山吹の日常

  我が道 −個々の持つ個性−  


千石と言う男との出会いはかなり最悪だった。
初対面からして…。

「南君ってさ…地味だね」

笑顔全開で言われ。
たまたま、隣に居た東方も巻き込み「地味sだね」と決定事項を告知された所為かもしれない。
そして何より、何でも苦になくそつなくこなす天才肌に…自然と苦手意識が働いた所為かもしれない。

何というか分かり易くて分かり難い。
それが千石清純と言う男だと思う。

オレンジの頭に、人懐こい雰囲気に話し方…物怖じしない態度。
所謂一つのムードメーカーと言う存在。
在る程度の勉強とスポーツ関係をそつなくこなすし…顔も良い。
人気者と言う言葉もよく合うのかもしれない。

(俺とは真逆の存在だよな千石って)

そう常に思えるほど、プレースタイル…生活面でも可もなく不可もない…オーソドックスな学生の一人である俺にしてみれば、何となく遠く感じる存在だった。

けれど…それはあくまで外面…外キャラって奴だ。
実際の千石は、つかみ所がありそうで無い…人を受け入れそうで…そうでは無い。
まるで野良猫か何かの様に、何処か線を引いている。

そつなくこなしている事も、実は陰での努力の賜物だという事も最近気が付いた。
だってそうだろう、1日2日でしなやかな筋肉が出来るなんて事は先ず無いし…走り込んだりしない限りスタミナが付く筈がない。

そう思った俺は何となく千石に「ちゃんとトレーニングしてるんだな千石って」と言ってみたら案の定彼奴は「何いってるのさ。するわけ無いでしょ…強いて言えばラッキーだからね俺」と返された。

「ラッキーで済むかっての。プロテイン飲んだからとかじゃ説得力無いからな」

「うっ…」

「(図星か…そう言うつもりだったっんだな)お前の偶然は必然の元のラッキーだろ。ラッキーって言う言葉で色々な面倒ごとから回避してる。ああ…別にコレと言った事は無いぞ…言いふらす気もない…ただ本当に何も努力してないでそうなら腹立たしいけど…違うって思ったからな。何となく自己満足だ」

そうやって勝手に言葉を紡いで自己完結させる俺を千石は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして、俺を見た。

「…地味に見てるんだね。ビックリだ…まぁ…合ってるねソレで」

そう言って口ごもる千石を俺は、次の言葉を気長に待った。

「あのさ…その事言わないでくれないかな…。だってさ俺のキャラじゃないでしょ」

乾いた笑いと自嘲気味な口調で言う千石に、俺は小さな溜息と共に言葉を紡ぎ出す。

「努力してる姿を見せるのが恥ずかしいって言う奴もいるしな。人それぞれスタイルが有るんだ別にいいじゃないか…お前が俺を地味だって言ったように…俺は地味でコツコツやっていくのが合っている。人がどうこう言う問題じゃ無いだろ」


周りには相変わらずの外キャラな千石。
どう言う経緯なのか分からない。
けれど…何故か俺は千石という男に懐かれてしまっている。

「南ってさ天然のタラシだよね」

そんな謎の言葉と共に…。


おわし


2007.12.6. From:Koumi Sunohara

★後書き+言い訳★

web拍手にて2007.9.3.〜掲載していたものです。
千石と南のお題からです。
1年生ぐらいの南と千石です。
何故南に懐くのか?を副題です。
南は今ひとつ分かっていなそうですが…そんなもんでしょう。
ひとまず楽しんでいただければ嬉しいです。

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