ない…」

 息を切らして、辺りを見渡す

「先まで、居たと思ったんだけどな〜」

 “きょろきょろ”と、もう1度視線を巡らせる。

「何処行ったんだろ〜。見間違いだったのかな?」

 少し、小首を傾げる。


 
 まるで、あの日の再現のように夕陽が を染め上げる。

「“君…元気無いね…。どうしたの?”」

ふいに、やや低めの声が、 にかけられる。

「へ?」

何の事やら、分からず は声の方へ振り向く。

(誰?聞き覚えのある声だけど…逆光で見えないよ…)

逆光の所為で、 にはその人物がよく見えなかった。

(これって…あの時に似てる気が…)

そう思いながら、 はその人物に返事を返す。

「もしかして…その次の言葉って…『どうせ、行きずりの人間なんだからさ…愚痴ぐらいなら聞けるけど?』じゃない?」

何となく、そう答えるのが良いと が思ったからだ。
の回答に、人物は一瞬驚いた顔をした。

(やっぱり…あの時の)

の中で、仮説が確信へと変わる。
そして…。

「良く、覚えてたな…てっきり忘れてたと思ったよ」

逆光の中から、出てきながらその人物は酷く優しい口調で話した。
何時も、聞く声。
酷く落ち着いていて、毎日のように聞く声。
に、記憶を呼び戻すきっかけを与えた人物。渋沢克郎。

「…し…渋沢君…」

  が、驚いて人物の名を呼ぶ。
渋沢は、ニッコリ笑う。

「な…何で、渋沢君が…」

少し、あたふたする

「俺が“あの時の”人物で、以外だったか?」

少し、苦笑する渋沢。

「え?渋沢君?」

「やっぱり、気が付いてなかったか」

「ゴメン…何というか、あの子の印象が全然なかったし…ぇっと、あの逆光で、見えなかったし」

しどろもどろの、
クスクスと笑う渋沢。

「ま〜、逆光で見えなかったのは事実だしな。 にしてみれば、“行きずり”だったからな」

が、不思議そうに渋沢を見上げる。

「でも、何で私だって…分かったの?」

「GKは、視野が広いのが売りなんだ」

悪戯ぽく笑う、渋沢。

「え?」

訳分からない、と言いたげの

「先のは、冗談だけどな。… を探し出したんだよ、俺は」

サラリと、臭い事を言ってのける渋沢。

「ココの生徒数分かってて、言ってる?」

 訝しげに、 は渋沢を見る。
マンモス校武蔵森学園は、中等部だけでもクラスが10クラス↑はくだらない。
例え、少しのヒントが有ったとしても、1人探すのは至難の技。
 よっぽどの情報力がないと、探すのはほぼ不可能。
だから、 は不思議で仕方がない。
 渋沢は、そんな の疑問をよそに、渋沢は話し始める。 

「校章で中等部だって、分かったし…サッカー部の事に興味無いっていうので絞り込めたし…それに俺には、強い味方が居るから、 の事すぐに分かったよ」

キャプテンスマイルを浮かべる、渋沢。
は、呆気に取られてる。

「凄いね…探偵になれるんじゃない?…渋沢FCに匹敵するよ…」

やっとの思いで、 が口に出せたのがこの言葉だった。
渋沢は、そんな に笑顔を返す。

らしいな…」

「でも…何で?」

 思い立ったように、渋沢は に真剣な声で話し話し始める。

「今更…あの時の話を に話すつもりは、なかったんだが…」

一旦言葉を切り、また続くけた。

「ただ、何て言うか…。他の連中が…、 を見て騒ぎ始めたのが…気に入らないというか…。上手く、言葉に出来ないな…」

の前になると…何で、感情が先行してしまうのだろう…やはり、惚れた弱みなのだろうか?)

渋沢は、困ったように眉をしかめる。
 そんな、渋沢を見て は少し可笑しくなる。

(強豪武蔵森キャプテン渋沢克郎君とは、思えないな〜…普通の子と一緒なんだ〜)

そう想って、 は…はっとした。

(あの時の子…そのままじゃない)

浮かんできたのは、元気のなかった男の子。

(ああ、渋沢君は…頑張って変わったんだ…。私…全然気づかなかった…)

1つ溜息をついく、
 意を決したように、渋沢の頭を撫でる。

「これやると…気分が落ちつてくるんだよ」

ニッカりと笑い、 は渋沢を見た。



「って、知ってるか渋沢君は?」

無言の渋沢。 

「落ち着いたかな?」

しばらく、頭を撫でる は、渋沢に尋ねた。

「ああ」

短く答える、渋沢。

…いや… さん」

「な…何?」

突然“ ”から“ さん”と呼ばれ、 は少し戸惑っていた。

(何だろう?突然?)

だまって、次の言葉を待つ

「好きなんだ…。あの時からずっと」

「ふえ〜?」

間の抜けた声になる、
 それに、気にした風もなく続ける渋沢。

「君に言われて、気が付いた事が沢山あった。それだけじゃなく、何度も助かった。何度も、会いたいて思っていた…けど出来なかった。意気地なしだから」

「何で?」

自嘲気味に言う渋沢の言葉に、 が尋ねる。
まるで、あの時の再現のようだと… は想う。

「“行きずり”だったから…俺のこと忘れてると思ったからな…言えなかったよ。でも、あの日…“あの時”の事覚えてるて、分かって嬉しかった…。それに…」

「それに?何?」

「…女子で さんの事だけ、呼び捨てなのに気づいてもらえなかったから…自信がなくてな」

「…?」

(ああ、そうい言えば)

は、思い出したように手を叩く。
渋沢は、どんなに親しい女の子にも“さん”付け。
呼び捨てにしてるのは、 だけだった。
 普通なら、ココで気が付くモノだが、 は気が付いていなかった。

(渋沢君が、私なんかを好きだと想ってもみなかったから…気が付かなかったよ)

「気が付かなかったよゴメン」

(む…悪い事を、したよね…)

「良いんだ、 さんが気にしなくても…“直球じゃなきゃ気が付かない”て言われてたのに、しなかった俺が悪い」

「だから、もう1度言わせてくれ…」

渋沢の言葉を遮るように、 が告げる。

「私も好きだよ」

「本当か?」

「嘘…言ってどうするの?」

「本当に、 さんは…何時も俺の欲しい言葉をくれるんだな」

「そう?」

「そうだよ。落ち込んでいた、俺を引き上げてくれたんだからな」

「褒めたって、何にもでないかんね」

渋沢は、優しく を抱きしめた。
夕陽の染まる2人の顔は、とても幸せそうだった。




「君元気無いね〜、大丈夫?」

魔法のような言葉

たった一言が、気持ちを高揚させる

不思議な、不思議な魔法の言葉

今も…そしてこれからも…

それは、あの日から始まっていたから

END

2001.7.15.From:koumi sunohara

   

キリバン置き場へ

☆後書きと言う名の、言い訳☆
ぎょえ〜。渋沢さん…渋沢さんじゃない(汗)
誰?青月さんゴメンナサイ。
終わり方も変ですし…。
後編もショボショボで。
切腹ですか?
何だか、キリリクの要望からズレてるし…(汗)
こんなになりましたが、いかがでしょうか?
こんな、奴ですが仲良くしてやってくださね(切実)