応   援

応援というものは未知の力を引き出す。
アウェーに居るなら殊更思う。応援してくれる人の有り難み。

だけど…応援と一言で言っても色々、やる気のでる応援…その逆もしかり。

これは、ある日の友人 モエりんの応援への要求を見た一コマである。


何時もと変わらない部活風景。
でも何時もと違った事は、 モエりんの発言だった。

普段通り荒井先輩を完膚無きままに叩き潰していた モエりんが、部の応援について一言もの申したのである。

「荒井先輩じゃやる気が出ません」

ポツリと呟かれた言葉に、一同は唖然。
何が荒井で先輩ではやる気が出ないのかも言わない モエりんに困惑の色は増すばかり。
それは、言われた本人も同じだったらしい。

「分かりませんか。リョーマ君の応援を見れば一目瞭然だと思います」

「越前?んー…竜崎先生のお孫さんが応援してたりするけど…なんだよ」

考えながら呟く荒井先輩に、 モエりんはビシッと指を指す。

「はい其処。ポイントは桜乃ちゃん。其処が重要…アンダーライン引くぐらい重要です!良いですか?あの華麗な子の応援があれば鬼に金棒…烏合の衆の応援なんてアウトオブ眼中。あれは…癒しだね」

うっとりと、親父発言連発のモエりんに、名前を出された桜乃ちゃんは困ったように口を開いた。

「えっと…モエりん…私モエりんの事も応援してるよ」

眉を下げて桜乃ちゃんは、申し訳なさそうにそう言った。
私はその桜乃ちゃんの言葉に、ぼんやり思う。

(そうそう…桜乃ちゃんに朋香はちゃんとモエりんだって応援してるよね…)

だけれどモエりんは納得いかない顔をしてる。

「誰もしてないとは言ってないよ。桜乃ちゃんは問題なし…問題は」

桜乃ちゃんにはにこやかにそう言い…最後の方はドスが効いた声音で モエりんは、遠巻きに見ていた荒井先輩に視線を向けた。
向けられた荒井先輩は、ビクリと肩を竦ませてモエりんを見る。

「な…なんだよ赤月…」

「先も言ったように、荒井先輩や池田先輩の投げやりな応援じゃやる気が出ないんです」

ビシッと荒井先輩に指をさし言い放つ姿は、ハッキリ言って容赦が無いと思う。
私が心の中でこっそり荒井先輩に同情している中でも、モエりんの言葉は留まることをしらない。

「それに比べて桜乃ちゃんは…癒しだね…。やる気もでるし…本当に素晴らしい存在だよプリキュー」

“ほぅ”と憂いを帯びた溜め息を吐くモエりん。

(最後のプリキューは…死語?と言うかモエりん…)

私は何だかモエりんが、どんどん親父化が進む気がして…少し心配に思う。
荒井先輩達も恐ろしいモノを見るような目で、モエりんを見た。

だけどモエりんは、気にした様子も無く

「悔しかったら…チアガールの格好やら黄色い声を出してみて見て下さい」

最後にそんな恐ろしい爆弾を投下したモエりんは、言うや否や私と桜乃ちゃんを引きずるようにその場から遠ざけた。

(と言うか荒井先輩のチアガール姿なんて見たくないけれど…つーか想像事態がキツイ)

引きずられるそんな時私は切実そう思った。


こうして乾先輩の計らいの元、荒井先輩…池田先輩…何故か巻き込まれた堀尾君の三人は謎の着ぐるみを着て、青学テニス部を応援する事になったのです。

これが他校の目に入る日が来るかは…また後日。


おわし

2006.1.12.From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
25お題(I)よりテニプリS&T 小話。
久しぶりのS&Tです…と言うかモエりんです。
学園祭の王子は持っていますがやってないので…どんな子かは分かりませんが。
私はモエりんのあの女ながらに男気のある所が大好きです。
と言うわけでこんな話のですが、楽しんで頂けたら幸いです


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