戦 闘 開 始
−勘違いから発展する戦い?−




外に出れば、朝特有の爽やかな日差しが眩しい。
さらに雀などの鳥たちの囀りが、響くのも朝の光景には必ずある事柄。

何時もと変わらない朝が訪れ、何時もと変わらない面子と顔をつき合わせる。
それはごくごく平凡で…。違える事無い日々の情景。

そう…氷帝学園に在学している宍戸亮その人も普段と変わらない生活をおくっていたのである。
勿論朝練のために何時もの時間に起きる事や、クラスメートとの他愛のない話も何時ものこと。

向日や忍足達と、何気ないくだらない話題で花を咲かせるのも何時ものお決まりパターンであり、朝練で小腹の減ったお腹を満たすためのお菓子やパンを食べるのも何時も通り。
無愛想だが、実は先輩思いの不器用な後輩が空気のように居るのも常のこと。

そしてその中に、ニコニコと仏の微笑の様に穏やかに先輩方のやりとりを聞いている後輩が居る…。

その筈だったのだが…その良き後輩鳳長太郎の様子だけが、何時もの状況と違っていたのだった。


和みムードの雰囲気をぶち壊すように、荒々しい足をが場を響かせた。
そうかと思うと、その騒音は宍戸達の元に止まり影を作った。

「非道いですよ宍戸さん」

突然…和気藹々とした和やかムードをぶち壊すように、穏和な人で有名な(?)鳳長太郎が声を荒げながら、宍戸達の会話に割り込んできた。

「…」

言われた宍戸は意味も分からず、黙り込み…向日に至ってはポカーンと間抜け顔で後輩の豹変ぶりを眺めてた。
曲者で有名な忍足だけが一人冷静に、おかんむりの後輩に言葉をかけた。

「何や藪から棒に。何時もの穏やか長太郎君はどないしたん?」

「ともかく…宍戸さんが悪いんです」

頬を盛大に膨らませて、鳳が言う。
そんな温厚な後輩の豹変ぶりに、向日は不思議そうに口を開いた。

「何だよ長太郎。取りあえず言ってみそ?そうじゃねぇと、宍戸のヤツなんて反応して良いかわからねぇじゃん」

まったくもって正論を言う向日に、鳳は「そう言えばそうですね」と何時もの言葉を吐かずに…藪から棒の口調で言葉を紡ぎ出した。

「昨日とあるお店で宍戸さんに接客されたんですけど…それがもう酷いったらないんですよ。流石にアレはいただけません」

憤慨をあらわに紡ぐ言葉に、宍戸は顔を顰める。

「あのな〜人違いじゃねぇのか。第一バイトなんか俺らしてねぇじゃん」

盛大な溜め息を吐きながら、ごもっともな科白を紡ぐ向日に…鳳は普段見せた事の無い鋭い眼光で言葉を紡ぎ出した。

「いえ…アレは確かに宍戸さんでした。だって俺、名前まで確認したんですもん間違い有りません」

グッと拳を握りしめて言う鳳。
その言葉に一気に引く先輩s。

((名前を確認って…スパイか…ストーカーかよ))

宍戸と向日は力説する鳳に呆れを通り越して、呆然とした顔をで後輩を見つめる。
そんな宍戸・向日ペアを余所に、氷帝のくせ者事忍足のみが冷静に鳳に言葉を返していた。

「あんな…力説すんのは構わへんけど…。宍戸と岳人が完全に呆れてんで」

忍足が溜め息混じりに、宍戸と向日を横目に鳳に言うが…完全に力説モードに入っているこの後輩は一向に堪える様子は見受けられない。有る意味凄い神経の持ち主である。

「まぁ…俺が何言うても…鳳は聞く耳持たへんちゅーことやね」

ヤレヤレと肩を竦めて言う忍足は、「どないしようか?」と目線を呆然としたままの二人に向ける。向けられた忍足の視線に、宍戸達も少し溜め息を吐いて「仕方がないつき合ってやるか」とポツリと返した。

滅多に文句の言わない後輩に、この日宍戸を始め先輩一同は鳳の愚痴につき合ってあげることにしたのである。

勿論途中で冷静になった鳳が、平謝りするのは別な話である。

しかし…後日違う先輩に対して同じ事を繰り返す鳳を、見ることになろうとは…。
この時のメンバーは思ってもみなかったのであった。

そして…真面目な人間ほど、勘違いすると怖いのだと痛感するのである。


おわし

2005.10.22. From:koumi sunohara


★後書き+言い訳★
ちなみにコレは有る意味実話混じり…。
店員の宍戸さんに不快感を抱かされたのがネタですね。
まぁ宍戸さんが怒ってると思いこんでやり過ごしたんですけど…。
長太郎はおかんむりです…さて皆様の長太郎は温厚でしょうか?
ともあれ楽しんで頂けたなら幸いです。
2005.10.1web拍手掲載作品です。


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