アイコンタクト
−絶妙なコンビネーション−



凄く不思議なことがある。
幽霊やあやかしかって?イヤそれじゃない。
だって俺は人ならぬモノを見る体質だから、そういった類の不思議な思いではない。

ただ何というか、俺のバイト主の侑子さんと…百目鬼が不思議だと感じる。

何を今更って?まぁ…今更な思いかもしれないけどさ…どちらも不思議な存在だけど。
そうじゃなくて…なんて言って良いのかな…。

阿吽の呼吸ってヤツだな。
変なのが出たとして…侑子さんが忠告して…百目鬼が倒しちまう。

俺と百目鬼がよく仕事にかり出されるけど、絶対侑子さんとのコンビは最強かもしれない。
何せ、口げんか…二人相手で勝ったこと事無いし…。

もしかしたら…百目鬼が此処の仕事を侑子さんと組んでやった方が効率的なのでは?という思いまで浮かぶしまつ。

まぁ…何はともあれ、俺は浮かんでは消える疑問が膨らむ自体に遭遇していたのである。


そんなこんなが続くある日のバイトの日の事だった。
最近思っていた思いを遂に侑子さんに言ってみることにした。

「百目鬼と侑子さんて絶妙なコンビネーションですよね」

そう言ったら、侑子さんは鈴を転がしたように笑い声をたてた。

「あら…それを言うなら四月一日と百目鬼君の方が阿吽の呼吸って感じじゃない」

マルとモロに「ねぇ、そう思うでしょ」と同意を求めた侑子さんに、彼女らも「阿吽だね」とにこやかに笑ってそう言った。
言われた俺の立場としては、大変不本意な思いを抱いた。

「ふふふん。民主主義の世の中なのよ四月一日…マルにモロに私にモコナ…4対1じゃ勝負は目に見えてるわね。第一ひまわりちゃんもそう言うと思うわよ」

ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて、言い切る雇い主は相変わらず自信満々。
そして止めのような言葉をサラリと紡ぐ。

「本当に四月一日は、面白い事を悩んでるのね…まったく、あんまりどうでも良いことばかりで頭を使っていたら禿げるわよ」

煙管の持ち手で俺の額を小突きながら、侑子さんはさり気なく酷いことを言った。
まぁ…この程度の、言葉はすっかり慣れてしまった俺はあまり気にしないけど…。

「その何パーセントかが…侑子さん絡みって自覚あります?」

「だってソレは必然何だから仕方がないでしょ」

俺の文句などモノともせずに侑子さんは言う。
元より何かにつけてこの雇い主に敵うワケの無い俺に…弁論勝負は明らかに分が悪い。

だからこそ俺も話題を変えるべく言葉を紡いだ。

「分かってますよ。世の中偶然は無くて…必然のみ…耳タコですって」

「あら…四月一日の割によく覚えてるじゃないの。偉いわね」

「侑子さんから見た俺っていったい…」

少し沈んでボソリと呟けば、侑子さんは「お料理上手の世話好きのお人好しの四月一日」とさも当然そうに言った。
最後の俺の苗字は要らないきもするが…彼女の癖みたいなものなので…仕方がない事なのかもしれない。

などと少し現実逃避気味な思考に入る寸前で、侑子さんのお決まりの科白が上がり出す。

「それより、美味しいワインの肴欲しいんだけど」

対価で貰ったのか高級ワインを指さしながら、侑子さんはさも当然にそう言った。本当にマイペースな人だ。

「モコナも食べる〜」

モコナも侑子さんに続くようにそう告げた。
俺は、神妙に色々な事を考えていたのも馬鹿らしくなり…「分かってますよ」と短い返事を返し、割烹着片手に台所へ足を向けた。

そよぐ風の音と共に、何処か遠くに聞こえたような錯覚を感じる侑子さんの呟きが聞こえたような気がしたが…俺の耳には言葉として響かない。

「それにねぇ…四月一日が思っている意思の疎通だって…アンタ絡みだから百目鬼君と意気が合うだけどね」

ボソリと漏らした侑子さんのそんな言葉には、俺はその時まったく耳に入らなかった。
ただ…(不思議同士は気が合うのだろう)とボンヤリと完結させたのであった。


おわし


2005.6.30. From:Koumi Sunohara

★後書き+言い訳★
四月一日君絡みになると、侑子さんと百目鬼君のタックは際だつなぁ〜という単純な思考より出来たモノです。
まぁ…百目鬼君と四月一日くんのコンビは更に上回ると思いますけどね。
もう少し、まともな話がかければ良かったとちょっと反省してますが…。
楽しんで頂けたら幸いです。


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