冬休みは、短い。
しかし、そう思わない人もいた。
高石タケル、小学5年生。
一般的な子供は、休みが嬉しくてしかたがないものだ。
特に冬休みと言えば、お正月…そして一大イベントの、“お年玉”が待っている。
元旦の石田家の、居間。
「おーい、タケル“お年玉”だぞ〜!」
タケルの父でもあり、ヤマト父である。
名前は、今だ分からない。
夜勤明けな石田父は、ほろよい気分で、タケルにお年玉を渡した。
「…ありがとう」
とても喜ばれると思っていた、石田父は、一気に酔いが醒める。
「おーい、タケル“お年玉”だぞ?嬉しくないのか?」
石田父は、声までヒックリかえって、タケルに聞き返すが、返事は返ってこないまま。
途方にくれてきた、石田父。
「ヤマト…タケル何かあったのか?」
去年のタケルの様子とは、あきらかに違うと思ったのか、ヤマトに助けを求める石田父。
ヤマトは、タケルを見て苦笑しながら、石田父の方を見る。
「まっ、夏休みの後半もこんなんだったから、気にしなくていいと思う」
「そうか…でもヤマト…タケルが日に日に荒んでゆく気が、するのは気のせいか?」
「まっ…まーな」
「原因は、大輔君か?」
ストレートについてくる、石田父。
「おっ…親父」
少し焦るヤマト。
「何だ?違うのか?」
「まっ…そうだけど」
石田父は、大げさなリアクションをとる。
「まったく…太一君は、空ちゃんにとられたからな〜、せめて大輔君だけでも…」
「…」
妙に意気込む石田父。
(親父て、何処かズレテルかも…)
《オイオイ…ヤマトさん、貴方も十分ズレテルよ》
二人のやり取りを、恨めしそうに見ていた、タケルが口を開いた。
「お兄ちゃん達は、楽しそうで良いね」
冷めた瞳で、タケルは二人を見つめる。
「デ…デジタルワールド行かなくても良いのか?」
苦しまぎれに呟く、石田父。
「別に、何かあったら行く事に、なってるからね」
(く…暗い、タケルの後ろに黒い海が…見える気が…)
タケルは、冬休みに入ってから、ずーとこんな調子だった。
それにみかねた、高石夏子さんが石田家に連れてきたのだっが…。
さらに、状況は悪化の一途を辿っている。
「じゃー、大輔の所にでも、遊びに行ったらどうだ?」
やっとの重いで口を開くヤマト。
タケルは、しばし“じー”と兄を見て、溜め息まじりに呟く。
「一寺乗の家に泊に、行ってるんだって…」
(僕の所にだって滅多に泊になんて来ないのに…やになるよね)
石田父とヤマトは、顔を見合わせ、首をうなだれた。
そして、どちらからでもなく、話ん変えだした。
「年賀状でも、見ようかなー」
「年賀状か…、どうせ大輔君からなんか、こないだろうしな…」
益々いじけるタケル。
その後も、二人はあの手この手(例えば、大輔近辺で情報を探たり、姉ジュンに聞いたり等)を尽くしたが、石田家でも、結局なにも変わること無く、タケルの暗黒化が進み手のほどこしようが無いので自宅に帰ることとなり、はや3日。タケルは、自室で腐っていた。
今日もタケルは、何時ものように“ボー”とテレビを見ていた。
ピーン、ポーン。
家のベルが鳴り、タケルは顔をしかめる。
(面倒くさい…これで、セールスだったら許さないよ…)
半ばなげやりに、受話器をとる。
「はいはい、どちら様でしょう?」
「…」
受話器の主は、言葉を詰まらす。
「本宮大輔様だけど、文句ある?」
「…」
今度は、タケルが言葉を無くす。
慌ててタケルは、ドアにかけだし、おもいっきりドアを開けた。
そこには、満面笑顔の大輔が立っていた。
「よっ!タケル元気にしてたか?」
「…」
タケルは、目をしばたく。その様子に、タケルの目の前で、手をヒラヒラとさせる大輔。
「お〜ぃ、なんて顔してんだよ(^_^)/」
「本物の大輔君?」
「あったりめーだろ!」
その言葉を聞いたタケルは、内心安心している反面、急に怒りが込み上げてきた。
そのため…
「それより、大輔君何で僕を避けてるの?冬休み中はずーと大輔君と居ようと思って、お兄ちゃんの所に行ったら、クラスの友達やら、京さんやら、挙句の果てには、一乗寺賢の家に泊まり?…僕の家には、滅多に来てくれないのに!!どうしてさ?」
と大輔に一気にまくしたてた。
