線香花火
夏休み、真夏の太陽が沈みかけてるその時間、クーラーのよくきくコンビニで夏の風物詩と目があった。(正確には見つけたんだけど…)
やっぱ買いでしょ(笑)
急いで手にとり頼まれた買い物といっしょにレジへと急いだ。
「たっだいまー!」
「おかえりー、雑誌買ってきてくれた。」
「うん、ホイ。」
玄関まで(雑誌を)出迎えてくれた姉ちゃんに袋を渡す。
「サーンキュ。…って何これ、花火?」
「ムー、いいじゃん別に。」
「駄目なんていってないじゃない。もしかして一人でするつもり?」
「明日、友達誘ってすんの!」
アッカンベーで返す。ポカッと軽く殴られてかわいくないとおまけ付き。
「そんなめんどくさいことしなくても私が付き合ってあげるわよ。手持ち花火なんて久しぶり♪」
「えっ…」
素直にでた否定の言葉にまたも頭を殴られた。
「こんな綺麗なお姉さまと花火ができて感謝しなさい。」
「どうせならかわいい彼女としたいにゃ…」
「作ってから言いなさい。片想い君(笑)」
ボソッと呟いたその言葉は冷ややかな目線と止めをさす一言で返された。
っていうかなんで知ってんの…
なんてこと不適な笑みでこっちを見てる姉ちゃんにもちろん聞けるはずがない…
「さっさと夕飯食べて花火しましょ。」
「ホーイ」
もう逆らえません。
夕飯食べてベランダへでるといい感じで薄暗くなっていた。
うん花火にはもってこいだにゃ(笑)
神棚の下で見つけたロウソクに日をともして花火セットを開ける。
こういう場合なぜだか不思議に線香花火というものは後回しにされる。
姉ちゃんたちに言わせるとそれが通の楽しみかたらしい。
花火を一本手にとって火をつける。赤や緑の火花が飛び散ってとても綺麗で…隣にいるのが大好きなあの子ならいいのにと思ってしまう。
でも桜乃ちゃんだったら普通の花火より線香花火のほうが似合いそうだにゃ。
まっこれはこれで楽しいからいっか。
たまには家族で遊ぶのもいいもんだ。
なんて浸っているうちにだんだんと花火は底をついてきた。
残ったのは線香花火だけ。
ゆっくりと火をつける。
パチパチと勢い付いた火花は次第に小さくなって静かに揺れる。
でもちょっとの風ですぐに落ちてしまうのが悔しい!
そしてなぜだか桜乃ちゃんを思い出す。
線香花火のように弱々しくて儚げで…でも真っ直ぐで強くって…
君に似てるよ…
そんなことを考ていたら自然と口元が緩んで気持悪いと姉ちゃんに怒られた。
「ねぇ、英二知ってる?線香花火の玉を最後まで落とさずに終らせたら願い事が叶うらしいのよ!」
三本目の線香花火に火をつけようとしたら突然姉ちゃんが言う。
「にゃにそれ?」
興味なさげ聞き返す。
「私も人から聞いたんだけどさぁ…でもなんかロマンチックじゃない?英二の恋も叶うかもよ。」
だから姉ちゃん、なんでそんなに楽しそうにゃの…。
願い事かぁ…
自分の恋ぐらい何も頼らず叶えたいよなぁ…
結果はどうあれ、人の気持ばかりは線香花火にだってどうにもできはしないと思うけど…
なんて姉ちゃんに言ったら間違いなく殺される。
ハァー…
ため息といっしょに火をつけた。
でもせめて一つぐらいは願おうか…せっかくだしね(笑)
静かな風で左右に揺れる線香花火に君の長く揺れるみつあみを重ね合わせて俺は願った。
今、君が…俺の大好きな笑顔で笑っていてくれますように…
線香花火は最後まで静かに消えた。
END
From:Waka Kagura