自分であるための証明  

初めから全ては決められている。それが常で、それが決めごと。

それに抗おうとすること等ありえない話で、そんな思考を持っているのは異質な存在でしかない。流れるままに進む、それが日常。

私の存在そして意義は管理国家ラビリンスの総統メビウス様に与えられたもの。
生きることも死ぬことも、どのような職に就くのかも全てはメビウス様に決められた事柄。
気象状態だって何もかもあのお方の定めに従う。

息を吸うように当たり前すぎて、変だなんて感じることはない。

永遠に終りの無いメビウスの輪の様に、変わらない平穏な日々をメビウス様より与えられる。それは素晴らしいことであるのに、それを快しとしないもの共が居る。

快しとしない状況事態が私にとっては考えられないことだ。私にしてみれば、メビウス様に従えば良いものを、プリキュアは何が気に食わないのか邪魔をする。

邪魔者であるプリキュアの排除しない限り、任務の遂行は迅速に行えないと判断したメビウス様の命により、その邪魔である者を取り除き、FUKOUのゲージを貯め、インフィニティーを見つけることが使命。メビウス様の望みのままに任務の遂行にあたる。それが私の存在。それがイース…それが私だ。

そう…それだけの存在、なのに何故だろう?最近の私はそれ以上のことを願うようになった。

プリキュアの内の一人である、桃園ラブにプリキュアになるためのアイテムを奪うために、接触するために東せつなとなって過ごす内に、私の歯車は少しずつ狂い始める。

事あるごとに「幸せ」「幸せゲットだよ」と言い、自分の事より他人の事ばかり。たまたま占いの館で占っただけの占い師と客との間柄だったはずが、彼女の中では親友扱い。

この件については、プリキュアに近寄る口実が出来たからら、辺りに船ではあるが、警戒心の欠片も無い。

無理なことも平気な顔をして、頑張ろうとする。何が楽しいいのか笑顔を絶やさない。

あまつさえ…。

「せつなの幸せは何?せつなの幸せがみつかると良いね」

などと言う始末。

サウラーの本音を言わせるナケワメーケの攻撃を受けた時も、ラブの心に偽りは無く、本気で私を親友だと言い、良い方向にばかり考え、馬鹿みたいに人を信じている人間であることが分かった。

敵として、あまりにも能天気ぶりにのラブのペースに巻き込まれるのか、その言葉を聞くたびに、自分の幸せとは何なのか考える自分が生まれた。

(メビウス様に管理されているはずなのに…何故?)

浮かぶ思いを心に秘めながらも、私はメビウス様に自分を見ていただきたいという願望が生まれる。

命じられるまま、メビウス様の手足で居ることが全てで、私情などいらないはずなのに、ラブと居ると知らない内に願望が燻ぶる。

何にも囚われず、思うがままに、ダンスや友達と楽しそうに過ごす姿。真っすぐに前を向いて、失敗を恐れずに立ち向かう姿に、馬鹿みたいに感じながら、どこか羨ましい様な気さえする。そんな自分が、イースであるはずの自分が居るはずの無い…東せつなの部分が多くなるような錯覚さえ覚える。実際はメビウス様の配下のイースであるのに。

決められた定めに従うのが管理国家ラビリンスに所属するものの定め。全てはメビウス様の定めに従う。

それが当り前であるのに、どうして心が揺れるのだろう?

何故願望が生まれるのだろう?

そんな思いをラブの前で口にしたのなら、真っすぐな瞳できっと言葉を返すのだろう。

「変なんかじゃないよ、せつな。幸せになりたいって思うのは可笑しくない普通なことだよ」

満面な笑顔と共に。

(それでも私は、管理国家ラビリンスのイース。東せつなでは無い)

もしもを仮定したとしても、それが現実になることは無いことも知っている。全てはメビウス様の手の中に存在する。

そう…FUKOUを集めメビウス様の手駒であることが私の存在意義。私が存在して良い存在の証し。

例え心が揺れたとしても、すべてはメビウス様の為に。
それが私…管理国家ラビリンスのイースなのだから。

おわし

2009.8.8. FROM:Koumi Sunohara

-Powered by HTML DWARF-