夏が来た…
暑い…
でもこの夏はあなたがいる。

エンドレスサマー

夏休み。
夏休みといえば宿題がある。
夏休みなんて言ったって実際遊べる日は少ない。
７月の内は学校で補講・部活があるし、８月になっても宿題や課題に読書感想文に……
効率の悪い私なんかは特にそうだ。
宿題なんてまだいいや…と言って、８月３１日は徹夜で残った宿題。

でも今年の夏は違う。あなたがいるから・・・

「夏休みどっか行く？」
終業式の日の帰り道、友達にバイバイと言ってから歩き始めた私と英士。
「８月には韓国に帰るけど？ モモコ は？」
太陽が眩しくて眩しくて…英士の顔がまともに見れない。
「特にないよ。…花火大会行こうよぉ！」
そうだ。花火大会に行きたい。英士と。初めての夏。
「うん。いいね。」
英士は微笑した。

「宿題たくさん出されたんだけど…手伝ってちょうだい！」
宿題は山ほどあった。でも…
「確か成績ヤバかったんだっけ？何？赤点？？」
英士は悪戯っぽく笑った。
「赤点って言うな！！」
赤点をとった。英士に夢中だったから。
例えば…数学なんて。英士のことしか考えてなかった。
こういうのを阿呆とか馬鹿って言うの？？
「いいよ。手伝うし。夏休みのうちにわかるようにしておけば。」
英士は頭がいい。私とは対照的だよ。学年トップだし。
…だから宿題がたくさんあって嬉しい。
英士と一緒の時間が増えるから。


気温３７度。
暑い８月がやってきた。７月のうちは勉強ばっかし…
多分８月の初めも。
「クーラー壊れてるの？？」
英士の部屋は暑い。４０度どころではなさそう。
「クーラーつけるの？今日は風が涼しいでしょ？それに体に悪いよ。」
！？…だぁぁぁぁぁ〜!!!!…ちょっと信じられなかった。こんな暑いのに…
冬生まれのクセに…（これはあんま関係ない）
「せ・扇風機もないじゃない？」
「それは壊れた。」
汗がどっと流れる。ハンカチじゃもう無理。タオルで汗を拭った。
「じゃあ始めようか？何からやる？」
「数学しか持ってきてないよー」
英士は自分の宿題を片付けてこちらへ座った。
「…で、どこがわかんないんだっけ？」
「全部。」
「・・・・・」
「全部わかりません。」
「…いきなりそれはないでしょ？」
「英士。」
「は？」
「郭英士がわかりません。」
数学なんかより英士が知りたい。英士は私のこと好きですか？
「あのね…真面目にやってくれない？」
何さ、結構真面目に言ったのに。英士は気づいてくれないの？

「… モモコ が好きだから、真面目にやって。」
英士は気づいていた。英士が気づかない訳ないか…
「いやです！真面目にやったら英士に勉強教えてもらえなくなるじゃん！」
「… モモコ 、バカでしょ？」
（笑。）
カッコ笑い。…って何？
でしょ？でしょ？でしょ？？
英士の口癖発見。さっきから「〜でしょ？」ばっかりじゃない。

「英士は友達にも勉強教えたりするの？」
英士の教科書がなんとなく書き込みだらけだったので聞いてみる。
「たま〜にね。夏休みは別。宿題、毎年手伝わされるよ。」
デキるヤツっていいよな〜。みんなに頼られて。
数学とか…なんでわかるんだろ？
「… モモコ ？聞いてるの？」
ここがこうなるから…χが３・・・・・・両辺を７で割って因数分解して・・・。
呪文みたい・・・。英士魔術師？
「聞いててもわかんないわ・・・」
…っていうのは嘘。聞いてない。英士の顔ばっか見てた。
さっきまで真剣だった英士の顔。今は呆れた英士の顔。
綺麗だなぁ。美形だなぁ。王子様だなぁ。
「もうやめようか…？」
英士は重いため息をついてペンを置いた。
怒ってるのかなぁ？？なんだか眉間にシワが…
「何？付き合うのやめるの！？」
って、まさかこっちの意味じゃないよね（笑）
「なんで？」
英士は少し驚いた。
「私がものわかりが悪すぎるから…・・いやでしょ？」
「〜でしょ？」が移った。
「その方が楽しいでしょ。 モモコ はそのままの方がいいよ。」
英士はなぜか笑った。意味わからない・・・

宿題は結局終わらなかったけど、
次の日は花火大会に行った。
暗闇と人ごみと花火と夜店と…
英士と モモコ と・・・
花火を見ながら英士を見た。英士を見ながら花火を見た。
そうしたら英士がキスをした。

夏よ・・・終わらないで下さい。

ＥＮＤ