この空気を感じていたい



人間だれしも、趣味の一つや二つは有るもので、 も例にも漏れず、人並みの趣味を持っていた。
彼女の趣味は、スポーツ観戦。バスケから、テニスにいたるまで色々観戦しているが、 の中で今一番熱いスポーツは、サッカーだった。
応援しているチームは、今年J1に昇格したコンサドーレ札幌である。何気なく、テレビ中継を見ていてはまり。
そして、の憧れている“元日本代表の岡田監督”が就任したことにが、拍車をかけたといっても良い。
何故、“岡田監督”なのか?
いわく、「選手と一緒に練習する姿!何より、試合にスーツじゃなくて、ジャージが良い!」との事である。
の名誉の為に言っておく。
彼女は、けして“オジコン”では、無いので安心してほしい。



ある日は、友達の 早紀にスポーッ観戦の醍醐味を、語っていた時である。

「え〜っ てば、J2のチームなんて、応援してるの〜?(・・;)」

早紀は、非難めいた口調で、 に言った。それは、一種の侮辱ともとれる言い方。
好きなチームをけなされて、喜ぶ者などいるはずがない。

「 早紀…コンサドーレは、今年J1に昇格したんだから!!馬鹿にしないでくれる?それにJ2は、応援しちゃ駄目なのかな〜?」

例にもれず、“ムッ”とした声に 早紀は、思わず後ずさる。
現在 は、背後に“不動明王”が見えそうなぐらい、殺気に満ちていた。
フーリガンも、ビックリである。

「で…でも、 がサッカーをそれほどまでに、好きだとは、思わなかったよ〜。うちの学校のサッカー部に興味無いて、いってたし…以外だよ」

早紀が話題を変えるように、呆れた口調でそう言った。
少し、ミイハーな 早紀には、 の行動が良く分からない?といった感じなのだ。

「私…強すぎるチームて、駄目なのよ〜!!」

ビシーッ。
と言う効果音が、良く似合うポーズを決める

「まっ…それは、ともかく…だから〜、一緒にコンサの試合、見に行こうよ〜」

にっこり。 早紀に微笑む、
主語述語が、無い に少し 早紀は固まった。

(何が…だから、見に行こうなのよ〜!?)

内心毒付きながら、 の微笑みに怯える 早紀であった。
ヒュ〜ゴゴゴゴゴ〜。
突如タイミング良く、 と 早紀の間にもの凄い風が通り抜けた。
が、大事に握りしめていた、コンサドーレの入った封筒が、空に舞った。

「○×△□〜…」

言葉にならない、悲鳴を上げる
まるで、ムンクの叫びの様に顔が、歪んでいた。
早紀は、変わり果てた友人の姿に絶句して、動けない。

「はっ…私の“岡田監督”が〜!!!」

は、意識を取り戻し、叫びながら外に飛び出した。

(せっかく、生のコンサドーレが…岡田監督が見れるのに〜)

かなり取り乱しながら、チッケトの行方を捜す瑠姫。
鬼気迫る表情を…否、形相をした瑠姫に、周りに居た生徒は、完全に引いていた。
ま〜、叫びながら探していたなら、尚更だろうが…。
そんな、 に近づく人影が、一つ。
それに、まったく気づく様子を一向にみせない瑠姫。

「チ…チケット〜!!」

未だ、叫び続けている。
ポン。
肩を軽く叩かれて、“未だショックから立ち直れません”と顔をしたまま、 は振り返って。

「やっ! 元気そうだね♪」

の、目に入った者は…強豪武蔵森エースストライカーで、クラスメートの藤代誠二であった。

「何処が、元気そうに見えるのよ〜藤代君」

恨めしそうに、 は脳天気に笑う藤代を見た。

(私は、今チッケト無くて不幸なのに、何処が元気!なのよ〜!!!)

