キリ番リク駄文(70000HIT有紀奈様に捧ぐ)
2002.10.11 From:Koumi Sunohara
サーッツ。
一定の速度で落ちる雨音。
窓には目の雫がしっとりと張り付いていた。
俺は今図書室の窓辺に立って雨の音を聞いた。
別に暇でその場所に居るわけでは、無論無い。
外が雨で部活も中止になったので、勉強をすべく図書室に足を向けているだけだった。
だが何となく、人の気配がまったくなく…雨音がやけに響くものだから…何となく窓辺に立ってみたい衝動にかられ…今に至っているだけ…ただそれだけだ。静寂の中に雨音はやけに感傷的な雰囲気をかもしだしている。
(梅雨の雨とはまたひと味違うといったところだろうか?)
その姿が何だか、小説やドラマの1シーンを真似ているようで…何だかそんな自分に苦笑が沸き上がってきた。
(よく洋画で、窓辺にもたれかっかって恋人を待つというシーンがあったな)
苦笑を浮かべながらも俺は、前に見た洋画の映像を頭の中で巡らせていた。
こんな事を考えてしまうなど、滅多になかったから余計に何だか可笑しく感じたが…ぼんやりと雨音に耳を傾けた。
(今年はやけに暑かったが、その暑かった期間がやけに短く感じるのは俺の気のせいだろうか?)
夏から秋の境目だというのに、外の空気は少し涼しげだった。
その空気を肌に受けて俺は昔あった記憶とかぶる。
(あぁ…あの時もこんな雨の日だったな…確か)
「雨って好きだけど嫌いなんだよ」
ふと思い出される少し前の記憶。
あれは俺が1年だった頃の今時期だったと思う。
その日も雨が静かな音を立てて、一定のリズムを刻んで落ちていた。
ふいに図書室の明かりがやけに目にはいった俺は、何となく足を向けた。
すると、難しげに表情を浮かべたが窓辺にもたれ掛かっていた。
何だか…何故だろうか…そんなに興味が持ったのか、俺は思わず声をかけた。
「難しい顔をして、どうしたんだ?傘でも忘れたのか?」
「ん?私そんなに難しい顔をしていた」
“ちなみに傘は持ってきてるよ。朝から今日の降水確率70%だったんだから、持ってきてるよ”と。
「何だか辛そうな顔だが…何か有ったのか?」
「そっか、表情に出てたんだ…いかんいかん」
は独り言のように、そう言うとまた窓に目を向ける。
「具合でも悪いのか?」
「珍しいね、心配するなんて」
「心配ぐらいするだろう普通」
「手塚君のファンの子に知られたら、袋叩きにされちゃうね」
「ファンなど居ないぞ俺には。不二なら居るだろうが」
俺はそうに言うと、は少し眉を顰めて俺を見た。
「手塚君ともあろう者が、“井の中の蛙大海を知らず”何てね。」
「大袈裟だな」
の言葉に俺は短くそう言い返した。
「テニス部の大和部長にかなりの評価を受けている、将来有望な手塚様」
「…」
「自分はどうか分からないけど、他人からはそう見られているんだよ手塚君は」
その言葉に俺は思わず顔を顰める。
そんな俺を見ては、少し困った顔を1度向ける。
サーッ。
その間にも雨は静かな音を立てて、落ちている。
雨の降る様子をは黙って見つめていたが、ふいに言葉を紡ぎだしてきた。
それは、先とは全然違う話題だった。
「雨の音って良い音がして、好きなんだけどね…でも何だかもの悲しい気持ちになるんだよね」
「センチメンタルになるというヤツか?」
「それも有るんだけど…私って結構ね頭病みするんだ…雨の日って特に酷いからね」
“いや〜まいったまいった”と苦笑いをしては言う。
「そういうモノなのか?」
「詳しくは知らないけどね…私はよく頭病みするんだよね」
“そう言うのって、結構乾君とかのほうが詳しいカモね”とは付け足した。
「大変なんだな」
俺は短くそう返した。
「おや?人ごとじゃないんだぞ手塚君」
「?」
の言葉に思わず疑問符を浮かべる。
「怪我って言うか、骨折した人とか…手術とかの後も天候とかで痛くなったりするんだよ」
“だから、他人事じゃないんだよ”と。
「それなら、雨はの敵と言うことか」
俺は一つの答えをに言う。
「まぁ〜あんまり良いことは無いけどね…でも不思議と嫌いになれないんだよね」
その答えには曖昧に笑ってそう言って返してくる。
それと同時に、独り言のように言葉を切れ切れと紡いでいった。
「雨は…永遠に降り続ける訳じゃないし…何時かは降り止むじゃない…それに…雨が上がった雲間から射す日の光や雨上がりだからこそ見える虹は綺麗でしょ」
“どれも雨がないと、見れないものだし…有り難みやないじゃない”と雨が窓に張り付く様を見ながら、口にする。
その姿はまるで、どこかの文学者みたいに俺の目に映った。
「なーんて、ちょっと文学少女ぽいでしょ」
「事実文学好きだろ?わ」
一瞬自分の思ったことが、読まれたのかと思いながらも俺はそう返した。
「はははは…まぁ〜そうなんだけどね。さて、もう行くかな」
“よいしょ”と小さくかけ声をかけて、は“じゃーね”と一言だけ残して教室から出て行った。
「雨音か…確かに綺麗な音だな」
が去った後に、俺は独り言のように呟いた。
(ああ…確かあれから雨を見る目が変わったんだったな…)とふ記憶の片鱗を思い出して俺は雨をぼんやりと見て思う。
音も無く、ふいに俺の前に影が出来る。
(?…誰だ?)
