ふとした切っ掛けで始まる |
山吹テニス部には、人当たりが良いと言うか、人の好い男が居る。
その名は南健太郎。
勉強、運動、そこそこ出来、ルックスだって悪くない。まぁそんな青年であるのだ。
兎に角、突然だが南健太郎の趣味を皆様ご存じだろうか?
テニスやってるからスポーツ何て、そんな安直なご意見が多く出るだろうか?
彼の趣味は切手収集である。
中学生のスポーツをする健全な少年にしては珍しい、結構な渋い趣味である。
確かに、切手と一言で言っても奥が深いのは分かる。
何気なく貼られている切手が物珍しいものや、綺麗な物であったら、何だか得した様な気になるだろう。
そう言った些細な理由やたまたま彼の父親が切手収集をしていた事から、南は気が付けば趣味が切手収集になっていた。
何分中学生…遊びや部活にお金がかかり、趣味に大いにお金をつぎ込める人間はそんなに多くは無い。
ゲームが好きだからと言って、全てのゲームを返る中学生はきっと少ない。
ブランド品が欲しいと言って、真っ当な方法で沢山持つのはさらに一握り。
必ず親や何処かで無理が生じる。
けれども南の趣味である切手収集。
これは意外にお金がかからない。
未使用のみを集めるなら、結構なお金が必要であるが…そもそも切手自体、値段は小銭買えるものがほとんどだ。
そう言った点でも無理しなくても良いし、使用済みならば結構余所から貰えたりする。
即ち元でゼロ円だったりする。
故にお金があまりない学生でも、軽い趣味ぐらいで切手収集ができるのだ。
収集をする上で、色々なルールを持つものが居るが…この南健太郎は別段決まったルールをもっている訳では無かった。
使用済みだろうが未使用だろうが問わず、ファイルに綺麗に収集する。
日本のみならず、海外の切手も大げさでは無いが地道に集めている。
一人で貯めるとなると、時間は非常にかかるのだが…南は結構恵まれていた。
それは、彼の胃痛と頭痛の原因であるが、部のエース千石の存在である。
各方面にも何気に顔の利く千石は、南の趣味を知ると…。
「南〜地味だね〜」
としみじみ呟き。
「よし任せなさい」
と勝手に完結し、色んな人にさりげないアピールをした。
ともあれ千石の宣伝の効果で、南の元には大量の使用済み切手がやってくるようになった。
物を大事にする性分である彼は、持っている使用済み切手を貰っても断る事も無くとりあえず貰っている。
そんな事をすれば、どんどん溜まっていくのは目に見えるわけで、かといって捨てるのもしのびない。
そこで、不意に彼は思い出す。
【使用済み切手のボランティア】
(空き缶みたいに、何か貯めたら何処かに還元される筈だったような)
そんな事を思いながら、彼は丁寧に切手の周りの余白を少し残してコツコツと貯める事にした。
後日溜まった、切手をボランティア団体に提供するのだが…この事が南健太郎と言う男のちょっとした生活の変化を生むなど思いもよらなかったのである。
つづく?
2009.3.11.From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★
南勝手にボランティア部への道です。
基本は南部会の要素も出てきますが、このシリーズはボランティアに翻弄される南と周囲をお話にする予定です。
よろしければ、お付き合いいただければ幸いです。
(2004.4.8からWEB拍手で公開していたものに、修正+加筆を加えたものです。)