−薔薇− |
薔薇の花は美しい。
いえ…薔薇ばかりが美しい訳では無いですけど…。
花は実に美しいものだと思いますよ。
だけれど…花屋で見る美しい花々や庭園で見る花達は以外に厳しい道を通り美しさを披露している。
それは、たぐいまれ無い厳しい競争に勝ち抜く事。
言うなれば、間引きや剪定作業に生き残る競争。
故に気品と気高さが満ちているのかもしれませんがね。
わざわざ凛と生きている花々を剪定するのは少し哀れに感じるけれど…。
美しい花を咲かす為には、間引きが必要だ。
選別して、美しい花を咲かせる為には悲しきかな必要な事。
でも…それは…あくまで人間が決めた考え方。選んだ花が、必ずしも美しく育つとも分からない。
そればかりは、自然の理のみする所。
そう考えると、大輪の花を咲かせることも…人を育てるのにもその出来事はいえる事のように思えるんですよね。
少数先鋭を、完璧な土壌で育てれば…ほとんどの好確率で、すごい人材は出来る。
確かに効率的であるだろう…。
彼は…。
僕が想いを託そうと考える小さな…柱の芽は…。
どの道を選ぶのだろうか?
ある日の放課後、部活も無く…珍しく遭遇した手塚君を捕まえて僕は唐突に言葉を紡いだ。
「手折らずに枯れるのと…選んで生き残らせるのは…どちらが幸福な事だと思いますか?」
「でも…枯れるのも自然の定めなら…。」
「可哀想だと思わないのですか?」
僕は手塚君にやんわりと尋ねる。
彼は少し僕の言葉に考えながら、何かを考えながら言葉を紡ぎ出す。
「そこで何も残らないのなら…それは、本当に悲しい事だと思います。でも…この花が死ぬわけでは有りません。花は芽吹き…花開き…そして散りますが…。散った花びらは、土に帰ります…そして実を結んで…違う命を生み出す…。だから、俺は悲しい事だとは思わない」
真っ直ぐキッパリと言い切る言葉に…「成る程…そうですねと」僕は思わず簡単の言葉を漏らした。
そんな僕に、手塚君はキョトンとした顔で言葉を紡いできた。
「大和部長だってそうでは無いのですか?」
ちょっと以外だった言葉に僕は、表情を変えぬまま言葉を紡いだ。
「なぜ君は、そうだと思うのですか?」
疑問を疑問で返せば手塚君は、少し納得いかない表情で僕を見た後…。
「切り捨てて無いからです。たとえ…どんな人物で有っても…。部長は切り捨てる事をせず、そこに居ることを許してくれます。そして、意思の尊重を忘れない…凄いことだと俺は思います」
そう言って一旦言葉を締めた、手塚君が少し間を置いて再び言葉を音に乗せてきた。
「俺は…。部長の様に…同じとはいかないけれど…大石君と共に、そう言った部活を目指したいと思っています」
強い意志を持った瞳。
僕はそれ以上の言葉は無意味なのだと、彼の瞳を見て悟った。
手塚君の思い描くソレは、揺るぐことが無いのだと分かったから。
だから僕は確認の言葉を自然と口にしていた。
「結構…大変な事ですけど…それでも手塚君はやると…。そう言うんですね」
そう僕が言えば手塚君は「はい」と迷いの無い言葉で返事を返す。
それを見た僕は「頑張って下さいね」と言葉をかけ、手塚君を待って居るであろう大石君の方へと彼を促した。
手塚君は小さく礼をして、大石君の方へ走っていた。
僕はそんな彼の影が小さくなるまで見送ったのだった。
美しい大輪の花を咲かす道は…華やかのようで…茨道
人の育成もまた然り
僕の見つけた小さな柱の芽も…
あえて難しい道を歩むという
(ならば僕は、そんな先有る未来の苗木をひっそりと見守ろうか?)
そう思いながら思わず苦笑。
「僕にしてはちょっとばかり臭かったですね。さしずめ花咲か爺さんのでしょうかね」
人知れずそんな事を漏らしながら、僕は…新しく育むであろう苗木の行く末を見守ろうと心に誓った。
END
2004.6.2. From:Koumi Sunohara
☆言い訳と言う名の後書き☆ 珍しく大和部長で書いたんですが…何やら…臭いのだか、不思議なのか分類不明なものが出来上がりました。 しかも…オチ無し山無し…です。 書いている内は麻痺していたのか気が付かなかったんですけどね。 読み返すと…かなり…大和さんが可笑しいかな?(汗) 次回が有れば、大和部長素敵スナフキン化に心がけたいと思ってます。 |
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