ぼんやりと顔を上げると、そこにいた人物に少し驚きを感じる。
「あれ?手塚君じゃないどうしたの」
「…か」
先まで、記憶の中で会っていた人物が其処にいて俺は人物の名を口にする。
「何?私が声かけたら不味かったの?」
「そんな事は無いが…ただ」
「ただ?ただなに?」
「ただが此処に居るとは思わなかったから…少し驚いただけだ」
「も〜何を言ってるんだか」
は溜息混じりにそう返してきた。
「私、一応図書委員なんだよ。此処に私が居たってなんら不思議じゃないでしょ」
“君の後輩君とは、違いますよ”とちょっとした、嫌みを交えつつは笑っていった。
「まぁ…そうなんだが…」
「それとも何かね…。私が委員会の仕事をサボるとでも言いたいのかね…規律に五月蠅い手塚君?」
悪戯を成功させた子供みたいに、は笑ってそう言ってきた。
「手塚君がそんなに雨が好きだとは思わなかったよ」
クスクスと笑いを含んだような、それでいて本気で言っているのか一見区別がつかない口調ではそう言ってきた。
「雨が好き?俺がか?」
「そんなにうっとりと雨を見ているんだもん」
「別にウットリ見ていた訳では…」
「そう?でも…だって窓辺にもたれ掛かって、映画の1シーンを思い出しちゃったよ。はまりすぎだったぞ」
ニシシと良く分からない笑みを浮かべては言う。
「そう言うの方こそ、雨が好きじゃないか」
の言葉に俺はボソリと言葉を放つ。
「へ?私?」
は自分を指でしめして“何で?”と首を傾げて俺を見る。
「2年前に、お前がうっとりと雨を見ていただろ」
俺は思わずそう言葉を紡いでいた。
言うつもりなど無かったのに…不思議と言葉は紡ぎ出されていた。
「嘘…そんな事まで覚えているの…手塚君…」
意外な事が起きたという目で見つめながら、はポカーンとした表情を浮かべていた。
「俺が雨を見て思ったのは、お前と此処で雨の日に出会ったことを思い返していたからだ」
の言葉に俺はそう返した。
「何だ…難しい顔になっているぞ」
俺の言葉に短く嘆息をついて、俺の顔をまっすぐ見る。
「私だから良いけどね…他の女の子にそんな事言ったら、勘違いされるよ」
一旦言葉を切ったが再び言葉を紡ぎ出す。
「一歩間違うと口説いてるように聞こえるからね。まったく手塚君は2年前と変わらないんだから」
“やれやれ”とが肩をすくめて、そう返してきた。
「口説いていると言ったら…はどうする?」
少し溜息混じりにそう口に出してみる。
「…」
軽く目を見開いて、あごに手を当てて考える仕草をする。
「ん〜取りあえず…困るかな」
やっとの思いで出した言葉は、その一言だった。
「俺が嫌いだから困ると言うことなのか?」
「いや…そうじゃなくてね。だってさ…急にそんな事言われても…嬉しいかもしれなくても…返事をどうしたらいいか…とか…色々考えるじゃない。だから私は困るよ」
“手塚君がこの立場だったらどうする?”
「確かに俺も…困るかもしれなんな」
曖昧な笑みを浮かべて、手塚はそう口にした。
「でも俺は…が好きだ」
そして、少し間を開けてハッキリと言葉を紡ぐ。
手塚の言葉には、驚いたように目を軽く見開いて…オズオズと手塚を見る。
「これは…すぐに返事なのかな?」
「いや…の好きな時で良い」
手塚はそう言うとに目を向けて、また降りしきる雨を眺める。
「そう…じゃ…」
も又、雨の降る窓を見ながら言葉を紡いだ。
“返事は…今日と同じこの場所で…また雨の日に”
聞ける距離。
会いに行ける距離。
でも…答えは…時雨と共に。
END
★後書きと言う名の言訳★
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