理不尽な怒りをこみ上げる瑠姫。

「ゴメン、ゴメン。あんまりにも、 が、雄叫び上げてたから、てっきり元気なのかと…」

顔をポリポリ掻きながら、フォローにならないフォローを述べる藤代。
ピラッ。
ふいに、藤代が白い封筒を の前に出す。

「探してる“モノ”て、もしかして、コレとかだったりして?」

ニッカ。

「はぅ〜…岡田監督〜!ご無事でなによりです〜」

目の前に、さらされた封筒を半ば、藤代から奪う瑠姫。
チケットの入った封筒を“ひしーっ”と抱き締めている。
その様子を、流石の藤代も呆然と、 を見っめる。

(岡田監督!?)

「はっはっはっは〜、藤代君有り難うv岡田監督の次の次ぐらい愛してるよん♪」

うって変わって、ハイテンションになった瑠姫は、藤代に歯茶目茶な事を言った。
さらに、周りの温度が氷点下の世界にいったのは、言うまでもないだろう。
藤代ファンの、お姉様達ですら、近づいてこない。

「やはり、君は実は良い人だと、知っていたよ!」

バシバシ。
と酔っぱらいのごとく、藤代の肩を瑠姫は、叩いた。

(本当に、良い人だと思ってくれているのだろうか?)

放心状態から、復帰した藤代は、そんな事を思った。
藤代は、先から思っていた、疑問を口にした。
それは、“ の持っている封筒”。

「それってさ〜…サッカーのチケット?」

「そうだけど」

サラリと返す、
答えに、顔を明るくさせる藤代。

「嘘!?以外〜、サッカー好きだつたんだ〜」

“以外〜”という言葉に、眉をひそめる

「以外って…どうゆう事かな?私の趣味、スポーッ観戦て知ってるでしょ〜藤代君?」

「うーん。だってさ、俺等の試合に来てくれないじゃん!だから、好きじゃないのかと思って…」

「うっ…」

藤代の言葉に、言葉を詰まらせる

「ねぇ〜何で、来てくれないの?俺、来てって何回も言ってたのにさ」

まるで、だだっ子の様に を見上げる。

「だって、つまら無いだもん」

いじけ口調で、 は答える。

「面白いって絶対!」

力強く、藤代が言い切る。

「明後日、練習試合あるから見に来てよ!絶対」

ビシーッ。
がやったみたいに、ポーズを決める藤代。
その勢いに、瑠姫は頷くしかなかった。

約束だからな!」

藤代は、楽しそうに嵐のごとく去って行った。

「仕方がない…見に行くか」

は、そっと呟いた。




ー練習試合の日ー
は、 早紀と共に武蔵森の試合を見に来ている。
藤代と約束をしているからである。
早紀は、 がやっと武蔵森の良さに気がついたと、思っているので嬉しそうに試合を見ている。
に、「武蔵森の、試合見に行くけど… 早紀も行く?」と誘われたのが、よっぽど嬉しかったようだ。

にも、やっと武蔵森サッカー部の良さが、分かる様になったのね!嬉しいわvvvvv」

と、サッカーを見るのも、半分に 早紀は、 に感激の言葉を言う。
本日何度目とも、数え切れない科白に、 は軽く流す。
彼女の目的は、あくまで“サッカー観戦”であるのだから。

(確かに、藤代君のプレーは見てみたいけどさ…なんて、エースストライカーだしね)

試合に、集中し始める瑠姫。
試合は、武蔵森の強さが手に取って分かる程の、圧勝ぶり。瑠姫は、眉をしかめる。

(こんなの…こなのて…)

の胸中を知るよしもなく、無情にも告げられる試合終了のホイッスル。
ピッピィ〜。
響き渡る、その音に は不機嫌そうな表情になった。

「はぁ〜」

出るのは、重い溜息ばかり。
早紀をはじめ、追っかけの女の子達は、黄色い歓声を上げて武蔵森の選手を迎えた。

「皆格好良かったよねvvv最高だよvvvv」

頬を少し、紅くして興奮気味に 早紀は、同意を求める。

「別に…」

は、素っ気なく答えた。

(納得出来ないはよ、こんな試合…)

と心の中で、思いながら。
本当のことを、言わないのは…“わざわざ不快な気分に、落とす必要が無いから”。

(不機嫌でも、それをわきまえているから…)

