皇帝の悩みの種




突然だが、俺の名は柳蓮二と申すものだ。
僭越ながら立海大付属テニス部の参謀と呼ばれている、ごくごく普通の学生である。


前置きはさておいてだ…。


我が立海大付属テニス部には、部長幸村精市が作った掟というか…今月の目標なるものが存在する。
それは、あくまで部長が不在で…少し弛みがちな部活動に目標を持たせる意味を持ち…誰も反論する者など居ない。
寧ろ有り難いものである筈なのだが…。


少々問題…と言うか…一部で悩みの種になっているのが現状なのだ。
その悩んでいる人物と言うのは…部長代行を努める弦一郎…その人だ。
その弦一郎は非常に悩んでいるようだ。


全国区にして、皇帝と呼ばれるそんな男である弦一郎が幸村の提案した目標に頭を悩ませいるのだ。
別に難しい内容では無く…寧ろ言うなら…そう…簡単な目標。
少し注意すれば出来るそんな目標。

だが…その幸村の打ち立てたとある目標は、未だに達成される事も無く…何ヶ月も繰り越されるという…実に不名誉な事態が起きているのだ。
その現実が、実直なこの弦一郎という男を悩ませているという事なのである。


ちなみにその目標なのだが…。


『スリルより…守ろうマナー君の腕』


明らかに何処かの交通標語のようなこの目標。
しかも誰か一人をピーポイントでついたような目標だ。
無論…自称二年生エースの切原赤也…後輩に向けてのものだ。


そう考えると、幸村は言っても効果のない赤也の目に余る行動を…連帯責任の力を使ってどうにかしようとの算段なのかもしれない。


だが、王者立海の部長だが…幸村の読みは少しばかりズレていたのだ。
あの糸無しの凧の様な赤也が幸村の目標ぐらいで大人しくなるはずも無く…堂々巡りの繰り返し。
それで益々弦一郎の血圧を上げる。
弦一郎に怒られた赤也は、更に問題を起こす。
でまた弦一郎が怒り…悪循環を生み出すばかり。


この目標を立ててから、弦一郎の苛立ち度が5割増し。
大分部活にも影響が出始めているのだ。
まったくもって迷惑極まりない。
ある意味外の敵より内の敵の方が問題なのかもしれないと…最近俺は思い始めた。


(ともあれ、弦一郎の胃に穴が開く前に何とかしてやらねばなぁ〜)


とそんな事を思ったのだった。




皇帝陛下の悩みの種は尽きないのかもしれない。



おわし



2004.10.20.再録  From:Koumi Sunohara 




★後書き+言い訳★
2004.8.23.web拍手に掲載していた真田+幸村の小話の柳視点のちびっとした裏話です。
もしかしたら、web拍手で読んで下さった方が居るかも知れませんが、web拍手撤去に付き此方におろしたものです。
かなりマイペースなマスターのキャラが乾臭いのは幼馴染みの所為にするとして…。
本当に真田のフォローが出来ずに「苦労をかける」と思わず言いたくなりました。

ともあれおつき合い頂有り難う御座いました。


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