反 対 方 向

勝手に人はイメージを作る。それは仕方が無い事だと思う。思うが…勝手にもたれるイメージに困らないとは誰も言って無い。

(実際俺は、現在進行系で困っている)

勝手に貼られた、ボランティアをする慈善的な南健太郎と言うイメージに。

そもそも、別に俺は自分が親切な奴だなんて思わない。
割と適当だし、博愛主義でも無い、千石に言わせる所の地味な男である。

亜久津や千石が周りに居る所為で、若干の好感度があるが、そこら辺に転がる学生となんら変わらない。
学校帰りの買い食いをすることだってある…校則を全て守っている訳でもない。

許るされるなら、俺だって自由に誰も気にしなくて好きにしたいと思うが、兄をやって長い所為もあって、ついつい世話を焼いてしまう。もとい貧乏くじを引く。
それがいい人と言うのなら、世の中殆どの奴らがいい人になっちまう。

(その事は、本当に声を大にしていいたい)

第一、いい人って何だよ?俺の趣味が切手収集で、ダブった切手も何となく、捨てるのもどうか?と思って、学校の古切手回収だしたのが、そもそもの始まりで…。それは、あくまで何となく。惰性の様な始まりだったように思う。

敗因を思うなら、ボランティア関係を担当していた教師だって、たまたま伴爺だったから渡したって事だけど、殆ど丸投げに近い状態だった。

(それなのに、何でだ?何で俺に皆は、古切手を持って来るんだ?いくら地味Sだと言われるからって、ベルマークの回収箱に俺見えるのか?)

そんな被害妄想まで感じるぐらい、皆は俺に切手を持ってやってくる。
最近は、自分がテニス部の部長である事すら忘れられてる気がする。

つい最近も…。
クラスメートの女子生徒から、笑顔で声をかけられた。
千石辺りなら、喜んで「ラッキー今日の恋愛運二重丸」と言う所だが、俺は何となく事の顛末が読めてしまうため…少しげんなりする。

(大方…ボランティア関係だろうさ…)

心の中でそうぼやきながら、俺は声をかけた女子生徒に返事をする。

「どうしたんだ?千石なら今居ないぞ」

「千石君?違うよ南君に用があったんだ」

「そうか…どうしたんだ?」

「あのね、これ他校の友達からも集めて貰った切手なんだ。南君ボランティア部大変ね。応援してるからね、頑張ってね」

差し出されたのは、ビニール袋に入った切手の数々。

(ああ…やっぱりか…そうだよな…そんな展開だよな)

自分の予想が当たった事に、何だかちょぴり落胆しながら俺は女子生徒から差し出された袋を受け取る。
そしてつい…。

「悪いな。ちゃんと伴田先生に渡すな」

と返した。
彼女は満足そうにもう1度「頑張ってね」と笑って去っていた。

そして訪れる自己嫌悪。

(NOと言えない自分が嫌だ。これだからボランティア部だと勘違いされるんだぞ健太郎)

はぁ〜と重い溜息を一つ吐く。
自分の態度が周りに謎のループを生むのを知らない訳では無いが…これこそ正に性分のためどうすることも出来ないのが現状。

若干重苦しい雰囲気を醸しだす俺に、先程思い浮かべていた千石が声をかけてきた。

「あーあ…また南ってば、受け取っちゃったの?ちゃーんと違うって言わないと南永遠にボランティア部の部長さんだぞ」

「何だよ…見てたなら助けろとよ」

千石にそんな文句を言った所でどうにも成らないが、思わず零れる愚痴。
そんな俺に千石は相変わらず。

「駄目駄目。ちゃーんと南が断れないと意味無いのだよ」

「そりゃーそうだけどな。何だろうな…何かそんなに俺ってお人好しに見える訳?」

「まぁ…そうだね。けど…南は怒らせると怖いタイプだと俺は思うけど。寧ろイメージと反対だよね」

少し真面目な顔をして、千石はそう言う。
そんな風に思うなら少しぐらい真面目にしてくれても良いのにと…思ったのは言うまでも無い。

勝手なイメージは仕方がないが意外にも千石が俺の事をちゃんと見てると言う事に少しだけ嬉しくなった。
分かってくれる奴居るなそれはそれで何とかなるのかもしれない。

(でもな〜…そろそろ、ちゃんと言わないと引き返せない所来てる気がするんだよな〜)

ちょと不吉な思いにかられながら、俺は渡された古切手を伴爺に渡しに行くのであった。


おわし

2008.9.21. FROM:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
2008.9.21カラWEB拍手で掲載していたものです。
南ボランティア話の第2弾です。



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