| 10.)派手だね |
| −言い換えれば豪華とも言えるかもしれない− |
部活も無い休日に俺は、何をする訳でも無くブラブラと街を歩いていた。
あ…別に友達の居ない寂しい青少年じゃ無いから…そこん所はヨロシクね。
ただ…南とか東方とか…山吹の面々を誘って遊びに行っても良いんだけど、普段疲れている我らが部長様を思うと少し気が引けて、今日は一人ってだけなんだけどさ。
兎も角、暇な俺は今日の運勢のラッキーな方角に向かってブラブラと当てもなく歩いているワケね。
だけどさ…ウインドーショッピングって言うも限界つーもんが有るんだよね。
いい加減見るも厭きてきた俺は、そろそろ場所でも変えようか?なーんて、考えながらアッチだコッチだって視線を泳がせていたら…。
不意に見慣れた姿を発見した。
(え?アレって…)
動体視力が良いってコトは、視力だって良い訳で…見間違えるワケは無く。
再度確認するために、そっちに目を向けても…結果は変わらず。
(やっぱり南だ。しかも両脇に居るのって…)
俺は思わず、その視線の先に走り出していた。
腐ってもテニス部って事も有り、その集団もゆっくりだった事も有ったのか…俺は早々とその一団に追いついた。
追いついた俺は、見慣れた南の後ろ姿にやっぱり有っていた事にホッとしたけれど…。
会うはずの無い南を挟むように、これりゃまた意外な二人が脇を固めていた。
何せ…あの青学の手塚君と…氷帝の跡部君という組み合わせ…一言で言えば部長ビンゴの完成ってヤツだけど。
我らが部長の南ちゃんとの組み合わせが以外すぎて、俺は一瞬戸惑いを隠すことは出来なかった。
(何故…この二人と南なの?つーか…ズルイかも…)
疑問が浮かぶんだけど、俺の本能は…『南と遊んでズルイ』という意識で一杯になって。
思わずでた開口一番の言葉は…もしかたら、理不尽な言葉だったかもしれない。
「ズルイよ跡部君に手塚君。俺だって南が疲れてるかな?って思ったから自粛してるのに…君らが誘ってお出かけなんて…ズルイ以外の言葉では言い様は無いよ」
俺の突然の登場に驚く三人。
しかも…南を挟んで歩いていた手塚君と跡部君に向かって文句を言うけど、手塚君は相変わらず涼しい表情で俺を見返し…跡部君に至っては、鼻で笑うというオプションまでつけてくれた…。
何だかその態度に、心なしか俺の頬は引きつった。
(正直かなり腹立たしいかぎりだよ…本当に)
そんな風に思っていた所為もあって思わず、跡部君達を見る目も不機嫌さが増してしまう俺。
それに気が付かない、青学、氷帝の両部長様達。まぁ南は気が付いてるみたいで、俺を見る目はかなりあきれた様子。
(も〜南まで…呆れないでフォローか何か入れてよ…。つーか跡部君達も無視するな…)
心の中で念を飛ばすように、思うけど…伝わるわけもなく…無情にも無言の時間が流れる。
その所為かもしれないけれど、自然と眉間に皺が寄る…。
珍しく眉間に皺を寄せる俺に…見かねた南が、ヤレヤレと肩を竦めて徐に口を動かした。
「あのなぁ〜本当にたまたま街で会って…何となくの流れで一緒に買い物をしてるだけなんだぞ千石」
駄々っ子に言い聞かせる保父さんの如く、南は俺にそう言った。
だけど俺は、その言葉に折れる事無く南に言葉を返した。
「そ・れ・で・も・なの。南の貴重な休日ゲットなんて…何が何でもズルイんです」
手にギュッと力を篭めて、俺は言い切ると南は天を仰ぎ、大きな溜息を吐いた。
だから返事と言うか…言葉と言うか…反応は遅れてくるものとばかり思っていた俺に、意外な伏兵から声が返ってきたのだ。
「そんな事を言っている千石の方が、南の貴重な休日を潰しているという事は頭には無いのか?」
「よっぽどお前の方が迷惑なんじゃねぇのかよ。ア〜ン?」
片やどこかの教師の様に堅い正論(モチ手塚君だけど)とかなり偉そう+自分も人に迷惑をかけてることを棚に上げた科白をどうどうと放ってきた跡部君。
両者の言葉は不意打ちに近く、俺は思わず言葉を詰まらせる。
が…俺は取りあえず言葉を紡ぐ。
「ああああ。もー…そんな事は良いだって。俺も混じるったら混じる。第一さぁ三人って合わないじゃん…グループ交際の基本は2対2って相場は決まってるじゃん」
「千石ソレ言葉間違ってるぞ。男同士で言う言葉じゃ無いとオレは思うんだけど」
引きつった表情の南の言葉を俺はあえて聞かない振りをして、この不思議な取り合わせの買い物を楽しもうと心に決めた。
勿論南を無視してるって事は、跡部君達の意思なんて完璧無視だよ…当然の事ながら。
(やっぱり俺ってばラッキーな男だよね)なーんて心の中でコッソリ思いながら、気乗りしない南の背中を押して俺は何喰わぬ顔で買い物に参加した。
退屈な休日はあっという間に、楽しい休日になったのは…やっぱりラッキー効果かな?
END
2004.7.9. From:Koumi Sunohara
| ★後書き+言い訳★ 久しぶりに千石と南のお題をUP。 短い小話程度なんですけどね。 ちなみに、山吹関連に置いてある未知との遭遇のその後のお話です。 単品でも読めますが…合わせて読んで貰うと、何故あの方々がと南が一緒にいたのか謎がとけるので…。 よかったら、見てやってください…暇つぶしにもなると思うので…。 |