〜頂き物小説〜

大切なモノ



「ヒカリ、電話〜。光子朗から」
自室でくつろいでいると、居間から兄の呼ぶ声が聞えてきた。
『光子朗』その名を聞いて慌てて部屋を飛び出す。と、優しい笑顔で子機を渡された。そんなに慌てなくたって、電話は逃げないんだけど…、ちょっと困ったような兄の笑顔には目もくれず、電話に出る。

「もしもし、代わりました。ヒカリです」
「ヒカリさん、突然電話をかけてしまってすいません」
急いで電話に出ると、帰ってくるのは彼らしい言葉で。
『光子朗さんらしい』
自然と笑みがこぼれてしまう。
「あのー、唐突なんですが、今時間ってありますか?」
少し遠慮がちに尋ねてくる。それもそのはず、小学生が出歩くには遅すぎる時間で。
「全然平気です」
それでもヒカリは躊躇なく答える。
何時も自分たち新しい選ばれし子供達のバックアップをしてくれている光子朗。
その彼は何か忙しいのか、最近パソコン室にも顔を出していなかった。
声を聞くのも久しぶりな気がする。電話だけでも嬉しいのに、思いがけずに誘われて。時間何か関係無い。
相手に顔なんか見えないはずなのに、笑顔で答えてしまう。
「良かった、ヒカリさんに見せたいものがあるんです」
電話越しの声が途端に明るくなる。
「じゃあ、何時もの公園で待ってますね」
「はい、わかりました」

急いで電話を切ると、出かける準備をすぐさま開始する。
「お兄ちゃん、私出かけてくるね」
「あぁ、気をつけて行ってこいよ」
ココ最近見ていなかった妹の笑顔。つられて自分も笑顔で送り出す。
「オレの大切な宝モノ、泣かしたら許さないからな、光子朗♪」
言葉とは裏腹で、顔には満面の笑みをたたえている。大切な妹が幸せなら、自分も幸せで。
「オレも電話かけるかな♪」
それでも妹だけが幸せなのは悔しいから。自分も愛しいヒトに電話をかけるため、子機を持ち自室に戻った。


「…お待たせしました」
全力疾走で来た為、息がまだ整わない。
「いえ、僕も今来たところですから」
何時もと変らない優しい笑顔で自分を迎えてくれる。
息も落ち着いてきた頃、渡された1本の缶ジュース。温かくて甘いミルクティー。ミルクティー以上に心遣いが温かくって。

「こんな時間に突然呼び出してしまって、本当にスイマセン…。ご迷惑だとは思ったんですが、どうしてもヒカリさんに見ていただきたくって…」
俯き、またすまなさそうに呟かれる。自分の都合だけで突然呼び出してしまった事に、今更ながら後悔してしまう。もっと相手の事を思いやりたいのに。
「そんな! 迷惑だなんて思うはずないじゃないですか!!」
そっと相手の手を握り、真っ直ぐとした強い眼差しで見つめられる。
どうしてこのヒトはこんなにも、遠慮してしまうんだろ。こんな律儀な所も彼らしいのだが。自分にぐらいは遠慮なんかしないでほしいのに。
「すいません…」
その眼差しは兄である太一とそっくりで、思わず苦笑してしまう。
もう、だから誤らないで下さいって。上目遣いでむぅっと見つめてしまう。

「えっと、これなんですが…」
ヒカリに手渡されたのは、手のひらにすっぽり収まるぐらい小さな包み。
開けて見て下さい、優しい眼差しはそう伝えている。
「これって…」
それを目にして、ヒカリは思わず驚きの声を上げてしまう。それもそのはず、3年前の冒険を共にした8人共通の大切な宝物。
「デジヴァイス!?」
「レプリカ、なんですけどね。以前から作っていたんですが、今さっき出来たんです…」
恥ずかしそうにポツポツと光子朗は話し始めた。
「このデジヴァイスって僕たち8人が一緒に戦った証拠というか、共通の思いでの品で…。でも、ヒカリさんとタケルくんのモノは新しくなってしまいましたから…。えーっと、それで…」
顔を真っ赤にしながら、何とか話しを続けようとするが、上手く言葉が出てこない。
選ばれし子供である証、デジヴァイス。
ヒカリとタケルは新しい選ばれし子供達と共に、デジヴァイスも同じモノに変化してしまった。
初代の仲間達とは違う物、それがヒカリには物悲しく感じられていた。そんなことは無いのに、仲間ハズレになったような気分で。

「ヒ、ヒカリさん!?」
嬉しさのあまり、思わず抱き着いてしまった。やっぱりこのヒトは凄い。
自分の淋しさが
「ありがとうございます、光子朗さん…」
嬉しくって涙がこぼれる。
「その、僕はただヒカリさんに喜んで欲しくって…。って、あぁ、僕は何を言ってるんでしょう!!」
未だにパニック状態から抜け出せれない光子朗。そんな様子もやっぱり彼らしい。感謝の気持ちを伝えるべく、頬にそっとキスを贈る。


「今更なんですが、受け取って頂けますか?」
「もちろんです♪」
何だかプロポーズされているようなセリフ。答えは勿論即答で。
『お兄ちゃんにこの事話したら、何て言うかしら♪』
ちょっと恥ずかしいが、兄がどんなリアクションを取るのかが、今から楽しみでしょうがない。


ありがとう、大切な大事なモノにもう1度巡り会わせてくれて。
でもそれ以上に大切なモノは、大好きなあなたなんです。

Fin

はじめての光ヒカ♪
ヒカリちゃんとタケルくんのだけ変ってしまったデジヴァイス。
ヒカリちゃんは疎外感とか感じちゃってると思うんですよ。
水凪お得意の甘々。うーん、ほのぼのは良いね。
最近思いつくネタってかなりヤバイからねぇ〜。
裏でも作ろうかしら。
とりあえず、遅くなったけど江美嬢へのサイト開設祝いと言う事で♪
 
水凪沙羅


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