「私、用事を思いだしたから…先に帰るね(これ以上この場に、居たくないから)」

は、言い放つと 早紀の返事を待たずに、歩く。
しかし、 早紀が、膨れ面をして を引っ張った。

「何言ってるのよ、これからが本番なのよ!!」

やけに意気込んでいる。
早紀に、 は少し頭痛を憶えるのであった。

(何が…本番なのよ!!試合は終わったのよ〜)

そんな、 をしりめに、 早紀ははりきって手を振り声を上げる。

「藤代〜!ヤッホ〜!見に来たよ」

早紀の声に、藤代は気づいたのか手を振ってきた。
足早に、駆け寄ってきた藤代。

〜vv 早紀、見ててくれたんだ〜」

意気揚々と藤代は、 に言う。
ご丁寧に、ポーズまで付けて。

「藤代〜、 と私の態度違いすぎるんじゃない?」

とツコミを、入れる 早紀。
瑠姫は、2人のやり取りも頭に入らなかった。
よっぽど、先程の試合に納得がいかなかったらしい。
その為 は、反応に遅れた。

「瑠姫〜もしかして、俺…格好良くなかった?」

が黙っているので、藤代は心配そうに、尋ねてくる。

(俺、今日絶好調だったんだけどな〜)と内心で思っているからだ。

大きく、首を横に振る

「じゃー、何で?面白くなかった?」

は、少し顔を、しかめる。
その表情を、藤代は肯定に取ったのか、顔を曇らせた。
いたたまれない気持ちで、藤代から目線を外し 早紀を見ようとしたが、ミーハーな 早紀の姿はそこには、居なかった。
ボソボソと、重い口を開き始めた。

「…藤代君は、良かったよ…でもね」

言いかけて、 は躇ように、言葉を止めた。

(選手を目の前にして、言って良いのかな…)

考えに、考える

「私の好きな、雰囲気じゃなくてさ…。あっ、人の好みは、十人十色て言うでしょ?だから、今のは気にしないでよ」

意を決して言った言葉を、ごまかすように は、笑う。

「もしかして、今日の一方的な試合が、嫌だった?」

真面目な顔をした、藤代が を見つめる。

(気にしないでって、言ったのに…)

藤代に、目をそらすことなく、見つめられて、困り顔になる

「はぁ〜」

溜め息一つ。

「そうだね、それもあるけど…」

「あるけど…?」

次の言葉を待つ、藤代。

「特に最後の方…手を抜いていたように見えたから。それって、相手に失礼だと思うから…」

目を見開く藤代。

(「知ったような、口いってるなよ」て…呆れちゃったかな?それとも…)

心は不安で、埋めつくされそうになっていた。
しかし、返ってきたのは意外な言葉。

「結構見てるね、凄いや!やっぱ、 は他の子とは違うよ!俺嬉しい♪」

笑顔全開で、笑い返してた。拍子抜けの

「へっ?」

「そうだ 、“あのチケット”て余ってる?」

突然の申し出に、首を縦に振る。

「俺、それ見たいだよね♪あっ…チケット代は払うからさ♪」

ニコニコ。

「コンサドーレだけど、良いの?」

は、不思議そうに聴く。
早紀を誘をとした時「J2のチーム?」と言われたからだ。

「良いんだ♪だって、 の好きなチームの試合だろ?そしたら、 の好きな雰囲気が、分かるからさ」

言ってることに、疑問を抱きながらも は、返す。

「え?でも、藤代君忙しいでしょ?」

「大丈夫!!だから、駄目?」

「駄目じゃないけど…金欠じゃなかたけ?」

「うっ…」

どうやら、図星のようである。

「お金は、良いよ。チケット無駄になるより、見たい人にあげた方が良いでしょ」

は、笑って助け船をだした。

「お言葉に甘えます…」



ーコンサドレーの試合当日ー
は、藤代と大好きなコンサドーレの試合を見に来ている。
お互いサッカー好きなので、かなり密度の高い会話に花を咲かしている。
試合を真剣に、見つめる2人。

