新たに芽生えた息吹  

自分の子供以外に混血児の子供が沢山この世界に居るなど気が付きもしなっかた。
ただ私は自分の失った力に絶望して、ベオクとラグズを見つめてきた。
永遠では無いけれど…ベオクよりも長い時間を過ごす自分。

オルティナと結ばれた事による失った鷺の民としての力。
どうすることもできないもどかしさの中生きる時間は酷く長く感じた。

大事な仲間は竜鱗属のデギンハンザーと自分以外過去女神との約束を知る者は居なくなった。

女神が望む世界異なる世界。

ラグズを奴隷にするベオク社会。
負の気が多くなる世界。

軽く絶望に似た感情が浮かぶ。
それを少しでも変えたくて私は、ベグニオン帝国に単身向かった。

そこで出会ったのは、私が愛したオルティナによく似た自分の子孫。
神使ミハサ、彼女は混血の印である印付きであった。
ベオクで有りながら…ラグズの寿命のと力を持つ者。

それでいてラグズを平等である事を強く望む優しい子。
自らの危険を顧みず、ラグズ奴隷解放宣言を発令しようとした自分とは違う強い子。

印付きでありながら、神使という役割。
どれだけ彼女を苦しめただろう…元老院との確執…言いなりになりきれない現実。

それでも現状を変えようと奮闘する姿は、過去の自分に重なるものがあった。
けれど、それでも小さな力。
つみ取られるぐらいに小さな力。

ミハサの身に起こるであろう出来事は、簡単に予想できた。
勿論自分の愛する子孫であり…志の同じ優しいミハサを失うことは絶望と言えるから。


セリノスの森を焼かれ。
鷺の民の大虐殺。
それにミハサの死。

恐れていた絶望。

神使不在のベグニオン帝国の混乱。

私は、女神にこの世界の終わりを願った。
ラグズである事を捨て、ベオクの世界で…負の気を増大させて…女神の復活を望んだ。

そのための布石の様に、幼いサナキ様を元老院と共に神使にし…。
戦争の火種を少しずつ撒いていった。
これで全てが終わるなら…それで良いと思って。

けれど…女神は気まぐれに…絶望しかない自分に…希望に似た光を与える。

印付きでは無いけれど…ラグズとの共存を望むミハサの意志を継ぐ者が少しづつ増えていく。

元老院に屈しないサナキ様

ラグズとベオク双方の感情を持つ勇者アイク

ラグズ同盟国クリミア王の意志を継いだ女王エリンシア

ラグズ奴隷解放の火の心を受け継いだベオクの少年トパック

印付きだけれど共存を望むミカヤ


諦めて…女神に全てを委ねた頃には、私の周りにはそんな素晴らしい新たな息吹が生まれていた。
全ては遅いけれど…自分はその中には入ることはできないけれど…。
それでも、例え女神の裁きが下っても彼らはきっと変えるために立ち上がるだろう。

自分では叶わなかった…。
ミハサでも変えることが叶わなかった願いを…。

芽吹いた小さな…可能性の秘めた子供達の手によって。
それが分かっているのに私は…回した運命の歯車を停めることはできないけれど…。


おわし

2008.12.18. From:Koumi Sunohara
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