寂しく散る紅葉

夏の暑さがから、肌に当たる風が少し冷たくなった頃。
木々の木葉も秋色に色付き、紅葉も朱色に色付き始める。

銀杏の黄色。紅葉の朱色。木の枝の茶色いに、紅葉の色は艶やかさを感じる。

春の桜の華やかさも圧巻だが、秋の山間の色もすばらしい。
単色ではなく、少しづつ変わりゆく過程を見るのも悪く無い。

難点を上げるとしたならば、移ろいやすい天候だろうか。
夏の残暑が残る日もあれば、不意に芯が冷える北風が吹く。秋晴れかと思えば、泣き出すような雨が降る。

女心と秋の空と言われるのは、女の人は心外かもしれないけれど…変わる天気は女の人の心のように実に掴めないものである。

帝国華撃団の隊長並びに、巴里花組の隊長を兼任し…現在は帝国華撃団の総司令官に就任しても、やっぱり女の子としての彼女達の心の内は分からない。

長いつき合いと、死線を潜った信頼関係はあるけれど、彼女達と俺達とではやはり違う。俺はもとより軍人であるし…方や舞台で舞う女優。少しでも彼女達と近くにありたいと願うけれど、それはきっと何時まで経っても変わらないのかもしれない。

楓さんに、そんな事を漏らしたら。楓さんも苦笑をして…。

「女の私だって全てが分かるわけで無いのよ。少しでも分かろうとする気持ちが大切だから大神君は十分よ」

「そうですね…。そうかもしれませんね」

楓さんの言葉に俺は、少し心を軽くしながらそう返した。返した直後に遠い地に送った甥、新次郎が星組の子達と上手くいってるのかかなり心配になった。
そんな俺に、楓は静かに微笑みを携えながら言葉を紡ぐ。

「でも今は少し違う事を考えてるのかしら?」

「ははは。お見通しですね楓さん」

「大方、自分の変わりに送った、大河少尉の事を気にしてるのね。確かに…欧州星組のメンバーだった2人居るから少し大変かもしれないけれど。ラチェットは花組と関わって変わったし。大河少尉は貴方のお墨付きですもの大丈夫よ」

「そうですかね」

「ええ。貴方だって色々人間関係に苦労して今の花組達の信頼を得たのだもの…大変かもしれないけれどきっと大丈夫よ」

「そうですね。でもなんだか、小さな新次郎が紐育に旅立ち…少尉になるほど大人になったかと思うと少し寂しく感じます。この綺麗に紅葉する落ち葉が散るような…何というか哀愁があると言うか」

「そうね。落ち葉が散ってしまっても…それは又、木の栄養になってまた巡るわ。そう思ったら、散る紅葉も寂しく無し…巣立った小鳥が大きくなって帰ってくるのを待つのも醍醐味よ。それにね加山君も居るし…きっと大丈夫でしょう」

「加山に師事するって辺りが心配ですが…きっと大丈夫ですよね」

「ふふ。案外に日本に帰る頃には、大神くん越えされていたりしてね。うかうか出来ないわね総司令」

「楓さん」

「それに…そんなに心配なら手紙書いてあげなさい。そうね…この紅葉の葉を添えて送っても良いのじゃない?紐育に桜はあるだろうけど…紅葉は無いかもしれないしね。きっと喜ぶと思うわ」

そう言って楓さんは、1枚の紅葉を俺に手渡して去っていった。

秋は少しだけ気が滅入る。色々な悲しい事を思い出すから。
けれど、楓さんが言う様に…散る落ち葉は栄養になり巡る。
巣立った鳥は大きくなって帰ってくる…そう考えたら、少し寂しいかもしれない…女心など分からないかもしれない。けれど…それでも、信愛し合っていればいいのかもしれない。

「たまには…新次郎に返事を書いてみるのもいいかもしれないな」

楓さんから貰った、紅葉の一片を見ながら俺はふとそうおもった。

2008.9.20 FROM:Koumi Sunohara 


おわし  


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