〜蝦夷玄慈様からの頂き物〜

『共に願う事』

草木がみずみずしい緑へと変わった優しい季節。
私はサーの国で 1人の男の人に弟子入りし、修行にはげんでいた。「おらっ! 江美 っ!もっと腰低くしろ!」
「はいっ!師匠っ!」
毎日毎日師匠の元で修行して、努力してきたつもり。
でも、最近の私はまったくその成果がでない...
一緒に修行しているカイはどんどん強くなっていっているのに、私は...努力してるのに、
がんばってるのに、
こんなに修行してるのに、
どうして?どうしてなの?
こんなんじゃ...
こんなんじゃ、激師匠に...!!!

私の両親はトラブルモンスターに殺された。
両親が庇ってくれたおかげで私は生き延びた。
その時思ったの。
私を生かしてくれた両親のような強さと、トラブルモンスターなんて簡単にやっつけてしまえる強さが欲しい、と。
そして、激師匠に出会った。
師匠が私に武術の素質を見出したのと、私の話が師匠の心に引っかかった事で私は師匠の元で修行する事になった。
私はメキメキと強くなった。
自分でも、人からでもわかるほどに。
私はトラブルモンスターどころか、GC(グレートチャイルド)のカイと互角に戦えるほど強くなった。
(まあ、今はトラブルモンスターもいないんだけどね...)
そして、師匠が相手をしてくれる事になった。
私は精一杯の力で師匠に向かった。
けど....
結果は私のボロ負け。
その時決心したの。
私は師匠のそばにいて、師匠の力になりたいって。
拳を交わらせればその人の事が少し、理解できる。
誰だったか忘れたけど、そんな事を言われた事があるの。
私は、師匠と戦った事で、少し師匠をわかれた気がする。

師匠は人を失う事、一人になる事を恐れてる...

だから、私はそばにいたいと思った。

今の私じゃ全然師匠の役にはたたないけど、いつか師匠のように強くなって、師匠を守りたいって。
なのに...
なのに今の私はっ...!! 「くぉ〜ら、 江美 。なーにボーっとしてんだァ?」
「えっ?あ、ああっ!師匠っ!」
休憩中、タオルを握り締めそんな事を考えていた私に、師匠は不思議そうに顔を覗きこんできた。
「すいません。ちょっと疲れちゃって...」
「そーかァ?...そだなー、最近 江美 疲れてるようにみえるからな〜...」
師匠はそう言うと、チラッとカイのほうを見てから私の手を引っ張ってこう言った。
「ちょ〜っと付き合えや!」
「え?ええっ?師匠?!」
師匠に手をひかれ、私は走った。
師匠の背中だけを見つめて。
その背中を見つめて、私は色々な事を思い出した...

「ほらっ!見てみろ。」
「はい...?あっ....」
そこは小高い丘の上。
周りではたくさんのポプラが風になびいていた。
そして、ふわふわと目の前を、後ろを漂っていくのは..
「雪みたい....」
「だろぉ?今の時期はポプラの綿毛が風に待って、こんな風に雪みてぇにみえんだ。」
さあっ...と心地よい風が吹くたび、ポプラの綿毛がふわふわと流されていく。
果てる事がないように思えるそれは、まさに天気の良い冬の午後のようだった。 江美 、オマエとあった日はこんな風に綺麗な雪が降ってたな。」
「そう...でしたね...」
師匠と会った日はとても暖かかった。
気候が、じゃない。
心が、気分が、体が、師匠の気持ちが...とても暖かかった。 「なぁ、 江美 ...」
「はい。なんですか?師匠。」
師匠は私の名前を呼ぶと、しばらく無言で春の雪を眺めていた。
そして、大きく深呼吸すると私の顔を見てから、にっこり笑った。 「初心を忘れんな!」 風が吹いた。
とっても強いんだけど、サワヤカな風。
全てのものを吹き飛ばしてしまった風。じわりと涙がにじんできた。
私は「はい。」と答える事しかできなかった。
けど、師匠は優しく笑ってくれた。
いつでも、いつまでも師匠は暖かい。 私は大切な物を守る強さを求めたはず。
それは、誰かのための力じゃない。
他人のために強くなんてなれやしない。
自分のためにだけ、強くなれる。
それが、他人を守る強さになる。
自分のために、初心を忘れずがんばれば、きっと、きっと、師匠を守れるほど強くなれるはず。
ずっとずっと、そばにいれるくらい。


「師匠、私が師匠より強くなるまでおそばにおいてくださいね。」
私はとびきりの笑顔をうかべた。
珍しく、師匠が照れた表情を浮かべた。
「じゃ、ず〜っと俺のそばにいなきゃだめだなァ。 江美 が俺を超えるなんて1000年以上かかるだろーからな。」
「そんなことないですよっ!」
私が反論したので、てっきり師匠はいつもの様に自信たっぷりな反撃をして来るんだと思った。

「...だろ〜な... 江美 、オマエはどんどん強くなる。きっと、すぐに俺なんか追い越しちまうだろうな...それは...俺の『願い』だな。ずっと、そばにいて欲しい...//ったく!針の塔にいた間に俺もどうにかしちまったかぁ〜?///」
師匠は赤い顔をして、ぷいっと背を向けてしまった。
その背中に、大きな背中に私は顔を埋める。
「私、強くなります。そして、師匠より強くなったら、師匠が勝手に死んだりしない様に私がずっと、ず〜っとそばにいて見張ってますから...!!」
師匠のお腹に回した手に大きくて暖かい師匠の手のひらが覆い被さる。
「んじゃあ約束な、 江美 。」
そう言って師匠は私の手を取り、指切りをした。
私はなんだかおかしくて、師匠の背中でクスクス笑っていた。ずっとずっとそばにいさせてください。
ずっとずっとそばにいてください。
一緒にいる時間が奪われないように、私は強くなりますから。
私を強くしてくれるのは貴方しかいないんです。



大変ながらくおまたせいたしました!!
久々に普通(?)のストーリーです!
玄慈の学校行く道でポプラ並木があるんです。(小中学校の前なんですが)
そこが5,6月すんごいポプラの綿毛飛んでるんですよ。
それ見て、上の夢のシーンが浮かんだんです。
すっごい綺麗で好きなんだけど、ちょっとウザイです。(笑)>綿毛
リップ塗った唇に引っ付いたりしてね....
でも、本当に綺麗なんだよ〜!!
それをメインに書こうと思ったらなんかずれちゃった。(汗)
時期的にはジバク君終了後ってくらいでしょうかね?
若仙人の方が好きなんだけど...
ヴィジュアルは若仙人でどうぞ!!(笑)

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