謎の向こうは謎だらけ |
湿度も適当。気温も最適。
空には雲が少々。
そう本日は晴天だった。
まぁそんな事はどうでもよく…学校名でもさることながら…テニスでも有名な青学コト…青春学園のテニスレギュラー+αの面々は、和気藹々とストレッチなどを行っていた。
しばらく真面目に黙々とやっていた面々だったが…元よりお祭り騒ぎが好きな面子だったため…真面目な空気はあっという間に崩れ去った。
実にお約束的な展開である。
不意に上がった意見が一つ。
『レギュラーに戻ったのに…何故乾は“野菜汁”を作り続けるのか?』
青学レギュラー陣にとっては大変死活問題に関わる議題である。
現に乾作野菜汁…通称乾汁による犠牲者は後を絶たず…果ては、他校にまで被害が及んでいると言う事が実際問題起きている。
もはや内輪ネタで済む問題はとおに過ぎたと言った所なのである。
先ほども持久力を計る練習においても、レギュラー陣を覗くメンバーは乾汁の被害にあったばかり、いい加減慣れるはずの汁の味も…乾が毎度毎度バージョンアップさせてしまうため…廃人は後を絶たないしまつ。
故にこの乾汁を作り続ける乾貞治についての疑問は、何においても重要事項なのだ。
「そう言えば…乾はもうレギュラーに戻ったし…必要がないよねん」
遠くで手塚と竜崎顧問と何やら密談中の乾を尻目に、菊丸は眉間に皺を寄せてそう言った。
「そうだな〜マネージャーと兼任するほど、甘くないだろうし。乾にだって練習があるんだしな…何でだろうな」
大石も相方の言葉に、小さなうなり声を出しながらそう言うと…他の面々も納得気味に頷いた。
そんな皆同じ気持ちを崩すように…突然彼らの後ろから声が響く。
「そうだね…どっかのマネージャじゃ有るまいし」
ボソリと投下した不二の言葉は、地を這うような低さを帯びていた。
その直後暖かい時期なのに関わらず、冬将軍の到来か?と錯覚させる程の冷気が辺りに帯びている様な錯覚を…レギュラー陣に感じさせた。
もちろん面々が凍りついたのは言いまでも無いだろうが。
クラスメートである菊丸と…そのパートナーである大石は怯えた表情で不二を見て言葉を漏らした。
「「不二…目が開眼してるよ(にゃ)」」
ビクビクと怯える二人と、遠巻きに見てる凍り付くレギュラー陣の中で越前だけが何時も通りの様子でボソリと言葉を投下させた。
「まだまだだね」
お決まりの科白で一旦言葉を切った越前は、一斉に一同の目を向けられ…少し肩を竦めて続きの言葉を紡ぎ出した。
「そんなに気になるんだったら、直接乾先輩聞けば良いじゃナイスか?」
至極当然だろうと越前がサラリと言ってのける。
その言葉に、彼のストッパー役が最近の仕事と化している桃城が慌てた様に言葉を紡ぐ。
「ば…馬鹿だろ越前。そんな事直接聞いた日には…逆光眼鏡で見られたあげく…有無も言わさず新作乾汁を飲ませられるのが関の山だ」
あまりにも具体的な桃城の悲痛な言葉に、越前を始め…先ほどまで冷気を漂わせていた不二でさえ驚いたように桃城を見た。
「桃…もしかして…実行しちゃったのかな?」
幾分やんわりと…と言うより哀れみを含んだ口調で、不二が桃城にそう聞けば…。
桃城は乾いた笑いを浮かべて、コクリと頷く。
そんな中、海堂の顔色が著しく悪い…青ざめているというか…覇気が無いというか…とにかく顔色が悪かった。
凍り付くレギュラー陣の中その後輩の変化に気が付いたのは、青学の母事副部長の大石その人だった。
「どうした海堂…顔色悪いじゃないか。具合でも悪いのかい?」
柔らかな口調で心配気味に尋ねる大石に、海堂は歯切れ悪く「いいえ」と小さく答えを返す。
普段から賛同と拒否がハッキリしている後輩の歯切れの悪さに、大石は冗談交じりにとあることを尋ねてみた。
「マサカ…海堂も…同じ経験をしてるのか?」
大石が恐る恐る後輩に言葉を投げかければ、海堂は明後日の方向に視線を巡らせた。
何とも哀愁の漂った雰囲気である。
その物言わず、背中で語る海堂の姿に…(やっちまったのか)と心の中で合掌した。
何となく場の空気が自分言動の所為で悪くなったと察した大石は、何とか言葉を紡いだ。
「えっと…要するに…。知らない方が幸せな事もなるって事かな…謎は謎のままで」
何となく大石のその言葉に、一同は頷き…その話題がもう上る事が無かったとか。
結局皆自分の身が可愛いのである。
そして今日も…乾の近くで乾汁による被害者は後を絶たないのであった。
おわし
2005.9.21. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ 今更ながらこんなネタ。 もう乾さんがレギュラー復帰してどんくらい経ったと思っているやら(汗) しかも最近は乾汁も作ってないですし…時代に逆行中。 ともあれ、こんなお話ですが楽しんで頂けたら幸いです。 |