キリ番リク駄文(6000HIT夕野みく様に捧ぐ)

不器用に廻る歯車


とても責任感が強い

頼られれば、断れない

何でも、嫌な顔せずに引き受けて

皆から、良い人だと言われて

そんな事ばかりしているから…

負担ばかり増えて…

ずれてしまった歯車が…悪循環を繰り返しているのを…

貴方は、気が付いているだろうか?


武蔵森中等部の校舎から少し離れた所に、和を基調とした建物が密集している所がある。
一見何も知らない人が、見れば京都の太秦映画村や古き雅な京都の町並みを思わせる。
そんな場所である。
この場所は、文武両道を誇る武蔵森学園の日本文化を色濃く見られる部活…茶道、華道…弓道部の練習場や部室が集まっている所。

その中でも茶室は、日本でも有数な茶室と言われている。
有名な茶室で、茶道部の面々は部活の為に準備を整えていた。

「は〜っ、早く準備しなくちゃ…部活が始まってしまうわね」

焦りの言葉とは裏腹に、その人物の作業は焦る兆しを見せずに優雅な物腰で作業に励んでいた。
この人物の名は、
武蔵森中等部3年で渋沢と同じクラスの、茶道部部長である。
は作業をしながら、今日の出来事を思い出していた。
クラスメートのこと、委員会、部会の事など。

その中でも、彼女の中気になることが少し有った。
同じクラスの渋沢である。

(頑張りすぎだよね…委員会とかの仕事も平気でこなしてるし…部会の仕事だって…矢っ張り…疲れてるんだよね)

は今日クラスでの渋沢の表情を思い出して、そう感じていた。
何時もの穏和な笑顔に少し陰りがでていたとか、時折見せる疲れの色…集中力が薄れていた事等…。
本当に良く見ていないと、気が付かない渋沢の些細な表情をは見ていたのである。
ただミーハーに渋沢に好意を寄せている、女の子達とはハッキリ言って違っていた。
曰く…「私は、見てることしかできないから…」との事である。
渋沢のそんな表情の違いを、見抜けるものなって同室の三上亮ぐらいのもの…それを、はやってのけたのである。

(大丈夫かな〜…て…言ったって、私じゃどうすることも出来ないんだけど)

心配しても、自分にはどうすることも出来ないとは深い溜息を付く。
窓を開けて、滅入る気持ちを変えようとする
サーッ。心地よい風が、の頬を掠める。

(良い風…渋沢君も、この風を受けて…気分転換してくれると良いんだけどな)

風を受けながら、は思う。
ガラガラ。
物思いに浸ってると、背後の襖が開かれた。

(?部員がきたのかな?)

が視線を襖の方に向ける。
案の定そこには、息を切らした2年生の後輩が立っている。

「どうしたの?息切らして…何か大変な事でもあったの?」

普段慌てたり息を切らせたりしない、後輩が息を切らせて来たことに…は、思わず尋ねてしまった。

「違う意味で…大変ですよ…」

呼吸を整えながら、後輩は言葉を紡ぎだしていた。

(違う意味で?何だろう?)

小首を傾げて、後輩を見る

「サッカー部の渋沢さんが…至急、部長を呼んで欲しいとやって来ました」

後輩のとんでもない科白に、は理解に苦しんでいた。

(渋沢君?)

「部会の事とか…言ってなかった?」

渋沢が尋ねてくる理由が分からなくて、は後輩に尋ねる。

「何も言ってませんね…“悪いけど、至急部長呼んでくれないか?”としか言ってませんから」

後輩はそう答えてきた。

(何か…忘れ物何かかな…まっ、きっとそんな所だよね)

渋沢が来る理由を、頭でグルグルと考えながら後輩に返す。

「良く分かんないけど…取り合えず…う〜ん、渋沢君をココに通してくれるかな…話が長くなるといけないからね後…部活は離れの茶室でやってくれる?」

「分かりました。じゃ呼んできますね、部長」

後輩はそう言うと、茶室を後にした。

「何の用だろう?」

後輩の居なくなった、茶室に1人は、人知れず呟いた。



カラカラ。
茶室の襖が開かれる。
その奥から、渋沢が現れる。

さん…部活中に悪いな」

「別に良いよ。それよりどうしたの?私何か、プリントとか出し忘れたとかかな?」

入ってきた渋沢に、は疑問を早速口にした。

「いや…違うよ」

渋沢は短く、答える。

(じゃー…何だろう?)

は、小首を傾げて考える。

「取り合えず…立ち話もなんだから…座って。お茶飲みながらね。」

自分が出せる、答えを見つけるべく…取り合えず時間を稼いでみる

「美味しいな」

出されたお茶を口にした、渋沢が茶の感想をのべる。

「有り難う」

ニッコリとは、渋沢に礼を言う。

(褒められて嬉しいけど…何で私の所に?)

は、未だに理由が分からずに悩んでいた。

「…」

自ずと無口になる。

「こんなに、ゆったりとしたのは久しぶりかもな…」

誰に言う訳でもなく、渋沢が呟く。
それは、本人すら気が付いていなかったことだろう。

(やっぱり…疲れていたんだ)

渋沢の呟きに気が付いた、がそう感じた。

(…待って?今部活中よね?)

「あの…」

“部活は?”尋ねようとして、何故だかの口はその言葉を口に出ることはなかった。

「ああ、さんは部活中だったな…。」

渋沢は思いだしたように、口にする。

「ソレは別に良いんだけど。どうかした?何だかぼーっとしてるし…具合悪いんじゃ…」

「別に具合は悪くないよ。心配しなくても平気だよ」

その事に、触れてほしくないからなのか…無理に笑う渋沢。

(聞いちゃいけなかったのかな?)

