向日葵
一途な想いと好きという気持ち


好きな人が居ます


同じ学年で素敵な人です


まるで…王子様が現れたのかと想うほどの…


でも最近少し分からなくなるんです


本当に好きなのかって…


憧れであって…恋では無いのか…


そんな想いが交錯するのです


でも…想いが…曖昧過ぎて…


自分でもよく分からないのです



晴れた青空。絶好のテニス日和。
だけど今日は女子テニはミーティングだけで、早く帰れた日。

私は何だか、寄り道したい気分で、校内に有る花壇に立ち寄った。
すると花壇の花々は凜としていた。
咲き誇る花は、日の光を浴びて葉がキラキラ光って見えてととも綺麗で、思わず私は見入っていた。

(本当に綺麗…葉っぱが反射してキラキラしてる…見ていて飽きないよ)

時間を忘れて花を眺める私に、不意に頭に小さな影が出来て…。

(あれ?影?誰か来たのかな?)

私は思わず顔を上げた。
すると…。

「今日和、桜乃ちゃん。真剣に花壇見てるけど何か素敵な事でも有ったのかな?」

柔らかい笑顔で不二先輩はそう声をかけてくれた。

「こ…今日和。えっと、何となく花を見たくなって」

私は声をかけられる何て、思いもよらなくて…少し驚いたけれど、しどろもどりになりながらも言葉を返した。
それが好をそうしたのか、不二先輩の類い稀な心くばりのお陰で、私は苦もなく会話や他愛のない話などに花を咲かせていました。



「憧れと好きは、良く似てるよね」

「憧れに…好きですか?」

聞き返す私に、不二先輩は笑って頷いた。

「そう…憧れも好意だからね。好きとは違うけど、勘違いしがちな人が多いなぁ〜と最近思ってね」

サラリと事もなげに口にした。その言葉に何だか引っ掛かりを覚えた私が真剣に見つめると不二先輩は、「なーんてね」と笑って言った。
私は何となく納得と言うか理解出来なくて…見返すと、先輩は独り言の様に言葉をポツリ、ポツリ口にした。

「向日葵ってさ、日の光を一心に受けようと一途だけど…。それは太陽に憧れているからかな?って思ってね」

言いながらまっすぐ伸びる向日葵を見ながら先輩はそう言う。私も同じように花を見ながら言葉を紡ぐ。

「憧れでも…真っすぐな気持ちは、素敵な事だと思います。憧れでも好意に変わり無いと私は思います」

私の言葉に不二先輩は少し目を丸くしたけれど、何時もの表情にすぐに戻り少し笑いを漏らした。

「ふふふふ。そうかもね。そうだ…桜乃ちゃんはどうなのかな?あの花同様に、そんな気持ちになるのかな?」

何処か見透かしたような、意味有り気な言葉に、私は思わずドキリとした。
そして、黙ってしまった私を不二先輩は覗き込む様に心配気に見てきました。
私は益々どうして良のか分からなくて、益々悩んでしまい、思うように言葉が出なくて…結局黙ってしまった。相変わらずダンマリな私に、先輩がまたまた言葉を紡いでくれた。

「ゴメン、ゴメン。困らせたくて言ったんじゃないんだけど。つい…ね。好奇心が疼いちゃったんだ」

゛少し困らせちゃったかな?゛と小さく笑ってそんな言葉を口にした。
私はやっぱり何と答えて良いか分からなくて、首を横に振る事しか出来なかった。


そんな私の心を安心させるように、不二先輩は不意に私の頭を撫で、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「余計なお節介かもしれないし…桜乃ちゃんを困らせてしまう事かもしれないけどね…」

そこで一旦言葉を切った不二先輩が、まっすぐな目で私の目を見て、言葉の続きを口にした。

「君を困惑させてしまっただろう…先話した、僕の話覚えておいて…損は無いよ。君の言う通り、憧れも好意の一種だから分かりにくいだろうけれど…必ず違うはずだから。ああ…でも…僕が言ったからって、急ぐ事は無いよ」

意味深な言葉で締め括ると不二先輩は、普段のどこか表情の読めない優しい笑みを浮かべると、クルリと私に背を向けた。
歩みを一旦止め、゛これは君にとって大事な事だから…君の心が決める事だからね゛先輩は呟くようにそう口にすると、今度こそ歩を進めて行った。


私はやはり、呆然とその小さくなってゆく背を眺めるしか出来なかった。
それに、付け足された言葉がやけに胸に染みる気がして…その場を動けなかった。
遠ざかる先輩を私はただ眺めていた。



その後も、しばらく私は、誰も居ないその場に立ちつくした。
少し想う事も有ったし、不二先輩の言葉に胸がザワリと騒いだ所為かもしれないけれど、私はそこで、先輩が言うように自分の心と向き合ってみようと思ったかもしれない。
だから、私は考えてみようと思って…瞳を閉じたの。


すると、色々な想いが溢れてきました。
リョーマ君への私の想い。
それと同時に、胸に燻るリョーマ君が本当に好きなのか…憧れなのかと言う…言い知れぬ不安と…ある人への想い。
その人を想うと暖かくなる心。
まるで、太陽の光の様に優しく暖かい気持ちをくれる…その人…菊丸先輩への想い。

それに、菊丸先輩を見るとリョーマ君の時に感じる感情と異なる気持ち。
ドキドキとする期待と不安。
胸に抱く、切ないような気持ちに、胸に広がる暖かな気持ち。
どれもリョーマ君を想う時には感じない気持ち。
だから…だからこそ、私はこの想いの正体は分からなくて。
常に胸に燻る存在だった。


だけど、不二先輩とお話して…自分と真っ直ぐに向き合ってみて。
そして私は一つの想いに辿り着く事が出来たような気がした。

(ああ…そうか。私は…)

落ち着けた心の中で気がついたのは、リョーマ君の時とは違う菊丸先輩への特別な気持ち。
だけど…この想いは気がついたばかりで、まだ私自身でも理解しきれない面が沢山有って…どうして良いか分からない。
それに普段なら、すぐに朋ちゃんに相談するのだけど…。

今回は…今回だけは…。

何だか今回は相談する気にならなかった。
それは…まだきっと、私自身が自覚し切れて居ないのも有るのかもしれない。
でも、本当は…正面きって自分の心と向き合いたいのかもしれない。

誰かに流される様に想うのでは無い想いではなく、今度は焦らずに見極めたいと思うから。ちょっぴり、不二先輩の受け売りだけれど…。
だけど、この想いに気がついたら、不意に心が軽くなるような気がする。
それに不二先輩との会話も助けてくれたのかもしれない。

そうしたら何だか急に話題に出ていた、向日葵が見たくなって、私は無意識の内に花壇に目を向けていた。
花壇には咲き乱れる、色とりどりの花々。

(綺麗…)

そんな柔らかな気持ちになりながら、私は目的の花を見る為に花壇に目を走らせる。
すると…。
真っ直ぐ天に向かって伸びる茎と太陽の恵を一心に受けようと葉を広げる、向日葵が私の目に入った。
キラキラ太陽の陽を浴びて、その子は何だか私には眩しく見えた。


あの陽に向かって真っ直ぐ見つめる…あの花が散る時…

その時まで…

今は未だ…ひっそりと貴方を思うと

そして、それまでに自分自身で見極める事が出来るように…

陽に首を一心に向ける向日葵のように…

一心に見つめていこうと…





私は向日葵を見ながら、ひっそりと想った…。


END

2004.4.19. From:Koumi Sunohara


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