「ねぇー藤代、私がこのチーム好きな理由分かる?」

試合の後半に、 は呟くように言った。

「手を抜いてないから、かな?」

「う〜ん、当たりのようなハズレ」

クスっと、 は笑う。

「それはね…この歓声」

「負けてるのに…勝ってる方より歓声が凄い…」

嬉しそうに、藤代に微笑む

「大きな歓声でしょ。ココのチームはね、負けてる時こそ、応援が凄いの!まるで、コンサドーレに力を与えるみたいに…。それに応えるように、選手も頑張ってるの。私は、この空気が好き」

晴れやかに話す。
の表情は、ひどく満足そうだった。
藤代は、そんな瑠姫にみとれていた。

(よっぽど、好きなんだな〜)

「そっか、成る程たしかに、俺もこの空気好きかも♪」

「よかった、気に入ってくれて」

は、幸せそうに笑うと、試合の方に目を向けた。
しばらく2人は、試合を観戦していた。
試合の結果は、コンサドーレの健闘の御陰で、引き分けで幕を降ろした。


競技場からの、帰り道。
2人は、今日の試合を熱く語っていた。

「そう言えば、藤代君は何でサッカーしてるの?」

ふいに、そんな話になっていた。

「もち、好きだから♪」

即答する、藤代。

「じゃ〜、試合中は楽しいだよね?」

念を押すように、 は尋ねた。

「当たり前♪…でも、何でそんな当たり前のコトを、聞くの?」

頭に疑問符を沢山浮かべる藤代。

「武蔵森の人たちて、楽しさを忘れてるみたいで…見てる私が苦しくなるから…」

言いにくそうに、小声で呟く

(私この頃、藤代君に…本音ばかり言ってるな…)

不思議と、素直に出た気持ちに瑠姫は、少し苦笑する。

「俺は、何時も楽しんでやってるけど、皆監督の顔色伺ってやってるからな〜」うんうん。

1人、納得するように頷く藤代。

「ね〜、 、それだけサッカーのコト分かってるんだったらさ…一緒に変えようよ」

「?」

何を言われたのか、分からづ疑問符を浮かべる

「サッカー好きなんだよね?」

「好きだけど…何言ってるか…話が見えないんだけど?」

淡々と話をすすめる、藤代の言葉を止めるように は、口を挟んだ。

「あああ、ゴメン。俺てば、つい悪い癖で…。マネジャーに、なんない?」

「はぁ!?」

思わず、素頓狂な声を上げる

「そんなに、驚かなくても…」

「だって、驚くでしょ普通わ〜」

「俺は、 となら変えられると思うんだよね♪」

ニッカり、と笑う。

「何だか、告白みたい…」

クスクスと、照れ隠しのように笑う

「告白の、つもりだったんだけど…それに、何時も“好き”て言ってるのに…」

少し、へこむ藤代。

「私…何て言って良いやら〜、う〜ん」

パニックの為なにを、自分で何を言ってるのか“わからん”状態の

「まっ、返事は気長に待つ予定だから、別に良いよ♪でもね、俺 のコト好きだから、絶対振り向かせ
るから、覚悟しろよ!」

自信満々に、藤代は に言う。

「臨むところよ!」

は、少し固まっていたが、すぐに悪戯ぽい笑みを作る。
「取り合えず、マネージャの件は引き受けるよ」と付け足して。

「「覚悟しろよ!!」」

2人は、笑い合っていた。この2人が、恋人になる日は遠くないだろう。
そして、武蔵森に変革が訪れる日もまた…。


END

2001.4.26 From:Koumi sunohara


☆言い訳☆
みずほ様へ
3000HITのお礼が、この駄文でスイマセン(汗)
ゴメンナサイ〜、試合観戦の部分が少ないかったです。
はぁ〜、自分の自分の文才の無さに驚きました。
終わりかた、謎だし…。
しかも、趣味に走り…コンサドーレ。
こんな、モノになってしまいましたが、いかがでしょうか?
これに、懲りずにまた何かリクエストしてくださいね。

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