-気だるい午後の白昼夢-  


朝目が覚めたら、何もかも普通の世界が広がっていた。

それこそ、そんな事は夢だろうと思っても…夢でもいいからその世界が永遠に続けば良いと願わずにはいられなかった。

そのくらい…その世界は私にとって涙が出るぐらい欲しい世界だった。


ここ数カ月の間に私の生活は、目まぐるしい変動が起きていた。

一つは、レアレアの少女さくらあかりとの出会いと裕馬が生きている事を知ったこと。

そして、探し求めていたバッテストの手掛かり。

一つ目の出来事は、初めは単なる桜あかりと言うレアレアの少女への興味で観察し接触していたに過ぎなかった。ジュエリーナが言っていた予言とレアレアの少女の事もあって尚の事だが。

あまりにも、落ちこぼれで…自信が無い様子の少女の生活を…興味と言う対象で観察していたはずが…何故だか目が離せなくなり…つい見守ってしまうという状況になっていた。

人見知りだった少女が…落ちこぼれなりに頑張り友や…魔法を上達する様子は、不思議と嫌な気分にならず、内心ホットしている自分がいた。正直魔法については、あかりの様に苦労をすることが無い分彼女が何故そんなに不得手なのか理解に苦しみながらも、彼女から目が離せなかった。

初めて感じるそんな想いに、かなり戸惑いながら彼女を見守っている内に…何の因果か旧校舎に訪れたあかりと接触し…弟の存在を知ることになった。

その変わり、自分が女である事が彼女に知られてしまったが、レアレア界に生きている生き別れの弟と此処に居るあかりとの繋がりに少し嬉しく思う。

彼女の記憶の裕馬は、私の想像した通りの成長であったし…あかりの目から見た裕馬は本当に優しい子に育ったのだと安心した。何より、あかりが心の底から裕馬が好きだと言う気持ちも暖かに感じた。

魔法の無い世界で暮らす裕馬とあかり。
不器用ながら、優しく暖かい世界。

母が求めて止まなかった世界は、ひどく遠い世界に思える。

母を失い…裕馬と離れ離れにされて…突然連れてこられたジュエルランドでの生活は苦痛以外の何物でもなかった。側に居るはずの家族が居ない事…簡単に出来てしまう魔法とつまらない魔法学校での生活。

(別に、凄い魔法使いになりたい訳では無いのに…家族と普通に生きていきたいだけなのに)

心にある想いと現実の違いに、悲しみと諦めと…こんな風になる原因のジュエリーナに酷く憎しみを思う。

母を失う原因もそうかもしれないけれど…裕馬と離れ離れになっていなければ、ここまで思わなかったかもしれない…それはあくまで結果論であるが。

あかりの記憶を垣間見た裕馬の姿…元気で居る姿に嬉し気持ちで溢れたのも事実。

望むものは一つだった筈なのに、気がつけば増える思い。

裕馬とあかり、そして母さん。あかりの記憶にあった、学校でのありふれた生活。

あかりや、裕馬にとっては何時もの生活でも、私にしてみると凄く新鮮な事ばかり。

宿題の見せっこに、放課後の他愛の無おしゃべり。

恥ずかしがるあかりを連れて裕馬のバスケットの応援に行く。家のプランタンで母さんとオパール、ダイアナと一緒にハーブやお花を育てて、一緒にお菓子作りをする。

休日には家族そろってピクニックや買い物に行って、ありふれた日常を楽しむ。

そんな、レアレアの子供や家族がするような当たり前の日常は、酷く甘美な砂糖菓子のような儚い夢。

あかりの記憶と…幼いころの自分の家族との記憶…それが混ざり合って見せる幻想は、どんな夢物語よりも甘く切ない。

甘く儚い幻想の中に、終わり無き夢の様に見れたならどんなに幸せな事だろう。

けれど世界は残酷で…真昼に見るひと時の白昼から覚めた世界は…一人きりで居るレアレア界と…永遠の花園で眠る母さん…遠く離れて会う事の叶わない裕馬と言う現実を突きつける。

(バッテストがあれば、母さんを眠りから覚まして…裕馬と母さんと3人で暮らして…あかり達と学校の生活が出来るだろうか?)

強い魔道書であるソレは恐らく凄いリスクのものであるけれど…探すのも容易では無いけれど…自由に扱うことが出来たなら、きっとどんな願いも叶えてくれるに違いない。

例えば、最近見る白昼夢の様な砂糖菓子のように甘く、それでいて儚い夢物語を現実にする力もあるのかもしれない。
禍々しい毒の花だと分かっていても…手をのばさずにはいられない…おとぎ話のヒロインの様に…私は甘美な甘い毒を…真昼に見る白昼夢の為にを求めるのである。

例え、全てに忌み嫌われようとも…。


おわし


2011.3.7. FROM:Koumi Sunohara

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