はふとそう思う。

「ね〜渋沢君が良ければ…少し話していかない?お茶でも飲んで」

自分でも驚くような事を、が言う。

「ああ、そうだな。俺もそうしてもらった方が都合が良いし」

と渋沢は他愛のない話を、し始めた。
話をしている時の渋沢の顔を見て、は気が付く。

(こんな渋沢君初めて…見るかも…)

は心の底からそう思っていた。
普段大人びている表情ではなく、年相応な少年の顔。

(コレが…本来の渋沢君の有るべき姿なんだ…)

渋沢を見ながら、しみじみとは感じていた。

さん…俺の顔に何かついているのか?」

じーっとが見ていたのに、気になった渋沢が口を開いた。
とても、不思議そうに渋沢は見た。

「別に…ただ、今の渋沢君がリラックスしているな〜って思って…」

 見ていた事を、指摘された恥ずかしさから少し紅くなりながらそう言った。

「やっぱり、カテキン効果かな」

はははは。
と照れ笑いを浮かべて、が付け足す。

「?」

疑問符を浮かべる、渋沢。

「いやね…何かの番組か…本でそんな事見かけた気がするから…」

が慌てて説明を、加える。

「そう言えば…俺も聞いた事がある気がするな…」

ふむ。
渋沢が納得する。

「でもな〜、俺毎日欠かさず…日本茶飲んでいるのだがな…」

と付け足す渋沢。

「どういう時?」

が尋ねる。

「ご飯の時とかかな」

「ぷっ。…それって…何か違うよ〜」

 笑いを噛み殺しながら、言葉を紡ぐ。

「俺?変な事言ったか?」

真顔でに尋ねる。

「あ〜可笑しい。てゴメンナサイ。あのね…私が言いたいのは…ご飯の時って、大抵の人間って…リラックスしてるじゃない?…格式張った、フランス料理とか懐石食べる訳じゃないから」

「確かにな」

渋沢が納得する。

「何って言って良いのか分からないけれど…今の渋沢君は肩の力が抜けてて…とってもリラックスしていて…食事中の時のリラックスとは違って…えっと」

しどろもどろに、言う

「“日本風で落ち着く”のと、“空気が良い”も関係してたりするかもね」

あはははは。
は、笑って付け足した。
渋沢は目を丸くして、を見る渋沢。
が…穏やかな笑顔を浮かべを見つめた。 
見つめられ、何事だろうか?と思ったは渋沢に尋ねた。

「何?渋沢君…。私の顔に何か付いてる?」

さんがこんなに、話す人だとは思わなくてな」

は渋沢の言葉に、はっとする。
(私…そう言えば、凄くなれなれし…)

今更ながら、は思う。

「ゴメン…あんまり話したりしないのに…私たら…かなり、なれなれしくて」

申しわけ無さそうに、渋沢に言う

「俺は、さんにそんな風に…気を使わせたくて言った訳じゃなかったんだが…。スマナイ、気を使わせて」

渋沢も申しわけなさそうにに言う。

「でも…」

は、さらに謝罪の言葉を紡ぎだそうとするが、渋沢は目でそれを制する。
もの言いたげに、夕野は渋沢を見あげた。

「元々、俺が勝手に押しかけてきた訳だしな。謝るのは寧ろ、俺の方。だから謝られると、俺はどうして良いか分からなくなってしまうんだよさん」

困ったように笑う渋沢。
フルフル。
は、思いっきり首を横に振る。

「だったら、おあいこって事にしないか?」

渋沢が、そう妥協案をに提案する。

「有り難う渋沢君」

「お礼を言うのは、俺の方だよ。それに、俺としては…さんと親しく…仲よく話せて良かったからな」

「し…渋沢君///」
 
(渋沢君は何気なく、言った言葉だろうけど…)

渋沢の言葉に、少し赤くなる
そんな、心臓ドキドキのに渋沢は言葉を続ける。

「また、此に来ても良いかな?息抜きもかねな」

は、渋沢の言葉に快く承諾した。

「私なんか、の所でよければ…何時だって来てよ!大歓迎だよ(^^ゞ」

少し照れくさそうに言う

「そんな風に言われたら、毎日通ってしまいそうだな」

「まったーまた、渋沢君は褒め上手」

ドキドキを押さえて、が言う。
渋沢は、真面目な顔をしてを見る。

「こんな事、さんにしか言わないから…信じてくれると有り難いだけど」

「本当?」

頬を染めるに、渋沢は軽く頷く。

「こんな、冗談は言わないよ」

その言葉には、嬉しそうに微笑む。
渋沢もとても嬉しそうに微笑んでいた。
 


悪循環を循環

それが私に出来るというなら…

何時でも、どんなことでも…

貴方の力になれることを

私がやってみせるから

だから、何時までも変わらなくて良いよ


その後、渋沢が部活の合間に会いに茶道室にこっそり通っているのを数人の生徒に見られるのは…また別な話である。

      END
              2001.9.25  From:koumi sunohara


★後書きと言うなの、言い訳★
6000HITIの夕野みく様へ
夕野みく様お待たせしました。
リクエストにちゃんと、応えられたでしょうか?
かなり不安です。
渋沢さんが…偽物臭いし…(汗)
ちゃんと、細かくリクを頂いたくせにショボくて…。
また、機会があればまたリクエストなど、頂けると幸いです。
BY:すのはら江美

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