芸術よりも食い気です |
皆様に質問です。
冬の…(まぁ暦の上では春かもしれないが…まぁ冬って事で)2月に北の地…札幌に行ったとしたら…。
一般的に考えて目指すは一つだろう…。
それは言わずと知れた…札幌雪祭り。
北海道のイベントの中でも有名すぎるイベントだ。
余談であるが、ツアーもホテルの値段も…この時期なると一気に値段が張り…飛行機なども取りにくくなる程だ。
それ程までに有名な行事である。
ココに一人(正確には…その家族と言うのが正しいのだが…)…その常識を覆そうとする者が居る。
その名は、赤澤吉朗。
言わずと知れた聖ルドルフテニス部の部長を務める…れっきとした学生である。
その彼が…一般的な常識を覆す事になるのだが…。
それは追々出てくる問題なので、今は取りあえず触れないでおこうと思う。
赤澤が未だ北の地に降り立っていない…某日のルドルフ学園内。
赤澤は、家族で北の地に旅行に出ることを仲間達に報告していた。
すると…。
「余裕ですね受験生」
かなりの嫌味を加えて観月は赤澤に即答で答えた。
観月の毒に馴れきっている赤澤も…流石に、勉強のこととなると少しばかり心配事が有ったのか…思わず「ウッ」と言葉を詰まらせた。
そんな赤澤を傍観者として眺めていた柳沢と木更津も苦笑を浮かべて両者を見た。
((嗚呼…赤澤可哀想)だーね)
心の中で毒を吐かれまくる赤澤に合掌しながら、部長とマネージャーのやりとりを傍観する柳沢と木更津。
その間にも、勿論観月達の会話は進んでいる。
言われっぱなしの赤澤は、少し唸りながら珍しく観月に反論すべく言葉を紡ぐ。
「一応俺推薦枠内だし…点数もそんなに悪く無いし…学校側にもちゃんと言ってるから大丈夫だと思うんだが…」
モゴモゴと口ごもりながら言う赤澤に観月は鼻先で笑う。
「はん。これだから志の低い人は困りますね。確実では無い不明確な事柄に縋るほど詰まらないものは有りませんね」
腕を組み赤澤を一瞥する観月は、そう言い切る。
流石にその言われ方は、赤澤も気に障ったのか…憮然とした表情で観月を見ながら文句を紡ぐ。
「そう言ったって、家族で決まったもんは仕方が無いだろ」
「ほぉぉぉ〜。言うようになりましたね赤澤」
ワントーン低くなった観月の声音に、赤澤はビクリと体を強張らせたが何とか言葉を紡ぎ出す。
「でもよ〜。札幌何だぞ…滅多に行けない…しかも冬の札幌なんだぞ…。それでも観月は駄目と言うのか?土産だって買ってくるのに」
情けない声で紡ぐ赤澤の言葉に、観月の眉がピクリと動く。
「札幌ですか?」
聞き返す観月に、赤澤は軽く頷いた。
「ああ。何か家族で懸賞に当たって、札幌にな」
そう呟く赤澤の援護をすべく、傍観していた木更津が不意に言葉を紡いできた。
「この時期って雪祭りが有るから、実費で行くと高いんだよね。良かったね赤澤」
「やるだぁ〜ね。俺は味噌ラーメンセットが土産が良いだぁ〜ね」
行き先を聞いた柳沢と木更津は、楽しげに赤澤が札幌に行くことを喜び…ついでにお土産の催促なんかしたりした。
それに対して赤澤も嬉しそうに「任せろ」とか言いながら、二人に応えている。
その様子を見た観月も、険しい顔を少し緩めて…ヤレヤレと肩を竦めて言葉を紡ぐ。
「まぁわざわざ寒い時期に寒い所に行く人の気がしれませんが…。国際的に有名な雪祭りに行くというので有れば…悪くは有りませんね。んふ。まぁ〜精々」
何やかんや有りつつも、赤澤は仲間に見送られ…北の大地に赴くこととなったのだ。
そんな事が有ったのは、本当に少し前の事なのだが…赤澤は一同の予想と裏腹に、雪祭り会場と少し離れた場所…其処に居た。
雪祭りの臭いを少し残すような、ギネス記録に挑戦している雪だるまが置いているが…此処は明らかに雪祭り会場では無い。
しかも余談で有るが、某テレビ局のイベントをする会場である。
そこでは、有るイベントが行われていた。
そのイベントを紹介する前に、思い出して欲しい事が有る。
さて…赤澤の好きなモノは皆さん覚えているだろうか?
そう“カレー”である。
何に置いても、カレーが好物である有る彼はハッキリ言って雪祭りになど興味は無かった。
だからといって、雪祭りを見ない訳では無い。
有名と言われている祭りでも有り、関東では滅多にお目にかかれない大量の雪と…雪と氷のオブジェは雪のない地方の人間にとっては圧巻としか言いようが無い雪と氷の祭典は少しであれど興味は有るというモノだ。
でも彼はそんな事よりも、惹かれるモノに出会ってしまった。
【カレー博…】
読んで字のごとく札幌ないし…北海道の美味しいカレーを集めた、カレーの祭典である。
勿論カレー好きの赤澤が、このたまらない祭典を逃すはずも無く…雪祭りがメインだったはずが…カレー博メインになったのであった。
しかも…仲間からのお土産リストとは異なる、札幌発信スープカレーセットを買ってきた赤澤が…全員から非難の対象にされるなど…この時の彼にはしるよしも無いだろう。
赤澤家の雪祭りは、そんなこんなでカレーによって幕を下ろしたのであった。
おわし
2004.10.20.再録 From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ |
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