親友
        −彼と俺の境界線−


人とつき合う境界線は、有る意味沢山存在するだろう。
例えば『家族』。この枠の中なら親…兄弟…親類などと、家族自体でも枠組みがある。

だから必ず人とつき合う時には他人であれ、何であれ…枠組みが用意されている。
恩師に恋人…クラスメート…部の仲間…悪友に親友。
あげればきりが無い。
それだけ人は色々な境界線を引きたがるのだろうが。

俺は自他ともに認める、女の子好き。と言うか女の子の存在自体が好ましいって感じる。
まず柔らかい雰囲気、どことなく甘い感じ…思わず抱きしめてしまいたくなる存在。

だけど俺は最近困ったことに気が付く。
(南のポジションは俺の中で何処なのだろう?)という疑問が頭から頭から離れないのだ。
部活の仲間であり、部長だし…俺の面倒も見て…仲良しさん…。
友達と言ってしまえば、何か希薄な気がするし、部活の仲間って言うのも…あっているけど何か足りない。

実にポジション付けに困る間柄。
いっそうのこと、ポジション付け何てしないで…南は南で良いって思うけど。
悲しきかな俺は、自然と人とつき合うときに線を引いてしまう質なのだ…だから困るって訳。



んでだね…あまりにも、どうして良いか分からなくて…後腐れ無く話を聞いてくれそうな亜久津を捕まえて、事の経緯を話すことにしたんだ。
聞いていた、彼奴はいとも簡単に言葉を紡いだ。

「親友っやつで良いんじゃねぇか」

あっさりと言われた言葉に、何故か俺の脳味噌は理解するのに時間を要した。

「“シンユウ”…心友?」

思わず呟いた言葉は、かなり間の抜けた感じだった。
その所為で亜久津に突っ込みを入れられるなどとは、流石に思わなかったけど…。

「最も親しい友の方だろうが」

呆れた調子で亜久津が突っ込みを入れてくれる。何だかんだ言うながら面倒見の良い、不良さんだと思う。

「嗚呼…親友ね」

「ったく。音だけ聞いたって…“心友”って出てくる程アホだとは思わなかったぜ」

心底呆れ顔の亜久津は、“アホ”と言う言葉を強調しながらそう言った。

「だってさ…親友なんて何だか微妙な気がしない?女の子達だって親友よねとか言いながらドロドロしてるしさ…良いイメージがね」

溜め息を吐きながら、好きで止まない女の子達を思い描きながら俺は言う。
そんな俺の言葉に、亜久津は鼻で笑い飛ばし相変わらず鋭い言葉を吐き出した。

「はん。てめーは小学校の国語からやり直しだな」

「それは、凄く心外だよ。第一親友ってあんまり言葉の響きが良くないじゃん。せめて、幼馴染みポジションだったら良かったのにさ」

ブチブチ文句を言う俺に、亜久津は肩を竦めて言葉を紡いだ。

「てめーな…本当にアホだな。昔からの馴染みじゃなけりゃ…幼馴染みじゃねぇ。悪さや馬鹿をやる訳じゃねぇなら悪友とも言わねぇ…クラスメートでも…部活仲間じゃ納得いかねぇつーんなら…親友以外の言葉は無いんじゃねぇのか?まぁ…一方通行の親友だったらお笑い草だけどな」

凄くまともな亜久津の言葉に、俺は目から鱗もんの気分だった。

「亜久津…本当は凄く良い奴?不良なんて嘘でしょ」

だから思わず本音の言葉を告げれば、彼はまた呆れた顔をした。

「やっぱりアホだななテーメはよ。不良にだって色々あんだよ馬鹿が」

「でもさ…まぁ亜久津が不良だって言うならそうだし…。言ってる意味も分かるけどさ…」

うだうだと煮え切らない言葉を、途切れ途切れに言ったなら…その言葉は亜久津によって遮られることなった。

「そんなに気になるなら、本人に聞いてみな。お前の求める答えつーのは彼奴が出す…俺なんかに愚痴を零すより断然良いと思うぜ」

「やっぱり良い奴だよね亜久津。太一君が慕うわけだね」

「ふん。たんなる気まぐれだ」

俺の言葉に少し照れたような亜久津はそう言い捨てて、俺に振り返ることなく去っていった。

亜久津の居なくなった後俺は…先ほどの事を考えてみた。

南と俺の関係は他者から見れば親友かもしれない。
その答えは…亜久津の言う通り南が教えてくれるのだろう…。
そう思いながら、少し不器用な悪ぶる友人に少しだけ俺は感謝した。


おわし


2005.6.21. From:Koumi Sunohara




★後書き+言い訳★
何となく南と千石の間にあるものが友人以上で…部活仲間で終わるには…どうかな?
という疑問より生まれた小話です。
元より拍手用にしようと思ったのですが、今回はなんとなく此方でUPしてみました。
山無し…落ち微妙な小話でしたが…楽しんで頂けたら幸いです。



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