余 計 な お 世 話


南が元気が無いと、全体的にどんよりする。
まるで曇り空で、泣き出しそうな曇り空…憂鬱な気分になる。

それは俺以外も同じみたいで、南は信じないかもしれないけれど俺何かよりも十分なムードーメーカーは南だと思う。

よっぽどの事が無い限り、部員の前ではしゃんとしている南。
だけど俺は知ってるよ、忙しさが無くなったときに不意に見せる不安げな顔…南は何時だって無理をしながら頑張ってる。

皆もそれを知っているから何も言わず、何か出来ることを探ってる。
さり気なく、南の仕事をやってみたり馬鹿やって笑わせたり…そうやって俺達は持ちつ持たれつ…まん丸くやってきた。

だけど、ここ最近の南の様子は可笑しかった。
不意に見せる、困ったような…不安そうな顔。
悩んでる日が多い。

だから俺は考える。

けれど…部活ではコレと言った問題は無い。
問題児と言われてる亜久津も、壇君に引っ張られて真面目に出てるので南の胃痛の原因は無いに等しい。
第一俺も真面目に部活に出ている訳だし…あれこれ考えても山吹内で問題が分からない。

某データーマンなら、もしかしたら南の可笑しい理由が分かるかもしれないけど、生憎俺はデーターなんて取らないし…小さなデーターマンの壇君もよく分からなと頭を傾げた。

それでも一生懸命考えて、南の変化が生じたのが都内及び関東の部長を集めた部長会議に出てからだと気が付く。
何度か出てるソレに出た後、南は色々変化がある。
今まで以上に雑務に励む…後輩の指導…自分の練習に励む…など部長らしさに磨きがかかる。

始めは部長同士の交流が良い意味を生むのだと周りや俺は思っていたけど、最近輪をかけて元気の無い南に俺は疑惑思う。
言われない事を言われて南は傷ついているのかもしれないと。
何だか知らないけれど、そう思った。

そんな折りに南が部室で漏らした「甘いだけでは人を指導できないか…甘いのかな俺って」と言う独り言だった。
恐らく南は聞こえないつもりで…無意識に漏らしたのだろうけど俺の耳にはしっかり入った。

聞こえないふりも出来たけど、俺はあえて俺はしつこく粘った。まったくもってらしくないんだけどね。
今思えば、知りたかったのかもしれない…南を追いつめている事の真相を。


粘って色々話させて、やっぱり南を追いつめていたのは悪意の無いと思っている部長達の言葉だと分かった。
実際凄い連中が部長な訳だから、色々あるんだろうけどさ…南だって凄いのに何で気付かないのだろう。

だから分からせてやりたいと思った。

(別にね…南を広める気は無いだよね。これ以上世話焼けるの増えたら俺構って貰えなくなりそうだから…でも南を一方的に悪く言って追いつめるのは勘弁ならない)

我が儘なのは百も承知だけど、俺は立ち上がることを決意した。
南の代わりに部会に出るという荒技に討って出る事にした。


本当は南にとって俺の言い出した事は、要らない事なのかも知れない。
それ以上に南にとって俺と言う存在は、要らないのかも知れない。

(心底手の内が分かるベストパートナーじゃない…)

其処は東方のポジションだから。

(亜久津みたいに凄い問題児でもない…それでも、亜久津は、口は悪いけど間違ったことを指摘できる不良だよね)

俺はそこまでいかない。

他にも、部員は南のポジションをちゃんと持っている。
そんな時俺は、何とも中途半端な奴だ。

南は弱そうで…でも強くて…でも繊細な奴だと思う。矛盾してる言葉だけどソレがよくしっくり合う。

だって、南の凄いところはどんなにどん底に落ちても這い上がって来るところ。
悪かった出来事も、何時か良い方向に転換する事が出来る人だと思う。

一見地味で、何処にでも居そうな存在に見える。
南という人物に触れていけばいくほど、味わい深く…側に居ると落ち着く。
何だろう肩の力を入れなくて良いって言う安心感がある…親と居る感じの気兼ねなさ。

それに南は、不思議な程人を良い意味で変えてくれる。

凄さが大事だと思っていた俺を一気に変えてしまった。
ありふれた事が、大事で…基礎は本当に大事で…焦る思いがあってもコツコツ積むことの大事さを南に教わった。

目から鱗とはこの事で、基礎がないのに凄い技は出ない。
すっ飛ばして凄いことをして出来たとしても…何時か飛ばしたツケが返ってくる。

俺にとって南は親友で…恩人。南自信がどう感じているかは俺には分からないけどね。
出会ってなければ、腐っていたし…今の俺は居ない。
ラッキー千石とか…そんな風に呼ばれる事はまず無かったと思うし…学校にだってこんなに真面目に出ては居なかったと思う。

散々南に困らせている俺が言うのは本当にお門違いかもしれないけれど、南が困っているなら、俺が何とかしたいと思う。
少しぐらいなら力になれるでしょ?

「例え南にとって余計なお世話でも…少ししか恩返しが出来なくてもそれでも俺は誰が何と言おうと南の味方だからさ。こんなにシリアスな俺なんて気味悪いかな…ちょっと格好悪いよね。でもこの際どうでも良いよ、余計なお世話かもしれないけど今回は格好つけさせてよ」

そんな風に南に直接言えないけれど…。


おわし

2006.5.19. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
「およずれごと」の続編です。ちなみに千石と南15のお題から題名を頂きました。
結局この段階でもシリーズ名は決まらず…どんどん進んで行きそうですが…。
ちょっとだけ千石さんが、自分なりに格好良く書けたので良しでしょうかね。
のんびりゆっくり続きますが、おつき合い頂けたら嬉しいです。


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