「あのさ〜、タケル」
「何?」
「お前、話聞いてなかっただろ?しかも、一応メールもしたし、年賀状にも書いたんだけど…見てないだろ?」
「はぁ?」
タケルらしからぬ、すっとんきょうな声に大輔は少しビックリしていた。
「え?メール…Dターミナル、Dターミナル〜」
ビックリして固まっている大輔を尻目に、タケルはバタバタと部屋に入り、Dターミナルを手に取る。
「あー、年賀状!?」
部屋の中をドタバタと移動するタケル。
彼のこんな、姿は肉親だって、滅多にお目にかかれない。ヒカリが見ていたら、間違いなく写真におさめている事だろう。
再び、大輔の元に現れたタケルを見て、大輔は我目を疑う。普段のタケルの姿は、運動をしている人間に、不釣り合いな程髪も服もきちんとしていた。
が…大輔の目の前のタケルは、髪はボサボサ、服はクシャクシャ。
一言で説明すると、“タケルファンの悲鳴が聞こえそうな姿”をしていた。
(こんなタケル、初めて見たかも…)
「タケル…大丈夫か?結構、ボロボロだぞ?」
思わず大輔が、尋ねてしまう。
(大輔君が僕のことを心配してくれてる…感激だ)と、タケルは有頂天。
「それより、取り合えず見ろよそれ」
タケルに年賀状とメールを見るように、大輔はタケルを促した。タケルは、急いで年賀状とメールに目を向ける。
[明けましておめでとう!!今年もよろしくな。1月×日からずーと、一緒に遊びに出かけたり、しょうな!]
(年賀状より)
[お前に限って、忘れてるとは、思わないけど、話してる時うわのそらだったから、メールする。宿題を早く終わらせて、タケルと沢山遊びたいから、死ぬ気で宿題終わらせるから、まっててくれな FROM:大輔](メールより)
「大輔君〜V」
ギュー。
強く大輔を抱きしめる。
「やっぱり、話しきいてなかっただろ〜」
ぷーと膨れる大輔だが、タケルを愛し気に、見上げる。
「タケル…俺の事好き?」
「うん?大輔君違うよ、愛してるだよV」
顔を真っ赤にする、大輔。話を一気に変える。
「とっ…とりあえず、初詣でに行こうぜ!!」
「照れなくても、良いのに、本当のことなんだからさV」
クスクスと笑うタケルを、恨めし気に見つめる大輔が、呟いた。
「その格好どうにか、しろよ」
タケルは、肩をすくめる。
「はいはい、お姫さま」
「姫て、言うなていったたろ?
「だって、大輔君可愛いから」
タケルは、軽く髪を直し服を着替えて悪戯ぽく微笑んだ。、
「さて、神社に行こうか、大輔君」
神社に向かいながら、大輔はタケルに悪戯ぽく言う。
「そういや、今日のお前おかしかったな」
「あんまり、言わないでよ〜」
「でも、あんなタケル初めてみたし、俺的には、新鮮て感じ」
「まっ、僕をあんなにさせるのは、大輔君だけだから、貴重なんだからね」
フフンと、鼻を鳴らして、タケルは大輔を見る。
「だから、僕の大輔君でいてくれなきゃ」
「…」
「あれ?照れてるの?可愛いな〜大輔君わV」
「…早く、行くぞ!」
「待ってよ〜」
半ば、タケルを引きずるように、手をひっぱる。
なんにせよ、2人は神社に無事に着いた。
さっそく、御参りする。
「何、お願いしたんだ?」
「秘密、だって口に出して言うと、叶わないて、言うじゃない?」
「えーっ、そうなの?だから、今で叶わなかったんだ…」
「まー、信じる信じないは、人それぞれだからね。でも、僕のお願いは、大輔君のみ知るって感じだけどねV」
「また、恥ずかしい事言うし…」
「さっ、寒くなってきたから、帰ろうか大輔君!」
「ああ」
2人は手を繋ぎ、雪の神社をあとにした。
2000.12. From:Koumi sunohara
**後書き** 『なおっち様へ』 思いついたネタが1月(正月)ものだったので、1月中に出来て良かったです。 冬休みが長く感じてしまうのは、土地柄なもので、ご勘弁を(北海道人なので…)。 たしか、ご要望が、雪(季節ネタ)で甘々でしたよね。 うーん、あまり雪出てきてなくてスイマセン(.-_-.) しかも、前ふり長すぎのくせに、甘々が少ない…。 こんなので、良いのか?て感じです。 よろしければ、また書かせて下さいね。 By:すのはら江美 |