相反する故に馴染むモノ


正反対のモノとは上手くいかない

甘さと辛さは対極のように

けれど反するが故に馴染むものもまた

案外あったりする


かなりお人好しの長馴染みというか…腐れ縁の河村意外、俺に構うのは親ぐらい…そう思って疑っていなかった。
だが…実際は少し世の中は違うらしい。

半ば騙されて入部した事になっている、このテニス部は…今までの俺の時間を狂わすのに十分な要素が多すぎだ。
特に、何時もヘラヘラ笑っているオレンジ頭の彼奴を筆頭に…。


嫌みな程明るいオレンジの頭は、何を考えているのかよく分からない。
不良と呼ばれる俺にすら、柳に風の様にのらりくらりとかわし…少し空いた透き間から不法侵入者のように入ってくる。
そして何より、そいつは意味不明な行動をとるのが日常と化している。

そんな日常化しつつある現状に、流石にやりきれない俺は部長だという地味な南健太郎に声をかけた。

「お前らといい…千石といい何だって俺にかまう?ほっとけば良いじゃねぇの」

不機嫌を隠す事の無い俺は、そう口にした。
そんな俺を別段気にした様子の無い、南は少しだけ首をかしげながら言葉を紡いだ。

「かまうって…亜久津は俺達のテニス部の仲間だからな。そう言う意味合いで俺や部の面々はかまううけど」

そうサラリと臆することなく言うそいつに、俺は(案外此奴は厄介な奴かもな)と思いつつ、其奴の次の言葉を待つことにした。
すると其奴は、やはり気にした様子は無いまま言葉を紡ぎ出す。

「でもな〜千石に関しては、違う意味で亜久津に関わってるんじゃないかな。と言うか…気に入られてるのが有ってるかもな」

言いながら、少し可哀想なものを見るような目で俺を見た南の横に居た長身の男もこぞって言葉を発した。

「気に入られたら最後だぞ」

其奴は地味な部長だという南健太郎の相方の男だった。
そんな相方の言葉に、南はフォローする様に言葉を紡ぎ出す。

「ちょっと困った…いや…かなり困った奴だけど、根は悪い者じゃ無いだけ質が悪いんだよな」

「そうそう。人の嫌だって事をする癖に…何だか憎めないから…腹が立つんだよな…自分に」

俺の事を半ば忘れた様に、地味な二人組は話を咲かせる。
話している内容が、かなりお人好しで…幼馴染みの彼奴の顔を思い出す。

(此処に河村が居たら此奴らにかなり馴染んでいるんだろうよ)

少しぼんやりと考えていると、南と東方の話はまだ続いてやがった。

「そう考えると亜久津も…千石と似てるのかもな」

「ああ…そうとも言えるかもな」

「なんだと?」

睨むように見やっても、気にしない連中に少し無駄だがやっぱりにらみつける。
だが、相変わらずな南は気にする様子は無い。

「だってさ。本当に嫌なら此処に来ないし…俺らが声かけたって無視したり…武力行使で何とかするだろう?」

南はあっさりとそんな言葉を口にした。
俺はその言葉に何とも言えない気持ちになった。

(確かにな…俺らしくもねぇ…嫌なら壊しちまえば良いじゃねぇの)

俺のことなど、気にしないマイペースな地味sは勝手に言葉を紡いでやがる。

「意外にさ…相反してるモノって相性が良かったりするよな。なぁ南」

「そうそう。あんこに塩を少し入れると甘みが増すしな…西瓜に塩とかよく言うし…少しのスパイスは良いんだぜ」

「ああ?貴様ら俺を野菜やあんこと一緒だって言いてぇのかよ」

「いや物の例えだ。けどな、亜久津が嫌じゃなければ、ココに居れば良いって俺は思うんだ。元々、ウチの伴爺が無理に引っ張ってきただろ?俺としては居てくれた方が助かるけど、決まるのは亜久津だからさ、無理時はしないぞ」

手をヒラヒラさせて、紡ぐ南の言葉は何処かお人好しな河村に少し似ているような気がした。

(ああ…それでか。ここが、割と嫌じゃねぇのわ)

らしくなく、不意に出た答えに俺は眉をしかめる。

「悪くねぇから来てる。そんだけだ」

俺がそう短く答えると、地味sは「そうか」と意外に短い言葉を俺に寄越し、部員の練習に合流して行った。

「案外ここも悪くねぇな…」

山吹の連中を横目にみながら…俺は人知れずそう呟いた。


2008.5.26. From:Koumi sunohara

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