昨日の敵は今日の友 |
− 天下無敵の侵入者 − |
馴れ合いなんて弱者のする事。
負けや悔しさは、自分を強くするためのエッセンス。
それが私の中の常識。
なのに、それを色んな意味で覆してくれる子が身近に出来た。
有り難いのか…有り難くないのか…そんな事はまだ分からないけれど…。
スポ根の常識は、「やるな貴様」とライバルが言って…そこから友情が生まれると言い切る。
そんな事を平気で他校…しかもライバル校の私に言ってのける変わり者がそう言った。
その子は赤月巴と言う。
一言で言うなら変わり者。
それでいて、真っ直ぐどこまでも突き進む…素直な子。
(動物に例えたなら、猪かしら?猪突猛進だものね)
私は少し返答に困りながら、友達だと…ハッキリ答えることが出来るだろう存在。
でも始めっから、友達だなって言い切れる間柄じゃ無かった。
はじめは只の他校のテニス部…敵にすらならないそんな存在。
非道い言い方だと我ながら思うけど…彼女の…巴の経歴を知れば大抵の人間はそう思うと思う。
だってそうじゃない?テニスの初心者…でレギューラーのさえ成っていない子に…マークする人間は少ないのだから。
(考えると良い出会い方はして無いのよね…友情何て寧ろ生まれる方が可笑しい程だもの)
心底そう思う程なのに、私と彼女は結構出かける間柄になり…知らず知らずに距離なんて無いに等しくなっていった。
気が付けば私が、赤月さんのペースに巻き込まれてる。
眉間に皺が定位置だったりしたはずが、お腹がよじれる程笑ったり…大声怒ったり…。
自分でも知らない自分に遭遇することも多々ある。
そう言う意味では感謝すべきなのかもしれないけどね。
トルネードや台風の様に、私の中に浸食していく巴は…ルドルフの私なのに、青学の集まりに平気で私を連れ回す。
しかも青学の人間も何も言わず寧ろ、頭数に入れられてる事も度々ある…。
まるでセット販売の扱いに正直顔を顰めたのは両手を軽く超える程。
まぁその逆に、ルドルフの集まりに勝手に参加したりもするんだけど。
此方も、同じようにセットに考えられているから…やっぱり彼女の影響は大きいのだと思う。
(何気に馴染むのよね…どこの場所でも…昔から居るような馴染みの顔してるのよね… 巴って)
色んな点から考えても…ハッキリ言ってそのノリに付いていけない筈なのに、何故だか私はその子に弱い。
普段なら拒絶する…小鷹に対しての物言いの様な態度だって取ったりする。
けれど、巴には出来ないと言うか…やっても無意味なのだ。
試しにやってみた事が有る。
「本当に赤月さんて変な子よね」
本人を目の前にして、そう言っても彼女はニッと笑ってケロリと返す。
「そう?楓ちゃんもなかなかだよ。山吹の地味Sに張り合って変人Sでも組む?」
「遠慮するわ…」
そんなやり取りも一度や二度じゃ無い。
赤月さんと話す時は大抵そんな感じに過ぎてゆく。
思い出しただけでも、呆れると言うか…思わず感心してしまう…微妙な気分になる。
こんな気持になるのも、巴に出会って初めて体験することばかり。
何というか…無理矢理と言うか…いえね別に嫌って訳じゃ無いけど…世界を広げられた感じ。
分かり易く例えれば…巴の前では防波堤や国境なんて無意味…軽々と進入してくるって所なのだ。
そして、気が付けば彼女によって色んな色をもたらされる。
本当はそんな事をされれば嫌筈なのに、不思議と嫌と感じない…不法侵入者。
そう考えて巴を思い浮かべれば、何故だか笑いがこみ上げてきた。
そして…。
(その内、あの 小鷹とも…赤月さんと馬鹿やったり出来るようになったりしてね)
あり得ないような…あり得そうな…思いが不意に浮かんだ。
何て事もも悪くないと思える私も、やっぱり赤月さんにかなり感化されてるのかもしれない。
そう遠くない未来に…私あの子と本当の意味で友達になれるかもしれない。
そんな予感が不意に私の中に生まれ始めたのだった。
おわし
2004.9.20. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ 早川楓ちゃんの独白と言うか…私の中でこうだったら良いなぁと思って書いた小話です。 私的に 小鷹ちゃんとは何時かダブルスが組めるぐらい仲良くなって欲しいと言う希望を込めて書いたモノですね。 汗と涙1と2…寧ろ2の方の楓ちゃんがお気に入りなもので… モエりんとセットで。 シリアス風味では無く、今度は モエりんとのドンチャン騒ぎをする話なんか書ければ良いかな〜って思っています。 取りあえず楽しんで戴けたなら幸いです。 こんな所まで読んで下さり有り難う御座いました。 機会が有りましたら、おつき合い戴けると嬉しいです。 |